「飛騨古川駅東開発」として、藤本壮介が手掛ける地域と繋がる“屋根がモチーフ”の共創拠点。
日本の建築家であり、現在、東京とパリに事務所を擁し、国内外で幅広く活動を展開している建築家・藤本壮介。そんな藤本壮介が飛騨古川駅東開発として、2024年4月の開校を目指す飛騨高山大学(仮称)、JR飛騨古川駅の東口前に、同大と地域をつなぐ共創拠点の設計を担当する。商業・教育・住居等の機能を都市景観を参照した路地空間で繋ぎ、緑化された大屋根広場が多様な活動が会する舞台となる計画であり、注目を集めている。両建築とも屋根がモチーフという共通点がある。
広大な敷地で、器状の共創拠点
2万平米を超える敷地には、地域住民の教育や暮らし、余暇を充実させることを目的に、大学の研究拠点や学生寮、全天候型の子どものための遊び場施設や商業スペースなどが建設される予定。
“飛騨のこれまでとこれからを象徴するような、1つの大きな風景を作ることができれば”と考えられ、街に開かれた器(うつわ)のような広場で、多様な活動を受け容れ響き合わせることをコンセプトとしている。
共創拠点の完成イメージだ。地元企業の工場などがある敷地に、楕円形の平面をした「器(うつわ)」状の建物をつくり、緑化した屋根に複数の穴が開いており、なんとも不思議な設計だ。楕円形の建物は、四方八方すべての方角からアクセスすることができる解放性を備え、この場所が人々の行き交うハブとなることを期待しているよう。
穴が開いている特徴的な、大屋根
共創拠点の大屋根は緑化して上れるようにする予定で、屋根には穴が幾つも開いており、多様な内部の施設が見える。また、屋根の緑と山並みが連続するような景観をつくりだし、この発想は本校キャンパスと同じである。
穴の開いた屋根は非常に独特で、どこか異世界のように感じる設計となっている。
屋根の下には飛騨の伝統的な都市景観からインスピレーションを得た魅力的な路地空間が行き交い、歩き回る楽しさを生み出し、路地はそのまま大屋根広場へ連続し、視線は一気に空へと抜けていく。
多種多様な立場の人々が集まり交差する、様々な施設
街の回遊性を高めるため、「街歩きコンシェルジュ機能」を用意し、 地域のコミュニティー施設としても利用できるように、全天候型の遊び場や商業施設、公衆トイレなども設ける予定。
また、広域から訪れる観光客の方に向け、飛騨の四季折々の自然やアート作品を楽しんでいただけるようなアクティビティも設置するそう。
曲線を描く屋根からは、躍動感を感じることができ、一つ一つの屋根の下で違った空間を味わえることができそうだ。
街に開かれた「器(うつわ)」をイメージした広場。側面から見ると、まるでドームのようだ。広大な敷地内で、子供から大人まで自然を感じながら、のびのびと過ごすことができるであろう。
街の路地を連想させる内部空間
共創拠点内部のイメージ。街の路地空間を連想させるつくりで、木材の産地である飛騨高山らしい、木材を使用し、それらのぬくもりを感じられる柔らかな空間だ。
この場所が、飛騨の新しい活動の拠点の一つとして、新設される飛騨高山大学(仮称)とも連動しながら、飛騨の魅力をより広げられることが期待され、注目が集まっている。飛騨市の観光中心部を包み込む配置であり、プロジェクトで新たに建設される上記の広場などそれぞれの施設が、両拠点をつなぐようにして、人々のアクティビティを促し、街全体の回遊性を向上させ、街全体の体験価値を高めることを目指しているそう。
街に開かれた器(うつわ)のような広場で、“多様性が響き合う場所”として作られる、藤本壮介の設計建築が楽しみだ。