一点モノの魅力。「コレクティブルデザイン」がインテリアの主役になる時代

今年のミラノデザインウィークで最も熱い視線を集めたキーワードのひとつが、「コレクティブルデザイン」です。これまで、このムーブメントはミラノ市内のギャラリーやフォーリサローネを中心に盛り上がりを見せてきました。しかし今年、ついに本会場であるフィエラ・ミラノ内に、コレクティブルデザインに特化した専用エリア「サローネ・ラリタス」が新設。デザインの“本流”であるサローネがこのジャンルを正式に取り入れたことは、インテリア業界における大きなパラダイムシフトを象徴する出来事といえるでしょう。

そもそも「コレクティブルデザイン」とは何か?

コレクティブルデザインとは、直訳すれば「収集品になり得るデザイン」のことです。大量生産される一般的な家具とは異なり、現代のデザイナーや作家が自らの手で制作した一点モノ、あるいは限定生産のアートピース、さらには歴史的価値を持つヴィンテージ家具などがこれに含まれます。単なる実用品としての機能を超え、作家の思想や工芸的な要素が色濃く反映された「アートとデザインの境界線」に位置する作品群を指します。

名作ヴィンテージと現代作品が交差するミックススタイル

Salone Raritas NILUFAR Andrea Mancuso Dining Table Terrario Oval © Filippo Pincolini

今年の展示で際立っていたのは、古いヴィンテージ家具と最先端のコレクティブルデザインをミックスして空間をスタイリングする手法です。ミラノを代表する有名ギャラリー「Nilufar Depot(ニルファー・デポ)」では、ジョージ・ナカシマのクラシカルなヴィンテージ作品と、現代の先鋭的な作品を和洋折衷で構成し、畳を敷いた空間に展示するというセンセーショナルな演出を行いました。

また、若手ブランドが集まる会場「コンヴェイ」の展示「Far from Perfect」でも、名作ヴィンテージチェアと、現代の若手作家によるエッジの効いた作品が見事に調和していました。

古いものと新しいものを並列に扱うことで、それぞれの個性がより引き立ち、インテリアに深みと文脈が生まれるのです。

より身近に、軽やかに楽しめるコレクティブルの新しい波

コレクティブルデザインと聞くと、ギャラリーで数百万から数千万円で取引されるような高価なものを想像するかもしれません。

Salone Raritas HERING BERLIN Michele Di Dio Equinox

確かに「サローネ・ラリタス」にはそうしたハイエンドな作品も並んでいました。

しかし一方で、若手デザイナーが集うアルコーバやコンヴェイなどの会場では、数万円程度から手に入る、より身近なコレクティブル作品が豊富に展示されていました。若きクリエイターが自らの手で生み出した作品を、手頃な価格で直接買い付け、その熱量をそのまま自分の部屋に持ち帰ることができる。この「幅の広さ」こそが、現在のコレクティブル市場の最大の魅力です。

作家の「執念」と「魂」を暮らしに取り入れる

なぜ今、これほどまでにコレクティブルデザインが求められているのでしょうか。それは、AIによる自動生成や効率化された量産品が溢れる社会において、人間が圧倒的な情熱と時間をかけて生み出したものへの渇望があるからです。作家の「執念」や「魂」が込められたピュアな一点モノは、空間に置くだけで私たちの心を動かし、暮らしのモチベーションを大きく引き上げてくれます。完璧に整えられたインテリアだけでなく、どこかノイズを含んだような「特別な一点」を迎え入れる。それが、これからの新しいインテリアの楽しみ方となるでしょう。