今もなお拡張を続ける、谷口吉生が増築を手掛けたモダンアートの殿堂「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」

1929年に開館し、これまで幾度と拡張・進化を続けている美術館「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」。コンペに参加しないことでも有名な谷口吉生が唯一参加し、2004年に完成した新しいMoMAは、美術館建築の巨匠である谷口吉生の巨大スケールと超越した繊細なディティールで訪れる人を魅了している。

美術館建築の奇才 建築家 巨匠 谷口吉生

Via : Wikipedia.

東京都出身の建築家 谷口吉生。

これまで丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、香川県立東山魁夷せとうち美術館、豊田市美術館など、多くの美術館建築を手掛け、美術建築の巨匠と言っても過言ではない。日本建築学会賞作品賞2度、吉田五十八賞、高松宮殿下記念世界文化賞など多数受賞している。

彼の特徴は、ほとんど住宅建築の作品がないことと、その建築の多くに両極端なスケール感が共存することであろう。

モダンアートを中心に10万点以上の所蔵品を誇る「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」

モダンアートを中心に10万点以上の所蔵品を誇る世界的美術館「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」は、1929年に開館し、1932年に現在のマンハッタン ミッドタウン53丁目に移転している。

これまでMoMAの増築は数回に及び行われており、エドワード・ダレル・ストーンとフィリップ・S・グッドウィンによるインターナショナル・スタイルの建築ができた後、1951年・1964年にフィリップ・ジョンソンにより「彫刻庭園」と「イースト・ウィング」、1983年にはシーザー・ペリが「ガーデン・ウィング」を増築し、2004年に谷口吉生の国際コンペ案により全面改装と増築の設計を行っている。

2019年には、ロサンゼルスの「ザ・ブロード」などを手掛けたディラー・スコフィディオ+レンフロがコンサルティング会社のゲンスラーとコラボ設計を行い、更に増築されており、今もなお進化を続けている美術館だ。

彫刻庭園

フィリップ・ジョンソンが手掛けた彫刻庭園は、大理石にシラカバ、アイビーでデザインされたシンプルなガーデンである。この中庭は、チケットがなくとも利用ができるため、市民が憩う公園的なパブリックスペースとしても機能している。

大理石の床の一部を抜き取るようにして緑の植栽部分と水路を設け、リズムを感じる庭園スペースに、ダイナミックでモダンなヴォリュームのキャノピーが沿って配置され、実に谷口吉生らしい建築デザインが寄り添う。

人混みの中でも開放感のある広々エントランス

彫刻庭園から館内に入ると、人々で混み合うエントランスが広がる。元々あった導線が改善された館内は、ゆったりと面積を確保しており、多くの人々がごった返すほどの来場を見込み、空間の質向上を考慮したものだと体感できる。

エントランス内を見上げると、天井高位を活かしたデザインにより空間の大きさが変化する。天井高位を活かしてリズムよく展開する空間は、まさに谷口建築に見られる代表的な技法の1つだ。

層吹き抜けの巨大な展示空間「マロンアトリウム」

体積が圧巻の巨大ホワイトキューブ空間「マロンアトリウム」は、とにかくその空間的迫力が圧倒的で、この体積のヴォイドが過密都市ニューヨークでアートのために存在していることの異常さを改めて考えさせる。

周囲の空間は天井が低く抑えられているため、余計にマロンアトリウムを広く感じる。強弱のある美術館に適した空間や極力ラインを消し去ったミニマルなデザインが実に美しい。

マロンアトリウムを中心に回廊のように巡る導線

巨大なマロンアトリウムを囲むように繋げられた廊下を歩くと、改めてこの建築がいかに巨大なものかを体感する。高さを活かした構造の面白さや、大小異なるスケールが融合した不思議な感覚がある。

アーサー・ヤングのデザインのガラス張りのベル・ヘリコプターが細長い吹き抜けに設置されている。

外壁ガラスに面したキャノピー下の展示空間

キャノピーの下の空間は、グリッドで組まれた外壁窓が緩やかに伸びる。開放的かつ緩やかに内外を纏める空間は、テラスのような開放感と心地よさがある。

彫刻庭園越しに反対側を見る。非現実的な空間で魅了する内部空間とマンハッタン都市風景のギャップが面白い。

柔らかいライトで纏まった内部展示スペース

今回のリニューアルでは「来館者の体験の質向上」に重きが置かれたという、展示空間。人垣をかき分けるほどに来場があるMoMAの特徴を配慮し、作品点数が控えめな展示室が増え、ベンチの数や角度を増やすことで「ゆったりとしていて、ゆっくり鑑賞できる」空間づくりにフォーカスが当てられている。

モダニズムの時期に挑戦的なアートをキャレーションしてきたMoMAだからこそ、現代ではコンテンポラリーアートも企画展として展示している。

エンターテイメントやファッションとも親和性が高いニューヨークで、純粋なアートだけでなく様々なジャンルとつながる企画展が開催されている。

モダンデザインの全てが見られる!伝説的な20世紀のデザイン展示エリアも

MoMAで体験できる展示の1つに、20世紀の著名なデザインを展示したスペースもある。ここを訪れたらモダンデザインの全てが見られると言っても過言ではないほど、様々な著名デザイナーによる作品が集まっている。

ジャン・プルーヴェによるスタンダード・チェア、イームズ、柳宗理のテーブルやジオ・ポンティのスーパーレジェーラなど、有名どころは全部あるというほどのコレクションラインナップだ。

ジャスパー・モリソンがデザインした椅子など、比較的新しく所蔵作品になったものも展示されている。

谷口吉生による美術館建築の素晴らしさを体験できる都市型美術館

谷口吉生によって誕生した新しい「MoMA(ニューヨーク近代美術館)」。コンペに参加しないことでも有名な谷口吉生が唯一参加したことでも知られるこの美術館は、巨大なスケールと繊細なディティールが張り巡らされながらも、美術館建築の巨匠として理解と知見が深い作品だ。

周辺環境からの文脈、歴代の建築家などへの敬意、アーティストや作品への配慮から熟考された、「凄すぎる建築」。それこそが、MoMA(ニューヨーク近代美術館)なのであろう。

MoMA / The Museum of Modern Art – ニューヨーク近代美術館

開館時間:10:00~17:30(木・金曜日~21:00)
入館料:$25
URL : https://www.moma.org
住所:11 W 53rd St, New York, NY 10019 USA