裏路地の環境に寄り添う静かな住まい。原田収一郎(しう)/moarが手がけた「裏路地の家」
「裏路地の家」は、福岡を拠点とする原田収一郎(しう)の建築設計事務所「moar」が手がけた住宅です。街の裏路地に位置する敷地条件を受け止めながら、落ち着いて過ごせる居場所を丁寧に形にした住まいとなっています。周囲に住宅が建ち並ぶ環境の中で外部との距離感を適切に保ちつつ、内部には穏やかな広がりが感じられる空間が計画されています。喧騒から少し離れた路地の奥という立地を活かしながら、日常を静かに支える住まいのあり方が探られています。
路地の環境に寄り添う住まい

「裏路地の家」の特徴は、裏路地という環境に応答するかたちで組み立てられた空間構成にあります。周囲との距離が近い敷地条件の中で、開口部の配置や建物の向きが慎重に検討され、安心して過ごせる環境が整えられています。

外観は控えめな表情を持ち、周囲の街並みに穏やかに溶け込みます。一方で内部には、外部の影響をやわらかく受け止める落ち着いた空間が広がっています。路地に面した住宅でありながらも周囲の気配を適度に感じ取ることができ、閉じすぎることのない居心地が実現されています。

住宅地の奥にある静かな環境を活かしながら、日常の居場所が丁寧に積み重ねられている点も印象的です。

路地という敷地条件を活かすことで、この場所にふさわしい落ち着いた住環境が形づくられています。
光と抜けを生む内部空間

室内は、光の入り方と視線の抜けを意識して構成されています。

開口部から取り込まれる自然光がやわらかな明るさをもたらし、内部には落ち着いた空気が広がります。

視線が奥へと連続する空間構成によって、実際の床面積以上の広がりが感じられるのも特徴です。ひとつながりの空間の中に複数の居場所がゆるやかに配置され、それぞれが生活の場面に応じた使い方を受け止めます。限られた条件の中でも閉鎖的な印象にならず、のびやかさが保たれています。

仕上げは素材感を活かした簡潔なものとし、光や陰影の変化が空間の表情を形づくります。

過度な装飾を避けた設計によって、日々の暮らしを静かに支える背景としての空間が整えられています。
都市の奥にある居場所のかたち
「裏路地の家」は、都市の奥にある静かな環境を受け止めながら、安心して過ごせる居場所を形にした住まい。裏路地という立地を制約としてではなく可能性として捉えることで、穏やかな日常を支える空間が実現されています。周囲の環境と無理なく関係を結びながら、自分たちの時間を大切に過ごせる住まいの姿がここに示されています。