多くの出会いやインスピレーション、感動が生まれたDESIGNART TOKYO 2022は10日間でのべ20万人が来場。

今年で6回目となる日本最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNARTTOKYO(デザイナート トーキョー)」が10月下旬の約1週間、今年も東京を舞台に都内各所にて開催されました。今回は「TOGETHER〜融合する好奇心〜」をテーマに、約3年振りに国内外のクリエイターや企業、ブランドが集結。国内外から集まった92の個性溢れる展示を通して、多くの出会いやインスピレーション、感動が生まれました。

これからのサスティナブル×テクノロジーを考える展示の数々

今回のメインエキシビション「NEXT CIRCULATION」では、リサイクルやアップサイクルの“その先まで”を見据えた、サスティナブル×テクノロジーを基軸とする展示を開催。空間構成を手掛けたデザイナー・板坂諭は、テーマに合わせ、什器にも廃棄衣類繊維アップサイクルボード「PANECO®」を採用。かつて林や森であった北青山に存在していたであろう大樹の影を模した印象的な空間デザインを演出。それらをCo2の排出量を抑える武蔵塗料のバイオペイントで色付けすることで、テーマに沿った色鮮やかな空間となりました。

(左)台湾デザイン研究院「the SP!RAL」/CRYSTN ©Daisaku OOZU(右)Seeds of Heritage/Orna Tamir Schestowitz

台湾デザイン研究院(TDRI)の特別企画「the SP!RAL」では、回収ガラスを用い、マウスブローのガラス型を使用して結晶の形状を作り出したCRYSTNなどサーキュラーエコノミーの7ブランドを展示。イスラエル人デザイナー Orna Tamir Schestowitzは、イスラエルの土により生みだされた有機的なシェイプの器に、独自の技術で同地の恵みの数々を美しく映し出した、現代に問いかけるような作品群「Seeds of Heritage」を展示しました。その他、木材資源として価値のない小径木や枝葉、樹皮、実などを、完全水性アクリル樹脂と混ぜ合わせ製作した、森を凝縮したようなユニークな表情を持つ狩野佑真によるマテリアルデザインForestBank™️や、アートとサステナブルが融合した個性的なフォルムの作品、天然由来のプラスチックブランド「LandLoop」のアートプロジェクト“Printed Sculpture”のGELCHOPとBCXSYの作品にも注目が集まりました。

ユニークな素材や視点を生かした若手デザイナーによるコレクション

quantum × Stratasys Japan

Hz SHIBUYAには、UNDER 30に選ばれたmessagingleaving(Chialing Chang)やKaryn Limをはじめ、注目度の高いクリエイターが集まりました。 messagingleavingは、真鍮やステンレスの多様な表情を引き出す照明器具と鏡のコレクションを発表。日本の詩人「小内光」の詩とともに、見えるものと見えないものの間で現実と反射、そして光と視覚の間のはかない知覚を探る展示を行いました。

(左)Karyn Lim(右)messagingleaving (Chialing Chang)

Karyn Limは、一見デザインオブジェを思わせる、幾何学ピースを組み合わせた立体のバッグがフラットな形へと変形するトランスフォーメーションバッグを展開 。インドネシアのデザイナー、ファニ・アトマンティと木彫り彫刻家たちとのコラボレーション作品や、竹尾のカラー段ボール紙ファインフルートを使用したスペシャルエディションなどを展示しました。

野村仁衣那

100年以上経った今も現役で使用されている煉瓦アーチが印象的な「日比谷OKUROJI」では、UNDER 30に選ばれた野村仁衣那が「Life Through Holes」を展示。微細な穴で物体の表面を埋め尽くす緻密で繊細な作品は、見る者を不思議な世界に引き込みます。

