2つの庭とピットリビングがつくる、建築家が提案する光と居場所のデザイン「おもてなしと安らぎの暮らし」

前編:建築家の設計力が光る距離感をデザインした店舗併用住宅「おもてなしと安らぎの暮らし」

住まいにおける快適性は、広さだけでなく「どのように居場所がつくられているか」によって大きく左右されます。立体的な空間構成がもたらす豊かな暮らしのあり方を見ていきます。

2つの庭がもたらす光と風の関係性

この住宅のLDKは、2つの異なる性質を持つ庭に挟まれるように配置されています。一方はご実家側とゆるやかにつながる庭、もう一方は家族専用のプライベートガーデンです。この2つの外部空間が、光と風を室内へと導き、環境的な豊かさを生み出しています。

単なる採光のための開口ではなく、庭そのものを空間構成の一部として取り込むことで、内と外が連続するような感覚が生まれています。時間帯や季節によって変化する光の質が、室内に多様な表情を与え、日常の中に自然の変化を感じることができます。

キッチンを中心とした生活の核

LDKの中心には、存在感のあるキッチンが配置されています。ブラックで統一されたキッチンは、木質の床や家具と対比を成し、空間に適度な緊張感をもたらしています。

ダイニングとの距離も近く、日常の動作が自然につながるように計画されています。

また、キッチンからは庭やリビング全体を見渡すことができ、家族の気配を感じながら過ごすことができます。このように、キッチンを単なる作業スペースとしてではなく、暮らしの中心として位置づけている点が特徴です。

ピットリビングが生み出すもうひとつの居場所

LDKの一角には、床を一段下げたピットリビングが設けられています。このレベル差によって、空間の中に緩やかな区切りが生まれ、同じ空間でありながら異なる居場所が成立しています。天井もやや低く抑えられており、包まれるような安心感を感じられる空間です。

さらに、このピットリビングはプライベートガーデンと直接つながっており、外部との一体感を強く感じられます。視線が抜けることで空間に広がりが生まれ、コンパクトでありながらも豊かな体験を提供しています。

機能性と居心地を両立する細部の工夫

住まいの各所には、機能性と快適性を高めるための工夫が施されています。ウォークインクローゼットやパントリー、ランドリースペースなどが合理的に配置され、生活動線がスムーズに整理されています。

また、細長いワークスペースのように、個人の時間に集中できる場所も確保されています。

これらの空間は主張しすぎることなく、あくまで暮らしを支える要素として自然に組み込まれています。結果として、生活感を抑えながらも使いやすい住まいが実現されています。

多様な居場所を生み出す住まい

この住宅は、庭・LDK・ピットリビングが連続することで、多様な居場所を生み出している点に特徴があります。空間を単に区切るのではなく、関係性としてつなぐことで、家族それぞれが心地よく過ごせる環境が整えられています。光や風といった自然要素を取り込みながら、日常に豊かさをもたらす住まいのあり方を示した好例と言えるでしょう。