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巨匠フランク・ロイド・ライトの遺作となった「マリン郡シビックセンター」

ヨーロッパの建築様式が全盛だった時代に、プレーリーハウスと呼ばれるアメリカ独自の住宅スタイルを生み出し、若くして注目を浴びた天才建築家、フランク・ロイド・ライト。彼が最晩年に設計した建築が、マリン郡シビックセンターである。

宇宙船のような市民のための建築

カリフォルニア州マリン郡のサンラフェル。この町の丘陵地帯に、周囲の景色に溶け込むように、限りなく水平に近い姿で巨大な建築物が建てられている。

上から眺めると、そこにある3つの丘の頂上を結ぶように、平面的に細く長く配置された、まるで巨大なブーメランか宇宙船のような建造物。

全長450mを超えるこの横長のなかに、郡庁舎、裁判所、図書館、郵便局、駐車場などの施設が集められているのである。

ライトの数多い仕事の中でも、公共建築の仕事はわずかで、しかも実現した例はさらに少ないため、貴重な作品である。

建物は起伏ある美しい三つの丘をまたぐように、あるいは橋のようにつなぎながら水平に伸びた複合建築である。

外部のような室内空間を実現

建物のほぼ真ん中にある青い丸屋根の建物から、細長い建物が二手に延びており、右側は郡のオフィスが入っている行政棟、左側は裁判所などが収められた司法棟になっている。

庁舎内は、透明な天窓から豊かな太陽が降り注ぐ。

自然と一体になる有機的な建築の在り方

ライトの建築の美しさは、「自然との調和」を踏まえたものである。彼にとって最大のインスピレーションの元になったのは、日本の芸術や美意識。ライトは日本の浮世絵とその洗練された芸術表現に心を奪われ、日本のデザインのもつ有機的な性質を高く評価していた。

日本の「無駄なものを省く」という考え方に刺激された「有機的建築」は、間の取り方、空間の演出、自然との調和など、日本的な家屋と空間設計を取り入れている。

「丸い世界」

庁舎は公共の建物なので、裁判所が置かれているCourt Floor以外は誰でも立ち入ることがでるようになっている。この建物全体で一貫して、丸「◯」のモチーフを多く見つけることができる。

横から見ると、全体的にアーチの連続が積み重なった様に出来ていて、そのスパンが上階に行くほど小さくなり、最後は丸になるというデザインになっている。

最上階にあるカフェテリア。窓は全て丸「◯」である。

中心部分に立つテラコッタの塔。その脇に人工的な池がある。

丸いドームの中は図書館になっている。間接照明で天井は優しく照らされている。


駐車場の電球までもが丸「◯」

 

マリン郡から庁舎建設の依頼を受けたのはライトが90歳の時のこと。建設予定地は、ゆるやかな丘陵地帯で、郡の幹部からは、丘を削っても構わないと聞かされていた。しかし、ライトは丘を生かし丘陵に溶け込むように、限りなく水平に近い姿で庁舎を設計したのだ。

この建築物を見ていると、舞浜にある夢の国を思い出さずにはいられない。色合い、造形、空間。アトラクションのようにわくわくする感覚を得る。本当は逆に、夢の国が模しているのであろう。ライトは今から半世紀以上も前に光と緑に溢れた革新的な夢の公共建築を作り上げていたのである。

マリン郡シビックセンター

開館時間 :8:00~16:00
休館日 : 土曜日・日曜日
URL :http://www.marincourt.org
住所 : 3501 Civic Center Drive San Rafael CA 94903

藤巻百合香

藤巻百合香

首都大学東京で表象文化論を学び、表現の多様性に興味関心を据える。

大学在学中にお笑いライブ専用劇場をオープン。22歳で劇場経営とお笑いイベントプロデュースの会社を設立。

舞台芸術から建築まで、様々な視点で表現を追求する。

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