(左)古舘 壮真(右)満永隆哉

同じくUNDER 30の古舘 壮真は、デジタル上で引き起こされる非現実的な要素をヒントに制作したインテリアエレメンツ「MASS -2022-」を展示。会場では制作過程のムービーが流されました。また、約40坪の大空間には、UNDER 30の満永隆哉が主催するベルリンの壁のオンライン化プロジェクト「BERLIN WALL ONLINE」のオフライン展示「BERLIN WALL TOKYO」を開催。開場時間をベルリン現地の日照時間に合わせ、またベルリンのライブカメラから流れる環境音をリアルタイムで流す演出も行われました。

東京ミッドタウンで巡る、環(めぐ)るデザイン

(左)山本大介(右)ambi & STUDIO RELIGHT ©2022 RYO KAIKURA

東京ミッドタウンでは、「環るデザイン」をキーワードに2組のクリエイターが作品を展示。インテリアデザイナーの山本大介は、流動するマテリアルサイクル“ FLOW ”を展示。廃棄資材の中で最も多い素材の一つであるLGS(軽量鉄骨)に着目したこの作品は、空間がつくられ壊されることを前提とし、解体後に再び家具に再構築する取り組みで、資材を廃棄しない流動するマテリアルサイクルを生み出すことに挑戦しています。会場には全8作の個性的なプロダクトが展示され、デザインだけでなくその意義深い社会性にも注目が集まりました。

また、ambi & STUDIO RELIGHTがseries「sea」を展示。STUDIO RELIGHTの母体である株式会社サワヤで適正処理された廃蛍光灯リサイクルガラスを材料として用いた作品は、リサイクルガラス特有の「色」や「気泡」を活かすために鋳造による塊形状をベースにガラスを成形、一部の作品は鋳造の型に砂型を使用し独特の表情を与え、リサイクルガラスということを忘れるほどの美しいプロダクトが並べられました。

日本の技術、素材、伝統を生かした家具・プロダクトを提案

2 days at Ishinomaki Laboratory

赤坂の会場「KAISU」では、建築家の芦沢啓治が代表をつとめる石巻工房による「2 days at Ishinomaki Laboratory」を開催。芦沢啓治を含む7人のデザイナーが2日間石巻工房に滞在し、工房に近接したゲストハウス、石巻ホームベースに置く家具を想定してデザインされた11種類の家具が展示されました。DIYのスキルと精神を活かした各デザイナーによるそれらの作品群は、佇まいも美しく、また、DIYのさらなる可能性の広がりを感じさせるものとなりました。

参加クリエイター:石巻工房(芦沢啓治、イトウケンジ、熊野亘、寺田尚樹、トラフ建築設計事務所、ノーム・アーキテクツ、藤城成貴)、原田真之介/石垣純一/鈴木僚、生粋 namaiki(鈴木舞)

その他、原田真之介/石垣純一/鈴木僚、三人のデザイナーが「移場所」をテーマに、家の中で自分の居場所を作る可搬性のある3つのテーブルCHOCHIN STOOL/ Array Polar/ flexを展示。築約60年の建築を改装した会場を含め、日本に古くからある技術やライフスタイルなどを大切に引き継ぎ、アップデートしていく取り組みとその展示を見ることが出来ました。

倉本仁、谷内晴彦がプロデュースを手掛けた

北海道発のブランド〈COSONCO QS(コソンコクス)〉

COSONCO QS

北海道、旭川市の木製家具メーカー「カンディハウス」と、砂川市の馬具・皮革製品メーカー「ソメスサドル」による新ブランドCOSONCO QS(コソンコクス)の初お披露目となったエキシビション。デザイナーに倉本仁、アートディレクターに谷内晴彦を迎え、両社の製造過程で生じる端材を積極的に取り入れ、玩具でも置物でもない、日常の傍で豊かさを感じられるアートオブジェを展示。端材の組み合わせから生まれた製品のため、革の色も木の表情も、一つ一つが異なります。世界でたったひとつのアートオブジェに出会える展示は、端材で構成された独創的な会場がさらに高揚感を高め、今年話題の展示のひとつとなりました。

