「独特なのは建築家と大工の関係性」建築家・マニュエル=タルディッツが日本を拠点に構えた理由と日本建築の特性
前編:「外部より内部、インテリアに惹かれる」建築家・マニュエル=タルディッツが大切にしているデザインや好きな空間
加茂紀和子・曽我部昌史・竹内昌義・マニュエル=タルディッツの4人の建築家からなる建築設計事務所〈みかんぐみ〉。上下関係のない対等なパートナーシップにより、建築から都市計画まで幅広いデザインを手掛けられています。今回〈みかんぐみ〉共同代表であり、明治大学の建築・都市デザイン国際プロフェッショナルコースの特任教授とICSカレッジオブアーツ教授を務めるマニュエル=タルディッツさんに、日本を活動拠点にされた理由やフランスと日本の建築の違いについて伺いました。
日本を活動拠点にした理由
パリで生まれ、大学までフランスで過ごされたマニュエルさんですが、卒業後に進んだ大学院、そして活動拠点を日本にした理由は何でしょうか。
「父親が自身の視野を広げるために自国以外の国で暮らしてみたいとアメリカを選んで生活していたのですが、フランスで生まれ育った私に対しても、父はフランス以外の国に行くことを勧めてくれたんです。そこで、どこの国にしようか考え始めた時に、面白い現代建築があるところをマップで探した時に候補になったのが日本でした。その頃は建築にそれほど詳しくはなかったのですが、日本の文化にはもともと興味があったので東京を選びました。最初は1年半だけのつもりでしたが、段々と好きになって今に至ります(笑)。」
1年半の予定がいつの間にか生活拠点に(笑)。お父様の助言が人生の転機となったのですね。
フランスと日本の建築設計の違い
フランスと日本で建築設計に対するアプローチで大きく異なる点はありますか。
「日本建築やフランス建築といった区分けがあるとは考えていません。ただ、日本で勉強になったと思っているのが木造建築です。フランスでは珍しく、あまり見られないんです。大工さんの仕事を通じて木材への理解が深まりました。なので木造であること、また建築家と大工さんの関係性は日本特有のものだと思っています。」
なるほど、海外は石造や煉瓦造りのものがスタンダードかもしれませんね。日本の風土がそのまま建築にも特徴として表れているようです。
新型コロナウィルスの影響とは?
長く続く新型コロナウィルスとの共生。リモートワークや時差出社など、生活様式にも新しいスタンダードが生まれましたが、ご自身の活動に影響はありましたか?
「書斎とか木にこだわる方が増えた印象ですね。あとは住宅設計の依頼が増えたように思います。皆さん住まいで過ごす時間を重要視しているのかもしれません。」
在宅ワークがスタンダードになりつつある今日。住空間に対する意識は高まっているのかもしれませんね。
ライフイズ”エターナルディスカバリー”
〈みかんぐみ〉での活動を始め、個人でも様々なシーンで活躍されているマニュエルさん。そんなマニュエルさんにとってライフイズ◯◯の〇〇に入るものは何でしょうか?
「“エターナルディスカバリー”ですね。人は必ず、生まれてからずっと勉強するものだと考えています。いくつになっても物事をわかっていると思わないことが大切ではないでしょうか。新しい実験や経験がないと人生は面白くないはずです。永遠に発見を続けたい、という想いを込めてこの言葉にしました。
人生は永遠の発見である。そんな視点で日々を過ごすと、新しい出会いや気づきが人生を豊かにしてくれそうですね。
視野を広く持つことで生まれる柔軟な発想
国や慣習にとらわれず、常に好奇心を持って暮らす中で生まれる柔軟な視点は、〈みかんぐみ〉としてチームで動く上でも重要なポイントとなっているのかもしれません。そんなマニュエルさんが大切にされているデザインや好きな空間については「『外部より内部、インテリアに惹かれる』建築家・マニュエル=タルディッツが大切にしているデザインや好きな空間」からどうぞ。