最古の図書館を引き継ぎ、スノヘッタが実現したサスティナビリティに配慮した建築「新アレクサンドリア図書館」

国内では建築家・前川國男が手掛けた「神奈川県立図書館」や伊東豊雄による「みんなの森 ぎふメディアコスモス」、国外ではレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによる「ポンピドゥー・センター」など、有名建築家による図書館建築は世界各国で数多く見られ、地元の人々はもちろん、そこを目的に世界中から観光客が訪れるほどの注目スポットになることも。地中海沿いのエジプトの中で経済都市として知られるアレクサンドリアに建てられた「新アレクサンドリア図書館」は、建築の美しさはもちろん、その歴史からも多くの人々が訪れる注目の図書館兼文化センター。多様性を取り込んだ心地の良い空間が、多くの人々を魅了しています。

世界最古と言われる図書館を基にした図書館兼文化センター

世界で最も古い図書館は、2300年前に古代最大かつ最高の学術機関として栄えた「アレクサンドリア図書館」だと考えられています。しかし、アレクサンドリア図書館は、戦火と略奪によって失われてしまいました。「新アレクサンドリア図書館」は、この古代の学問と博識の中心地としての輝きを取り戻そうと、「ユネスコ」と「エジプト政府」が共同で建設した巨大な図書館兼文化センターです。

巨大な円盤状の屋根構造をもつユニークなデザイン

新アレクサンドリア図書館は、古代アレクサンドリア図書館の喪失から1500年以上経った2001年8月1日、アレクサンドリア市北部のかつて図書館があったとされる場所に再建されました。

新アレクサンドリア図書館は11階建て、直径160m、高さ32m、総面積約8万5000平方メートルにも及ぶ巨大な建築構造に。建造費には約2億ドルを費やしたと言われています。

建物自体は巨大な円柱(直径160m)が斜めに切り取られ、地面に埋もれているようなデザインになっています。

直射日光による本の傷みを防ぎつつ自然光を取り込むために、北向きの天井には傾斜した小さな窓がいくつも設置されています。オープンな広場と反射池が建物を取り囲む構成は、太陽と水と大地の融合をイメージしたもの。建築は近くにある「アレクサンドリア大学」に歩道橋で繋がっています。

建物の壁全体は世界中の言語で埋め尽くされ、世界中の文献を収集したアレクサンドリア図書館の歴史を表しています。建物の設計については、エジプトが図書館設計コンペを行ない、数百もの候補の中から勝ち取ったノルウェーの設計事務所スノヘッタが担当することになりました。

サステナビリティをデザインに取り込むクリエイター集団「スノヘッタ」

スノヘッタとは、ノルウェーのオスロとニューヨークを拠点とする国際的な設計事務所。建築・ランドスケープ・アーキテクチャー、インテリアデザインを手掛けており、家具やプロダクトデザイン、グラフィックデザインに至るまで幅広い領域で活躍するクリエイター集団です。スノヘッタは今後15年以内にすべてのプロジェクトにおいてカーボンニュートラルになることを目指し、マテリアルの開発などにも取り組んでいます。

新アレクサンドリア図書館のデザインが公募された80年代後半は、建築やデザインでサステナビリティが考慮されることが少なかった時代。スノヘッタのデザイナーたちは当時から材料の地産地消や自然光を生かしたデザイン、健全な労働環境の確保や海外スタッフと現地スタッフの学び合いなどの配慮を組み込み、そうした次世代を見越した革新的な視点も、コンペの勝利に大きく貢献しました。

青と緑のガラスが特徴の開放的な館内

内部に入ると館内は天井が高く、ガラスで設けられた天井から差し込む光が気持ちの良い、広々として開放的な空間に。

これらのガラスは目に優しい光を取り込む青と緑のもので構成されており、壁には音を吸収する素材を使用したりと内部で過ごす人々の快適性を高めています。

外部にはプールも併設され、古代のものに劣らぬ豪華な装いに。学術と博識の中心地だった過去の栄光を、みごとに蘇らせています。

蔵書数800万冊の大図書館兼文化センターを目指す

蔵書の大部分は地下の書庫に収められており、蔵書は歴史上のアレクサンドリア図書館の最盛期より少ない蔵書数40万冊からの出発のものの、最終的には800万冊の大図書館を目指しています。

インターネットを駆使し、エジプトやアラブなど地中海諸国の文化文物に関する情報も収集しており、インターネットアーカイブが収集した情報のコピーも保管しています。

館内には図書館のほか、古文書陳列室、考古学博物館、プラネタリウムなどを併設しています。

世界最古の図書館を復活させた、サスティナビリティに配慮した建築

新アレクサンドリア図書館はイスラム社会の必要を満たす建築事業に送られる「アーガー・ハーン建築賞」を受賞。サスティナビリティを追求したスノヘッタによるクリエイティブ、かつて古代の学問の中心地であった当時の栄光を目指して成長を続ける図書館は、これからも多くの人を惹きつけ、より良い社会づくりへと繋がるはずです。

新アレクサンドリア図書館

所在地 : Alexandrian Cornihe, Chatby
開館日 : 土-木曜日:11:00~19:00、金曜日:15:00~19:00
入館料 : 45 EGP