サウナと外気浴テラスを結ぶスパエリア、「ととのう家」の1階に息づく癒しの動線
前編:旗竿地のアプローチが表情を変える、建築家が手がけたサウナのある住まい「ととのう家」
グリーンとベージュのツートーンが印象的な、神奈川県茅ヶ崎市の「ととのう家」。前編で眺めた旗竿地のアプローチを抜けて玄関の扉を開けると、その先にはこの住まいの名の由来である本格的なサウナと、外気浴のためのテラスがひと続きに広がっています。全3回シリーズの中編は、モルタル土間の玄関ホールから、癒しの時間を支えるスパエリアへ。1階に凝縮された「ととのう」ための空間構成をたどります。
モルタルの土間とスケルトン階段が迎える玄関ホール

玄関の扉を開けると、モルタル仕上げの土間が広がるホールが迎えてくれます。ブラックウォルナットのフローリングへと素材が切り替わる床の構成が、外から内への移ろいをやさしく橋渡しします。

ホールの中心には、アイアンのささら桁に木の踏板を重ねたスケルトン階段。縦長の窓から注ぐ光が段板の隙間を透過して土間に落ち、時間とともに移ろう陰影がコンパクトな空間に立体的な広がりを生み出しています。広々とした土間は自転車やアウトドア用品を持ち込める余白としても機能し、観葉植物を並べて小さな温室のように楽しむこともできる、暮らしの自由度を広げる場所です。
木の香りに包まれるプライベートサウナ

ホールの先に控えるのが、この住まいの主役であるプライベートサウナです。木の質感に包まれた室内には、ベンチの下からやわらかな間接照明が灯り、サウナストーンを積んだストーブが静かに熱を蓄えます。壁には砂時計、傍らにはバスローブ。温度と時間を操作できるコントローラーが壁面に備わり、その日の体調や気分に合わせて自分だけの入り方を組み立てられます。

ガラスの扉越しにテラスの光を感じられる開放的なつくりも相まって、ホテルのスパを思わせるしつらえが、日々の疲れをやさしくほどいていきます。照明を絞り、石に水を落とす音だけが響く時間。自宅にいながら、誰にも邪魔されない自分だけの聖域がここにあります。
無駄のない動線が「ととのう」を深める

サウナを心から楽しむために、建築家が最も重視したのが前後の動線です。脱衣からサウナ、水浴び、そして外気浴へ。洗面・脱衣室とサウナ、外部テラスがひと続きにレイアウトされ、火照った身体のまま迷いなく次の場所へと移れます。無駄なストレスがないからこそ、ととのう時間はいっそう深まる。

水廻りのアクセスゾーンとスパエリアをひとつにまとめたことで、限られた面積のなかにラグジュアリーな非日常感が生まれています。造作の洗面カウンターやタイル貼りの床、木製ブラインドといった素材の選択も、スパエリア全体のくつろぎを静かに支えています。
空と光だけを感じる、外気浴のためのテラス

スパエリアと大きな窓でつながるテラスは、木製の目隠しフェンスに囲まれた外気浴のための場所です。板の隙間から漏れる光が刻々と表情を変え、ウッドデッキに柔らかな縞模様を描きます。外部シャワーで汗を流し、チェアに身を沈めれば、住宅密集地にいることを忘れるほどの静けさ。

夜には足元の照明がデッキをほのかに照らし、昼とは違う静謐な外気浴の時間が待っています。頭上に切り取られた空を眺めながら風を感じるひとときは、まさにこの住まいの名の通りの時間です。周囲からの視線を完全に遮りながら光と風だけを取り込む囲われ方は、密集地の外部空間の答えのひとつといえるでしょう。
動線の設計こそが癒しの質を決める
玄関ホールからサウナ、水浴び、外気浴のテラスまで、迷いなくめぐれる1階のスパエリア。「ととのう家」の中編では、動線の設計こそが癒しの質を決めるという、建築家の明確な思想が浮かび上がってきました。後編は、L字のカウンターが光とともに広がる2階LDKへと続きます。
後編:L字のカウンターとハイサイドライトが光を広げる、「ととのう家」の2階LDKとインテリア(7月30日 公開予定)