安藤忠雄や伊東豊雄、磯崎新らプリツカー賞受賞の建築家の作品もいっぱい!岐阜県の建築10選。
岐阜県には、世界的に著名な建築家たちが手掛けた珠玉の建築作品が点在しています。安藤忠雄、伊東豊雄、磯崎新、妹島和世といった、建築界のノーベル賞とも称されるプリツカー賞受賞者の作品をはじめ、藤森照信や香山壽夫など、日本を代表する建築家たちの独創的な建築を間近で見ることができるのです。自然豊かな岐阜の地で、彼らがどのようなインスピレーションを受け、どのような建築を生み出したのでしょうか。
1.長良川国際会議場/安藤忠雄
世界的建築家・安藤忠雄が設計した長良川国際会議場は、岐阜市のシンボルである長良川と金華山を背景に持つ、特徴的な外観のコンベンション施設です。最大の特徴は、巨大な卵のような球体と、建物全体を覆うように配置された大階段です。この球体は国際会議室として利用され、内部からは長良川と金華山の美しい景色を一望できます。
安藤忠雄らしい、コンクリート打ち放しの力強い表現と、自然との調和や対比を重視した設計が随所に見られます。大階段は、人々が集い、交流する場となることを意図しており、ダイナミックな印象を与えています。内部には、吹き抜け空間やガラス張りの空間が効果的に配置され、開放感と自然光を取り入れた空間構成となっています。幾何学的な形態と自然の融合は、安藤建築ならではの魅力と言えるでしょう。
参考:建築家・安藤忠雄が手がけた岐阜市にある「長良川国際会議場」は自然と調和した岐阜らしい建築
長良川国際会議場
URL:http://www.g-ncc.jp/
住所:〒502-0817 岐阜県岐阜市長良福光2695−2
2.みんなの森・ぎふメディアコスモス/伊東豊雄
建築家・伊東豊雄が設計した「みんなの森・ぎふメディアコスモス」は、岐阜市の中心部に位置する複合文化施設です。その最大の特徴は、周囲の山並みと呼応するように波打つ木造の大屋根です。この屋根は、岐阜県産のヒノキ材を格子状に組み合わせた構造で、内部空間に柔らかい光と開放感をもたらしています。
内部空間は、図書館を中心とした様々な機能が緩やかにつながるように構成されており、特に目を引くのは、天井から吊り下げられた「グローブ」と呼ばれる光のドームです。自然光を拡散させるこのグローブは、空間に変化と心地よさをもたらし、人々が集い、くつろぐ場となっています。
伊東豊雄は、この建築を通して、「森」のような居心地の良い空間を創り出すことを目指しました。木漏れ日のような光、自然素材の温かみ、そして開放的な空間が一体となり、訪れる人々を優しく包み込むような、魅力的な建築空間を実現しています。
参考:建築家・伊東豊雄による波打つ屋根と天井が特徴的な岐阜の市民に愛される「みんなの森・ぎふメディアコスモス」
みんなの森・ぎふメディアコスモス
開館時間:9:00~21:00
URL:https://g-mediacosmos.jp/
住所:〒500-8076 岐阜県岐阜市司町40−5
3.瞑想の森・市営斎場/伊東豊雄
伊東豊雄が設計した「瞑想の森・市営斎場」は、岐阜県各務原市にある斎場です。従来の斎場のイメージを覆す、自然と調和した建築が特徴です。最大の特徴は、周囲の里山と一体化するように設計された、波打つような大屋根です。厚さ20cmの鉄筋コンクリートで造られたこの屋根は、空に浮かぶ雲や、舞い降りた鳥のような軽やかな印象を与え、斎場という重いイメージを和らげる効果があります。内部空間もこの屋根の形状に合わせて曲線で構成され、柔らかい光が差し込む、落ち着いた空間となっています。
瞑想の森・市営斎場
住所:〒504-0009 岐阜県各務原市那加扇平2−5
4.岐阜県現代陶芸美術館・セラミックパークMINO/磯崎新
