自然と地域に溶け込む建築美に圧倒される。スイスの建築家・ピーター・ズントーの建築7選!

スイスの建築家、ピーター・ズントー。家具職人としてキャリアをスタートさせた彼は、のちに自身の設計事務所を設立し、2009年にはプリツカー建築賞を受賞。スイス、グラウビュンデン州の温泉スパ施設「テルメ・ヴァルス」やオーストリアのブレゲンツ美術館などで広く知られています。今回は、そんな彼の代表建築を7つご紹介。

1.聖ベネディクト教会

「アルプスの少女ハイジ」の世界を思わせるスイスの小さな村に、スイス出身で2009年にはプリツカー賞を受賞した建築家ピーター・ズントーが設計した教会があります。小ぶりで可愛らしいサイズの小屋のような建築で、楕円形に近い木の葉のような平面を持つユニークなフォルム。土着的な風景に馴染む独特なファサードのおかげか、昔からこの場所に佇んでいたように自然に溶け込んでいます。

重厚なイメージが多い教会とは異なり、素朴で軽やかな印象。建築と家具を合わせたような、小舟のような雰囲気を醸し出します。ハイサイドライトから差し込む自然光がステンレスの壁に柔らかく反射して、実際の空間以上の広がりを生み出すデザインです。

参考:ピーター・ズントーの出世作「聖ベネディクト教会」スイスの土着的な風景に馴染む建築。

Saint Benedict Chapel – 聖ベネディクト教会

住所 : Vitg 221, 7174, Switzerland

2.テルメ・ヴァルス

スイスのクール地方、ミネラルウォーター・ヴァルサー(VALSER)の生産地でもあるヴァルスに、「ヴァルスの温泉施設 (Therme Vals)」はあります。ゲニウス・ロキと言われるローマ神話の土地の守護精霊を感じさせる、神聖な雰囲気。斜面に対して幾何学的なヴォリュームを挿入するようなモダニズム的な手法で、ダイナミックな山と谷の自然と幾何学の建築が対比的に構成されています。

レセプションでチケットを買ったら、地下を抜けて温泉施設へ。屋根のスリットから入る自然光は、程よく空間を照らしたり、壁面に陰影を作ったりして神聖な体験を演出しています。ヴァルスの自然を感じながら、五感で温泉や空間を楽んでみては。

参考:ピーター・ズントーの最高傑作「ヴァルスの温泉施設 (Therme Vals)」でラグジュアリーなスパ体験!

Therme Vals 7132 Hotel – ヴァルスの温泉施設

入場料 : 80CHF
電話 : +41 58 713 20 00
URL : http://7132.com
住所 : 7132 Vals, Switzerland

3.ブレゲンツ美術館

Via : Wikipedia.

彼の代表作の1つが、1997年にオーストリア・フォアアールベルク州のボーデン湖畔に建設されたブレゲンツ美術館。常設のコレクションを持たない美術館で、企画展が開催されています。本館と管理棟に分かれており、より作品鑑賞に集中できる展示に特化した空間を作り上げているのだとか。本館は鱗のような712枚の磨りガラスで覆われ、管理棟は黒いコンクリートと、その対照的なデザインにも注目です。

ブレゲンツ美術館

住所:Karl-Tizian-Platz, 6900 Bregenz, オーストリア

4.聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館

Via : Wikipedia.

ドイツ・ケルンといえばケルン大聖堂が広く知られていますが、その近くに位置している「聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館」は、2007年に建設されました。教会の建て替えが行われる際、コンペで選ばれたのがピーター・ズントー。デンマークに発注したという薄いグレーのレンガで仕上げられ、1階の遺跡部分には開口部からの光が神秘的に取り入れられています。窓から見えるケルンの街並みも、併せて堪能してみてはいかがでしょう。

聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館

住所:Kolumbastraße 4, 50667 Köln, ドイツ

5.魔女裁判の犠牲者達のための記念館

Via : Wikipedia.

「魔女裁判の犠牲者達のための記念館」は、2011年にノルウェーの町・Vardø(バルデ)に建てられた記念館。かつてヨーロッパでは、女性が魔女とされ、無実の罪で処刑される魔女狩りが行われており、バルデでは77人の女性と14人の男性が犠牲になったといいます。木の枠組みの中で帆布を四方から引っ張り、サーフボードのような形にした棟には、犠牲者の説明文が展示されているとのこと。室内は黒で覆われ、厳粛な雰囲気が漂います。

魔女裁判の犠牲者達のための記念館

住所:Steilneset Memorial, Andreas Lies gate, 9950 Vardø, ノルウェー

6.ブラザー・クラウス野外礼拝堂

Via : Wikipedia.

2007年、ドイツ西部のヴァッヘンドルフの外れに建設された「ブラザー・クラウス野外礼拝堂」。地元の農家の人が神様に感謝するための場所として設計を依頼し、美しい田園風景の中にぽつんとこの礼拝堂が建てられました。ピーター・ズントーの建築は自然に溶け込むデザインが特徴的ですが、この礼拝堂も例外ではありません。スイスの小屋をモチーフとしたコンクリートの建造物で、三角形の扉が付けられています。照明はなく、ろうそくの光のみ。コンクリートの壁の穴からは、星のように外の光が差し込み、幻想的な雰囲気を演出します。

ブラザー・クラウス野外礼拝堂

住所:Iversheimer Str., 53894 Mechernich, ドイツ

7.アルマンナユベの亜鉛鉱山博物館

Via : Wikipedia.

2016年、ノルウェーの町Saudaに建てられた「アルマンナユベの亜鉛鉱山博物館」。渓谷沿いの鉱山跡地に建設された施設で、町の歴史を伝えるためにオープンしたという。6〜8月という短い期間しか開いていないため、訪れる際は注意が必要です。壁からせり出すように浮かせたトイレ、急斜面に建てられたカフェ、展示棟に分かれており、平面の少ない渓谷の地形を生かした造りになっています。家具や照明なども全てピーター・ズントーがデザインしたというから、細部にまで注目してみてください。

アルマンナユベの亜鉛鉱山博物館

住所:Saudavegen, 4200 Sauda, ノルウェー

環境に溶け込むピーター・ズントーの建築

スイスの建築家、ピーター・ズントーの代表建築を7つご紹介しました。ヨーロッパ圏で、尚且つアクセスの難しい場所に点在していますが、建築ファンは見る価値あり。ぜひその目で、ピーター・ズントーの建築を堪能してみてはいかがでしょう。