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建築家・隈研吾が語る。自身こだわりの暮らしスタイルや、今後の暮らしデザインに必要なこと。

建築家・隈研吾は、東京オリンピック2020のメイン会場である新国立競技場の建設に携わり、建築業界だけでなく日本中の人が「あの隈研吾が作った」と名前を出すほど注目を集めている。毎週月曜日に放送される福岡のラジオ放送CROSS FM「ライフスタイルメディア #casa」では、今回ゲストとして隈研吾氏を招き、暮らしとデザインについてだけでなく、これまでの偉大なる建築作品について伺った。

建築家・隈研吾(くま けんご)とは

Photo © J.C. Carbonne

高いデザイン性と木材などの自然素材を使う「環境に溶け込む建築」が特徴的な建築家・隈研吾(くま けんご)。

近代的に「和」のテイスト溶け込ませ、その作品傾向から「和の大家」とも呼ばれている。

これまで様々な賞を受賞し、「新国立競技場」の建築以外にも、2020年開業予定のJR品川新駅やデンマークのアンデルセン美術館など、日本だけでなく世界中で多くの建築物に携わる。

その他の代表作は、サントリー美術館、根津美術館、東京大学大学院情報学環ダイワユビキタス学術研究館、スターバックスコーヒー・太宰府天満宮表参道店など多数。

隈研吾が大切にする「暮らしの形」

Garden Terrace Nagasaki © Daichi Ano
Garden Terrace Nagasaki © Daichi Ano

毎回#casa のインタビューでは最初に「暮らしの中で大切にされているデザインとは何か」を問いている。

この質問に、隈研吾は柔らかな口調で「心が癒されるような、あったかいデザインが僕の生活スタイルには一番大事ですね」と答えた。

彼は今回のインタビューで度々「あったかいデザイン」という言葉を多く使っており、それこそが自身の生活スタイルの軸にあり、建築にも柱として迎えているところがあるという。

20世紀の建築はコンクリートが主でそれが冷たいものだった、と語る隈 氏の原点には「それを温かいものに変えたかった」という想いが強くあるのだ。

Jyubako @ Kengo Kuma & Associates

そもそも、建築家が「暮らし」ついて答えるとなれば、難しい言葉や観点で話が進むのではないかと構えていたが、何とも私たちと等身大な返答と、彼の優しげな話し方に拍子抜けを食らったのは他でもない。

隈研吾という人間の内なる所に「あったかい」塊のようなものを感じることができたのも、印象的な一面であった。

そんな彼の好きな場所は「家のテラス」。自宅のテラスで風に吹かれているのが好きだそうだ。隈 氏の好きな場所は、彼自身が「一番癒される特別な時間」とも紐づいているように感じる。そしてそれは「自然に溶け込み、馴染むこと」に重きを置いていると言えるだろう。

この「自然に溶け込み、馴染むこと」は、隈研吾氏が創り出す建築でもとても重要な要素として考えられている。

長崎県立美術館

長崎県立美術館の特徴は、敷地内布運河を挟むようにして2つの棟が立つこと。

この特徴的な立地で建築を手がけた隈氏は、「敷地の真ん中に運河が流れる特徴を、やりにくいのではなくて<逆に最高に素敵じゃないか!>と感じた」と述べた。

運河の周りを散歩できるミュージアムを考え、最終的に「運河のおかげでうまくいきました」と話をするその敷地に、空間と建築が溶け込むデザインを創り出したのだ。

ガーデンテラス長崎 Hotel&Resort

Garden Terrace Nagasaki © Daichi Ano
Garden Terrace Nagasaki © Daichi Ano

隈氏が手がけたガーデンテラス長崎 Hotel&Resortの建築は、ふんだんに木材を使い様々な木箱を重ねたようなデザインが印象的。一歩その敷地に入れば柔らかな木の香りと、卓越な設計で宿泊客を魅了する。

その建築について隈氏は「あの規模のもので、あれだけ木材を使ったのは初めてですね。」と振り返りながら、その理由を話してくれた。

木材を多く使う理由になったのは、ホテルが持つ贅沢な立地にあった。ガーデンテラス長崎Hotel&Resortがあるのは、長崎湾が一番よく眺める丘の頂上。そこからの眺めを隈氏は大変気に入ったのだ。

「木の建物からあの海を見たら最高だな」と思い、木を多く使う建築をしようと思った」と話す。ここでも「自然に溶け込み、馴染むこと」を大切にする建築家・隈 研吾だからこその観点が、コンセプトを創り出すことに繋がっていると言えるだろう。

歌舞伎座

隈研吾が補修でも新築でもなく「再建」を行ったことで知られる歌舞伎座。「全部新しく作ることよりも、伝統を尊重しながら近代と結びつける方がむしろ楽しい」と語る、隈氏の歌舞伎座へのコメントはとても興味深い。

「その建物を見ると、その人(建築者)が今でも生きていて一緒に仕事しているような気持ちになるんですよねぇ~」と不思議な感情を述べる。同じ建築の仕事をしていると、独特な線や癖が伝わってきて、いまでもそこに居るような感覚になるのだそうだ。

「制約が多いことよりも、昔の人と一緒にモノを作っているような感覚が楽しいですね」と話す彼の口調は軽々としていて、まるで当時のことを思い出しながら楽しげに振り返っている様に感じられた。

建築家・隈研吾が考える「今後の暮らしデザインの変化」

Garden Terrace Nagasaki © Daichi Ano

隈氏は今後の暮らしデザインについて「今、建築や都市のすごく大きな転換期だと思ってるんですよね」と話を始めた。今は暮らし方や働き方が変わる時代に差し掛かっており、それは今までの建築が変わるタイミングだと考えたのだ。

隈氏は「これからは<どこで働いてどこで住むか>というスタイルが全く変わってくる」と述べ、今の様にオフィスビルで仕事をし、郊外の家に帰る時代は終わりを迎えるのではないかと考えている。

これからの暮らしスタイルは、家の中で仕事ができ、自然の野原の中でもケータイで仕事ができていく時代。

だからこそ「今の様なコンクリートの建物の中で仕事をするのはちょっとこれからの時代と合わない」と考え、隈研吾が重要視する「あったかいデザイン」が大切にされる暮らしデザインへと変化されるのであろう。

力まず、自然体な隈研吾の人間性が生み出す観点には、敢えて「規約」を味方につけ、さらに互いの魅力を高める魅力がある。その根本には「あったかいデザイン」があり、それは今後暮らしスタイルが変化する中で必要不可欠になるのだろう。

【9/9】隈研吾さん(建築家)

くるみ

くるみ

グラフィック/ウェブデザイナー兼ライター。ニッチでコアな音楽ディストロレーベル ano records を主宰。スーツケース1つで突然移住してしまう癖がある。(アメリカ3ヶ月・オーストラリア1年・石垣島半年)

目指すは、海外ノマドワーカー。暮らしながら世界一周。いつもワクワクの向かう先へ!

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