建築家・磯崎新が設計した岐阜県現代陶芸美術館・セラミックパークMINOは、自然と建築の融合をテーマにした複合施設です。最大の特徴は、周囲の里山の地形を活かし、建物を風景の中に埋め込むように配置したことです。これにより、自然環境を保護しながら、美術館と広場が一体となった空間が生まれています。
建築の内外部には、地元産のタイルや煉瓦などの陶磁器製品が多用されており、地域の文化と結びついたデザインとなっています。また、白い壁面で覆われた展示空間は、陶芸作品を際立たせる効果があります。長いアプローチやトンネルを通って建物にたどり着く構成は、訪れる人々を非日常的な空間へと誘います。
参考:巨匠・磯崎新の建築を歩く。地形を活かした建築「岐阜県現代陶芸美術館・セラミックパークMINO」
岐阜県現代陶芸美術館・セラミックパークMINO
開館時間:8:00~21:00
URL:http://www.cpm-gifu.jp/
住所:〒507-0801 岐阜県多治見市東町4丁目2−5
5.北方町生涯学習センター・きらり/磯崎新
建築家・磯崎新が設計した北方町生涯学習センター「きらり」は、岐阜県北方町にある複合文化施設です。最大の特徴は、何と言ってもそのユニークな屋根の形状です。「くねくね」と表現される、自由曲面シェル構造の屋根は、まるで生き物のような有機的なフォルムを描き出し、見る人の目を惹きつけます。この屋根は鉄筋コンクリート造で、力強さと同時に、どこか柔らかさを感じさせる独特の表情を持っています。
内部には、最大500人を収容できるホールを中心に、多目的室や陶芸室など、地域住民のための多様なスペースが設けられています。外観の印象的な屋根とは対照的に、内部空間は比較的シンプルな構成となっており、利用者が快適に過ごせるよう配慮されています。
北方町生涯学習センター・きらり
開館時間:9:00~21:30
休館日:月曜日
URL:http://www.town.kitagata.gifu.jp/kirari/
住所:〒501-0431 岐阜県本巣郡北方町北方1857
6.多治見市モザイクタイルミュージアム/藤森照信
建築家・藤森照信が設計した多治見市モザイクタイルミュージアムは、モザイクタイルの歴史と魅力を伝えるユニークな建築です。最大の特徴は、採土場をモチーフにした外観です。土壁で覆われた建物は、まるで土の中から現れたかのような力強い存在感を放ちます。壁面には、割れたタイルや陶器片が埋め込まれ、モザイクタイルの原点を表現しています。屋根には松の木が植えられ、自然との調和を意識したデザインとなっています。また、4階にはタイルの破片をワイヤーで吊るした「タイルすだれ」が設けられ、光の演出とタイルの素材感を同時に楽しむことができます。
多治見市モザイクタイルミュージアム
開館時間:9:00~17:00(火・土・日曜日)
URL:https://www.mosaictile-museum.jp/
住所:〒507-0901 岐阜県多治見市笠原町2082−5
7.北方町新庁舎/武藤圭太郎+シーラカンス
建築家・武藤圭太郎とシーラカンスが設計した北方町新庁舎は、「大屋根の下に人々が集う開放的な庁舎」をテーマに、地域の特徴と日本の気候風土を考慮した設計が特徴です。最大の特徴は、北方祭りの神輿や円鏡寺をモチーフにした大屋根です。この大屋根は、深い軒で夏の日差しを遮り、雨天時でも自然換気を可能にする一方、内部が暗くなる課題がありました。そこで、大屋根を谷のように抉った「谷テラス」を設け、高窓と吹抜けを通して1階まで光と風を導き、明るい空間を実現しています。
また、大屋根の中空層を活用した太陽集熱システムを採用し、冬は暖房に、夏は排熱に利用することで省エネ化を図っています。大屋根に覆われた内部空間は、斜めの壁が特徴的な空間を生み出し、2、3階の諸室は均質なオフィス空間とは異なる、広がりを感じさせる空間となっています。