伊ラグジュアリーブランドのエレガンスと若手アーティストの感性が生み出す作品たち

FLEXFORM TOKYO

「FLEXFORM TOKYO」ショールームでは“日常”の中に宿る“美”へ、たゆまぬ探究とトレンドに流されない、気品ある美意識の精錬によってさらなる進化を遂げたFLEXFORM NEW COLLECTIONの展示とLights Galleryの鈴木 結加里氏をキュレーターに迎え、言上 真舟・谷川 美音・植村 宏木 3名の若手アーティストの作品を合わせて展示するコラボレーション企画「儚さにある美を巡る時間」を開催。FLEXFORMの普遍的なエレガンスと3名のアーティストが手がける儚い美しさがひとつに溶け合う空間で、アートが溶け込んだ暮らしを体験できる展示となりました。

ミラノサローネを彩った注目デザイナーの新作発表

今年のミラノサローネ国際家具見本市の前夜祭で行われたプライベート晩餐会で会場を彩った、田村奈穂による照明「TURN +(ターンプラス)」とその新作を含む美しいAmbientecの照明作品の数々が、同晩餐会のテーブルトップのスタイリングを担当したプラントアーティスト川本諭との初のコラボレーションとなる空間のなかで「DISSECT(ダイセクト)」と題して開催されました。会場となったLIGHT BOX STUDIO AOYAMAの屋上を含む3層を使い、DISSECT展で発表されたTURNのスペシャルエディション「TURN CRAFT(ターンクラフト)」をはじめ、 小関隆一によるXtal(クリスタル)シリーズや、吉添裕人によるhymn (ヒム)、松山祥樹による「Cachalot(カシャロ)」、倉俣史朗(1934-1991)が手がけた「SAMBA-M」の復刻となる作品なども展示され、美しい世界観を堪能できる展示となりました。

佐賀県発の新ブランドによる、ミラノサローネ初出展の2022年新作コレクション

Ariake COLLECTION  ©Tomohiro Mazawa

家具の町、佐賀県諸富町のレグナテックと平田椅子製作所が立ち上げたグローバル家具ブランド「ARIAKE」は、今年ミラノサローネに初出展した2022年新作コレクションを発表。また、照明ブランドLE KLINT(レ・クリント)とのコラボレーション作品は、様々なフォルムやデザインのものが展開され、照明とアートを兼ね備えたようなその作品は、会場を印象的な空間へと演出していました。

沖津雄司×DCW éditions PARIS による柔らかな灯りをもたらす照明作品

FOCUS by YUJI OKITSU

ロイヤルファニチャーコレクションの青山ショールームでは、沖津雄司がデザインし、フランスの照明ブランドDCW éditions PARIS により製品化された照明作品「FOCUS」が展示されました。その場の環境を織りなす光・空気・風景の各要素に改めて焦点を当て再構築することにより、環境の変化に呼応した新たな光景絶えず空間に作りだします。モビールの様に優しく揺れるたびに会場に光があふれ、FOCUSの世界観を堪能できる空間となっていました。

フィジカルイベントの復活やあらたなプラットフォームづくりなど活気に溢れた10日間に

約3年振りに国内外のクリエイターや企業、ブランドなどが東京に集結した今年のDESIGNART TOKYOでは、レセプションパーティをメイン会場のワールド北青山ビルにて、混雑を避けるため二部制で開催しました。今年はレセプションパーティを含めイベント全体も引き続き感染症対策を行っての開催となりましたが、出展者によるフィジカルな集まりやイベントも実施。出展者、関係者、来場者等の出会いや交流が積極的に行われ、新たなインスピレーション、感動を生みました。

< DESIGNART TOKYO 2022 開催概要>
会期:2022年10月21日(金)~10月30日(日)
エリア:表参道・外苑前/原宿・明治神宮前/渋谷/六本木/銀座
主催:デザイナートトーキョー実行委員会
発起人:青木昭夫(MIRU DESIGN)/川上シュン(artless)/小池博史(NON-GRID)/永田宙郷(TIMELESS)/アストリッド・クライン(Klein Dytham architecture)/マーク・ダイサム(Klein Dytham architecture)
オフィシャルWEBサイト: http://designart.jp/designarttokyo2022/