オープンガレージが佇まいをつくる、建築家が手がけたミニマルな住まい「ふわりと浮かび上がる住まい」

鹿児島県薩摩川内市の穏やかな住宅街に、グレーの箱を積み重ねたような一軒の住まいが完成しました。その名も「ふわりと浮かび上がる住まい」。無駄をそぎ落とした直線的なフォルムに、2台分のオープンガレージを装飾として取り込んだ外観は、機能性と美しさが共存するデザインです。グレーの静かな佇まいの奥には、家族それぞれの居場所をふわりと浮かび上がらせる、建築家の緻密な設計が息づいています。

三面を隣家に囲まれた敷地から生まれたデザイン

design casa ふわりと浮かび上がる住まい

計画地は、東側で道路に接し、残る三面を隣家に囲まれた約314㎡の敷地です。背後には緑豊かな山の稜線が連なり、のどかな風景と住宅街が交わる立地。周囲からの視線とどう向き合い、どこに開くのか。建築家はこの条件を丁寧に読み解きながら、ガレージ2台分、ダウンリビング、STUDY、ヌック、さらには趣味の部屋という多様な要望を、空間を分けたり離したりと、層のつながり方を意識しながら一つの住まいへとまとめ上げました。単に要望を並べるのではなく、それぞれの居場所に高さや距離の差を与えることで、限られた面積の中に立体的な広がりを生み出しています。

design casa ふわりと浮かび上がる住まい

生まれたのは、層(かさな)る時間とまばらに浮かぶ居場所が共存する住まいです。静と動が交差する立体的な空間構成の中で、スキップフロアや趣味室、ヌックが暮らしの時間を折り重ね、心の居場所をふわりと浮かび上がらせる。空間の高低差が時間の層をやさしく編み、点在する居場所が暮らしのリズムや気配をそっと揺らしながら、居心地のいい余白として住まいに広がっていく。距離があるからこそ、つながりが生まれる。そんな想いがコンセプトに込められています。

オープンガレージのあるミニマルな外観

design casa ふわりと浮かび上がる住まい

外観は、屋根も外壁もブラックからグレーのトーンで統一された、直線的でミニマルな佇まいです。道路側に大きく開いた2台分のオープンガレージは、単なる駐車スペースではなく、深い軒とスチールの細い柱がつくる陰影によって、ファサードそのものを構成する装飾的な存在となっています。ガレージの奥には芝生の庭がのぞき、グレーの塊の中に切り取られた風景が、佇まいに奥行きを与えています。

design casa ふわりと浮かび上がる住まい

2階のボリュームは1階よりも小さく絞られ、箱を積み重ねたようなプロポーションが軽やかなリズムを刻みます。窓の数を抑えた壁面は周囲からの視線をやわらかく遮りながら、住宅街の中で静かな存在感を放っています。玄関ドアやサッシ、水切板金から樋にいたるまでブラックで統一されたディテールが、ミニマルな外観をいっそう引き締め、時を経ても色褪せない普遍的な美しさをかたちづくっています。

暮らしの気配を受け止める玄関

design casa ふわりと浮かび上がる住まい

ガレージの奥に導かれるようにたどり着く玄関は、雨に濡れずに車から室内へと移動できる、日常の使い勝手を考え抜いた動線上にあります。扉を開けると、黒いタイルの土間と大判タイルの床が斜めのラインで切り替わる、印象的なしつらえが迎えてくれます。チャコールブラックの建具と収納扉が壁面に溶け込み、飾り棚のニッチがやわらかな明かりを受け止める。外観のミニマルな世界観が、扉を開けた瞬間から室内へと途切れることなく連続していく設計です。

オープンガレージが佇まいをつくるミニマルな外観

三面を隣家に囲まれた敷地条件から導かれた計画と、オープンガレージが佇まいをつくるミニマルな外観。グレーの箱が積み重なる静かなファサードの内側には、高低差とリズムが織りなす立体的な暮らしの舞台が広がっています。後編は、ダウンリビングと吹抜けのあるLDK、そしてヌックやSTUDYといった点在する居場所へと続きます。