北方町役場
住所:〒501-0439 岐阜県本巣郡北方町長谷川1丁目1
8.可児市文化創造センターala/香山壽夫
香山壽夫が設計した可児市文化創造センターalaは、「翼」を意味する愛称の通り、未来へ羽ばたく文化創造の場として設計された、大きな屋根が象徴的な建築物です。最大の特徴は、L字型に配置された建物が広い中庭を囲む構成と、その中庭に面したガラス張りのファサードです。このガラス面と2階まで吹き抜けになった空間が、開放感あふれる印象を与えています。大きな軒とガラス張りの組み合わせは、建物に独特の存在感を与え、内部には大小2つのホールを中心に、映像シアターや音楽練習室など、多様な文化活動に対応できる施設が備わっています。
可児市文化創造センターala
URL:http://www.kpac.or.jp/
住所:〒509-0203 岐阜県可児市下恵土3433−139
9.岐阜県営住宅ハイタウン北方/妹島和世
建築家・妹島和世が設計した岐阜県営住宅ハイタウン北方は、従来の集合住宅の概念を覆す、開放的で多様な住戸プランが特徴です。最大の特徴は、各住戸に複数の出入り口とテラスが設けられていることです。これにより、住戸内に風や光が通り抜け、開放的な居住空間が生まれています。また、各住戸は異なるプランを持ち、住む人のライフスタイルに合わせて選択できる多様性も魅力です。ベランダがない代わりにテラスが設けられ、外部空間との繋がりを重視した設計となっています。建物全体としても、テラスによって建物に「穴」が開いているような外観となり、周囲の風景を取り込み、軽やかな印象を与えています。これは、従来の集合住宅が持つ閉鎖的なイメージを払拭し、地域に開かれた住まい方を提案していると言えるでしょう。
岐阜県営住宅ハイタウン北方
住所:〒501-0431 岐阜県本巣郡北方町北方1857 青桐通り
10.養老天命反転地/荒川修作+マドリン・ギンズ
アーティストである荒川修作とマドリン・ギンズが手掛けた「養老天命反転地」は、岐阜県養老町にある体験型アート作品であり、人間の知覚や平衡感覚を揺さぶる独特な空間が特徴です。
最大の特徴は、水平・垂直の概念を覆す、傾斜した地面や壁、不規則に配置された構造物です。これにより、訪れる人は普段とは異なる身体感覚を体験し、平衡感覚や遠近感が混乱させられます。これは、人間の身体と環境の関係を問い直し、「死なないための方法」を探求するという、荒川とギンズの哲学に基づいています。
園内は、「極限で似るものの家」と呼ばれるメインパビリオンと、「楕円形のフィールド」と呼ばれる屋外エリアを中心に構成されています。「極限で似るものの家」は、岐阜県の形を模した屋根を持ち、内部は迷路のような構造になっています。「楕円形のフィールド」には、傾斜した地面やパビリオンが点在し、歩くこと自体が挑戦となります。
養老天命反転地
開館時間:9:00~17:00(土・日・月曜日)
URL:https://www.yoro-park.com/facility-map/hantenchi/
住所:〒503-1267 岐阜県養老郡養老町高林1298ー2
プリツカー賞受賞の建築家の作品もいっぱいな岐阜県の建築!
プリツカー賞受賞者をはじめとする、著名な建築家たちが岐阜県に遺した10の傑作建築をご紹介しました。それぞれの建築が、その土地の歴史や文化、自然と深く結びつき、独自の個性を放っていることがお分かりいただけたかと思います。造形の力強さ、有機的なフォルムの美しさ、自然素材の温かみなど、建築家それぞれの表現方法の違いを比較してみるのも面白いでしょう。