35平米の極小地を活かした、移り変わる光を1日中楽しめる3階建+ロフトの住まい「佐竹邸」
前編:「これまでにない出会いや発見を生み出す空間にしたい」アラウンドアーキテクチャー代表・佐竹雄太が語るYouTubeチャンネル設立の経緯や今後の目標について
東京・練馬区の住宅「佐竹邸」は、不動産業を営むオーナー・佐竹雄太さんのために建てられた、二人暮らしの夫婦のためのワークスペースを持った住宅です。35平米の極小地をベースに、将来的な販売も見据えた在り方を考慮して計画された住宅は、多方面の制限から生まれた段差や形状のズレを取り込みながら辿り着いた、不変的な居心地の良さが魅力の空間です。
35平米の極小地の価値を最大限に引き出したプラン
設計を手掛けたのは株式会社工藤浩平建築設計事務所 代表取締役を務める建築家・工藤浩平さん。オーナーの同年代であり、工藤さんの心地の良い空間づくりへの姿勢に共感していたこともあり、自邸の設計はぜひ工藤さんにお願いしたいと考えていたそう。
今回の「佐竹邸」では、将来的に売ることができる住宅にしたいという、不動産業を営むオーナー・佐竹雄太さんらしい要望から、建築にはデザインの自由度が高い純ラーメン造を採用。
オーナーが希望する広さを確保するため、敷地目一杯まで建築物が占める3階建+ロフトのプランとなりました。
敷地は旧川越街道と私道に挟まれ三方に開いた立面をつくれるため、1階にワークスペース・事務所運営のコーヒースタンドを設けて、まちと生活を強く結び付ける形に。
玄関足元にまちの気配のみ通す下窓を設け、ワークスペースは路地側を全面開口にすることで、ゲストを受け入れやすいオフィスとして構えました。
室内から開口側を見るとレベル差があるため距離が感じられ、実際より広く見える構成です。
多方面に配された窓から差し込む光が心地よい居住空間
2階にはリビングダイニングを配置。
リビングは前面道路にせり出し3面をガラス張りにすることで、住まい手によって用途を変える舞台のようなスペースに。
フロアのアクセントとなった床面のパーケットは色が濃すぎると主張してしまうため、明るめのニュートラルなものを選択。
将来のバトンパスを見据え、敷地を最大限活かせる構造づくりに予算を集中するべく、設備や内装はなるべく安価な既製品を採用することに。
ところどころに内装材として取り入れられた塩ビタイルや塩ビシートも、周辺のスチールなどのストラクチャーと同居できるような色味を考慮することで、空間の統一性を高めています。
3階には水回りとサンルームを配置。
空地に対して大きく開くことでまちへの広がりを感じる空間に。
最上階となるロフトはトップライトからの光が広がるスペースに。朝目が差し込むようにとのオーナーの要望で小さな窓を設置。光はもちろん、吹き抜ける風が心地よく、就寝前後のリラックスした時間を過ごせるプライベート空間です。
1日中移ろう光を楽しめる、居心地の良い極小地の住まい
各階に大きな窓が色々な方向に配されることで、それぞれの窓から入り込む光が心地よい「佐竹邸」。
「朝起きて、ロフトから一つ一つ1階へと向かって窓を開けていくと、だんだんと身体が目覚めて、光を浴びながら生活している実感があるんです」と、光を身近に感じる暮らしに大満足のオーナー。限られた敷地や多くの制限から導かれたユニークな構成の住まいは、現オーナーはもちろん、次のオーナーにも愛されるであろう、不変的な居心地の良さに溢れていました。