「暮らしが見えてくるまちこそ魅力的」建築家・藤村龍至のデザインへの視点と自身の設計の特徴

グッドデザイン賞や福岡県美しいまちづくり建築賞を受賞した「すばる保育園」や、INAXデザインコンテストにて審査員特別賞を受賞した「BUILDING K」など様々な建築物を通じて、超線形設計プロセスという独自の設計手法を提唱する建築家・藤村龍至。今回は藤村さんに、日常で大切にしているデザインや影響を受けた人物について伺いました。

建築家・藤村龍至

Via : http://ryujifujimura.jp / Photo : Kenshu Shintsubo

建築家。1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得後退学。2005年より藤村龍至建築設計事務所(現RFA)主宰。住宅、集合住宅、公共施設などの設計を手がけるほか、公共施設をベースにしたシティマネジメントや、ニュータウンの活性化、中心市街地再開発などの公共プロジェクトも数多く手掛けています。

暮らしの中で大切にしているデザイン

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「まち全体のデザインを意識することが多いです。外観や見た目も大事ですが、まちの人の生活や暮らしが見えてくるまちが魅力的だと思っています。」

藤村さんらしく、建物自体ではなくそこに暮らす人々との関係性に注目されていることがわかる視点ですね。

好きな場所、空間

藤村龍至/RFA大宮駅前おもてなし公共施設「OM TERRACE」(2017年・さいたま市) 撮影 太田拓実

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「人が集まる場所にそのまちの個性が出てくると思っているので、まちの広場や駅前などが好きです。」

確かに、まちごとに訪れる人や暮らす人の印象は異なるもの。その空間の魅力がわかりやすい場所かもしれませんね。

設計の際に最も重視していることは?

藤村龍至/RFA+林田俊二/CFA「すばる保育園」(2018年・福岡県小郡市) 撮影 太田拓実

代表作の一つであるすばる保育園では、特徴的な形態を持ちつつ、実用的な部分も工夫されていることがわかります。その他、建築物の設計の際に重視していることは何でしょうか。

「形ですね。色んな人の意見や環境への呼応が形に現れるように設計しています。」

なるほど、著書では『四角いボリュームを置いている』とお話しされていましたが、これも形作りに繋がる工夫なのでしょうか。

「そうですね。フラットな形状をベースに、多様な人との対話を重ねて形を作っています。」

形状は決めず、様々な立場の意見を取り込み形にしていく柔軟性が、藤村さんの設計の特徴と言えそうですね。

影響を受けた人物はレム・コールハース

レム・コールハース/OMA「シアトル中央図書館」(2004年・アメリカ) 撮影 藤村龍至

住宅や公共施設の設計、シティマネジメントなど様々なプロジェクトで活躍されている藤村さんに、影響を受けた人物について尋ねてみました。

「オランダ人建築家のレム・コールハースです。福岡市にあるネクサスワールドという集合住宅が有名かもしれません。彼が箱をベースにクライアントや外部のスタッフとの対話を行ううちに形を詰めていくスタイルの設計手法をとっていて、そこから大きな影響を受けました。」

なるほど、先ほどの設計の進め方もレム・コールハースのスタイルが生かされているようです。

発想の源とは?

設計のベースはフラットに、周りから影響を受けることが多いという藤村さん。そんな藤村さんの発想の源はどこからくるのでしょうか。

「やはり一緒に組んでいる仲間から影響を受けることが多いですね。構造のエンジニアとか環境設備のエンジニアなど、仲間からもらう刺激やアイディアを柔軟に取り入れています。周りの意見を聞いたりディスカッションしたりと、様々な人と話しているうちにアイディアがまとまっていくんです。様々なやりとりを重ねながら形にしているイメージですね。社会的なコミュニケーションが建築の中では重要だと思っているので、常に意識するようにしています。」

建築思想・批判的工学主義とは?

批判的工学主義の建築
Via : amazon.

ご自身の著作はもちろん共著としても数々の本を執筆されている藤村さん。著書の一つに「批判的工学主義の建築」とありますが、”批判的工学主義”とはどういうものなのでしょうか。

「工学というのが英語で言うとエンジニアリングなのですが、これが建築の中でも大きな部分を占めると思っています。その部分を積極的に使っていきたい、という考えです。」

なるほど、タイトル内の”批判的”と言うワードがキャッチーですが、どのような思いが込められているのでしょうか。

「アンチテーゼのように反対するわけではなく、鵜呑みにするわけでもない。批判的と言うのは、自覚しながら、可能性に気をつけながら、活用しようという意味合いで使っています。こうすることで建築もポジティブになるのではないかと思っています。」

批判的だからと言ってそれを避けるのではなく、そのポジティブな面を取り込んでいこうという働きなのですね。

コミュニケーションを通じて建築を構成する

自身の思想に囚われることなく、周囲とのコミュニケーションを重んじた柔軟な視点が伺えました。ご自身もよく活用されているSNSと建築の関係性や、新型コロナウィルスの建築業界への影響などについては後編「『今後は”超都市”になっていく』建築家・藤村龍至が考えるSNSと建築の関係性と都市の変化」からどうぞ。