巨匠フランク・ロイド・ライトが日本に残した“東洋の真珠”とも称された名建築「帝国ホテル(ライト館)」

アメリカ出身の世界屈指の建築界の巨匠、フランク・ロイド・ライト。フランク・ロイド・ライトは、91年間の生涯で400余りの作品を手掛けていますが、そのほとんどはアメリカに遺されています。唯一、アメリカ以外に作品が現存する日本には、4作品が現存。

その中で彼の代表作とも言え、“東洋の真珠”とも称された造形美「旧帝国ホテル」。現在、愛知県犬山市にある博物館明治村に、旧帝国ホテルのエントランス部分が移築され見学することができます。

「平等院鳳凰堂」をモチーフにした左右対象の外観

世界三大建築家のひとりであるフランク・ロイド・ライトが日本で初めてホテル建築を手掛けたのが帝国ホテルでした。1923年に竣工し、1964年に取り壊され、明治村には1985年に移築再建されました。

親日家であり、東洋思想にも深い理解があったフランク・ロイド・ライト。

フランク・ロイド・ライトが旧帝国ホテルの設計モチーフとしたのが、京都の「平等院鳳凰堂」と言われています。水平垂直、西洋建築では珍しい深い軒、左右対象の像がそれらを物語っています。

平成16年に、国の有形文化財に登録

この建物は、平成16年に、国の有形文化財に登録されました。

両脇の客室棟こそないものの、当時愛されたであろう帝国ホテルの面影を十分に感じることができます。

流動的に繋がる、解放感のある大空間

低い天井のエントランスを潜り、小上がりの階段を上がると、解放感を感じる大空間が待ち構えています。

これは低くなっている天井による閉鎖的な感覚から、大空間へと導くことで人の気持ちを解放させる効果を与えているようです。フランク・ロイド・ライトの建築には、このステップフロアがよく採用されていて、単純に壁や階段を繋ぐのではなく、各空間の床の高さや天井の高さが異なる流動的に繋がっている空間が設けられています。大階段と左右の廻り階段を昇るごとに、新たな視界を楽しませてくれます。

水平垂直を基本としたモダニズム的なデザインでありながら、複雑な構成になっていたりといかにもフランク・ロイド・ライトらしい空間表現となっています。

特徴は「大谷石」と「テラコッタタイル」

中央玄関ホールは、3層吹き抜けになっていて周囲を回遊できるようになっています。

旧帝国ホテルの特徴と言えるのが、豊富に使用されている「大谷石」と「テラコッタタイル」です。

メインホールの大空間に入る光は、彫刻された日本ならではの建築資材、大谷石に陰影を与え、独特な雰囲気を感じられます。柱や壁などには旧帝国ホテルのために作られたテラコッタタイルが張られていて、大谷石とテラコッタタイルの合わさった意匠性が建物の存在感を醸し出しています。

大谷石とスクラッチタイルが組み合わせた照明を重ねる柱からは、柔らかな自然が溢れ、外部の自然光が差し込む空間となっています。照明の組み込まれた飾柱は「行燈」をイメージしているそう。

加工しやすく、燃えにくい特性を持つ、大谷石は、使用する部分によって異なる模様が施されていて、ファサードから連続しているようにも感じられ外も中も差異のないデザインとなっています。

石材は栃木県の大谷石が、使用されています。

レセプションも、大谷石とスクラッチレンガの組み合わせで格式があり、ところどころに施される木の素材も当時の最先端のデザインなのだろう。スクラッチレンガは、愛知県常滑の土を使い、低い温度で焼成したそうです。

この帝国ホテルのスクラッチ煉瓦が流行となり、その後官庁や大学、金融機関などにも「スクラッチレンガ」を張った建物が建造されました。

家具、照明も手がけたフランク・ロイド・ライト

2階部分には、カフェがあり昔の帝国ホテルを体験することができます。

また、絵画や彫刻、家具、照明、敷物、照明家具や食器のデザインに至るまでライト自身が手がけたこともポイントで、独特の模様の施された開口から眺めを楽しむことができます。

旧帝国ホテル ライト館

電話 : 0568-67-0314
URL : http://www.meijimura.com
住所 : 愛知県犬山市字内山1番地