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その名も”実験住宅”?森の中に佇むアルヴァ・アアルトのサマーハウス「コエ・タロ」

今回はアアルトが夏の間過ごしたと言われている別荘「コエ・タロ」をご紹介します。建物はセイナッツァロの町役場からバスで10分ほどの場所、湖上の小さな島であるムーラッツァロにあります。様々なレンガやタイルが使われた外観が特徴ですが、室内は極めてシンプル。アアルトがくつろぎを求めた空間には、自然との調和が感じられる心地よさがありました。

アルヴァ・アアルトが貴重な夏を過ごした家

アアルトがフィンランドの短い夏を過ごしたという夏の家「コエ・タロ」。

入り口の先はまさに森の中。小道を進んでいきます。

バイヤネ湖畔の森の中に建つ建物は、様々なレンガやタイルのパターン実験が行われた住宅としても有名で、コエ・タロという名前は実験住宅を意味します。

フィンランドらしい背の高い樹々の中をさらに進むと、それらを避けるように建つ不定形な平面の白い建物が見えてきます。これがアルヴァ・アアルトが実験住宅としてデザインした夏の家・通称「コエ・タロ」です。

北欧のライフスタイルにとってサマーハウス(夏の家)のような別荘は、短い夏を楽しむために重要なのだそう。

実験住宅ならではの工夫の数々

基本的には白塗りのレンガで覆われた外観で森の中でも際立つように佇んでいます。

白く塗り込められた外側とは一転して、壁の内部は数え切れないほどのパターンで積まれたレンガで覆われています。

それは庭の床にも広がっており、住宅というより公共空間のようなひらかれた世界観を庭の内部に作り出しています。この複雑なレンガ積みこそ「実験住宅」の所以。赤褐色のレンガの中で、施釉の青や白のタイルが所々使われていて目を引きます。これらのレンガは他の建築で使った残りを活用しているようで、ローコストで建てられた住宅であることがわかります。

また、アアルトはこのレンガの壁を使って太陽光による暖房も試みようとしていたとも言われています。

アアルトは植物や木々が生い茂る様子を、建築で強調するデザインをよく取り入れており、蔦が壁や塀などの高い位置まで上がっていく様子は、「セイナッツァロの村役場」や「アアルト自邸」、「アアルト・アトリエ」などにも見られます。

ただ建物を囲うのではなく、この森の中であっても、自然を活かして自然の力強さを見せるデザインにしているのです。

窓の外の風景もインテリアに。やわらかな光が差し込むリビング

コの字型の庭からコエ・タロの中に入るとロフト付きのリビングがあり、北欧らしい木を基調としたインテリアが作る心地よい空間は、質素で無駄のない作りになっています。木造の梁を木の柱で吊った部分がアクセントに。

ちょうど椅子の高さに揃えた窓台には、陶器の雑貨が飾られ今でもアアルトが暮らしているような雰囲気に。窓からはレンガの赤に植物のグリーンが映える庭と、その奥に湖が望め、絵画のような借景が広がります。

シンプルで質素な印象ながらも、フローリングや窓枠、家具に至るまで木を多く取り入れた室内は、実験住宅としてローコストでありながら自然を暮らの身近に感じる豊かなライフスタイルが見てとれます。

ダイニングのクロスは、妻のアイノ・アアルトによるデザイン。木や藤など自然素材を用いた家具やインテリアは、暖かさを感じさせてくれるうえ、どこか日本らしさも漂い、落ち着いた印象を与えてくれます。

最小限住居のように無駄なくまとめられた部屋たち

造作の棚などのちょっとしたポイントに遊び心がみられます。白い壁に木のナチュラルな色味に加え、ところどころに使われるブルーやイエローなどが軽やかなアクセントに。

明るい色味を散りばめた空間は、木のあたたかみも合わさり居心地の良さを感じさせてくれます。

キッチンの窓からは、針葉樹の北欧らしい森の風景が絵画のように広がり、料理中も自然を感じながら作業を楽しめそう。

フィンランド名物のサウナ小屋

コエ・タロから湖の方に降りて行くと、フィンランド名物のログハウスのサウナ小屋があります。

このサウナは伝統的なスモークサウナ(部屋の中に煙を充満させて石を熱する)で、小屋もフィンランド古来のログに見えます。しかし、地面の起伏をならさず、不整形に積まれたログハウスは他では見られない独創的なものだといわれています。

ルーバー状のファサードのボート小屋

昔は、この周辺に道路が通っていなかったため、アアルトはボートによってコエ・タロを訪れており、湖畔にはボードをしまう小屋もあります。コエ・タロの建築中にも、資材を運ぶ時も船で運んだそうです。

木のルーバーのデザインがかっこいいファサード。アアルトがこの建物で試みた様々な建築的実験のひとつが、サウナ小屋にもみられたこの基礎です。フィンランドは固い岩盤が多く、土を掘ると大きな岩がたくさん出てきます。コエ・タロはその岩盤の上に、岩を基礎として丸太の加工を組むという、独特な技法が使われました。

このボートもアアルトのデザイン。

ボートの全景はユヴァスキュラ市内にあるアアルト美術館にある模型で見ることができます。

アアルトの創造性を高めた一軒

アルヴァ・アアルトの夏の家・通称「コエ・タロ」は、フィンランドらしい森の中でシンプルで静かに過ごすことのできる空間でありながら、名前の通り様々な試みがなされています。基礎を使わない、太陽光による暖房設備、多様な煉瓦の積み方と、アアルトはここでもインスピレーションを磨いたのかもしれませんね。

Alvar Aalto Experimental – アアルト・夏の家/コエ・タロ

入館料:€20
URL : https://www.alvaraalto.fi/en/location/muuratsalo-experimental-house/
住所:Melalammentie 6, 40900 Jyväskylä, Finland

榎本綾

榎本綾

新しいものよりヴィンテージに惹かれます。

建築家は坂茂が好き。

design casa

建築家と建てる家。

家族のライフスタイルを尊重した、

家族のための「特別な住まい」をつくりあげます。