「船の体育館」と呼ばれる巨匠・丹下健三が手がけた旧香川県立体育館の今

世界的な巨匠建築家・丹下健三の代表作の一つとして有名な「旧香川県立体育館」。1964年に完成し、約60年の時を経て、県が2023年2月に解体の方針を示しました。

つり屋根構造が特徴の「旧香川県立体育館」

1964年に完成した旧香川県立体育館は、屋根の両端が曲線を描き、和船を連想させる外観から「船の体育館」と呼ばれています。1964年の東京五輪開催を控え、スポーツ熱の高まりを受けて建設された施設です。

建築家の丹下健三が設計し、重要文化財にも指定されている国立代々木競技場と同じ、ケーブルで屋根をつるした柱のない大空間を実現した「つり屋根構造」が特徴です。地域の体育館として、長年多くの人々に親しまれました。

老朽化、耐震強度の不足で閉館

しかしその後、建物の老朽化が進み、1998年に実施された耐震診断では耐震強度の不足が指摘されます。後に、3度行われた耐震改修工事の入札がいずれも入札不調となり、耐震改修は見送られることに。そして天井が落下する恐れがあるとして2014年9月に閉館し、倉庫として使われてきました。

2017年にはアメリカのワールド・モニュメント財団から、緊急に保存が必要な「危機遺産リスト」に登録され、建物を保存するよう求める活動が市民や建築家によって行われ続けました。

2023年に解体の方針が示される

閉館から6年が経った2021年、香川県教育委員会は民間業者の委託や提案を把握する「サウンディング型市場調査」を実施。しかし有効な方策はなく、2023年に旧香川県立体育館の解体の方針が示されました。

その後2023年5月に、解体工事の設計業務に関する県が選んだ12社による指名競争入札が行われましたが、11社は、事前に辞退届を出すなどし不調に終わっています。しかし、県側は現在も解体方針に変わりはないと考えを示しています。

香川県立体育館は2024年に開業予定

そんな中、旧香川県立体育館に代わる施設「新香川県立体育館」は、現在高松市サンポートにて建設中です。2024年に開業予定で、単なるスポーツ施設にとどまらず、香川のにぎわい創出の拠点となるように作られています。

「船の体育館」と呼ばれる巨匠・丹下健三による旧香川県立体育館

建築的な価値が高く、地域のシンボル的存在として、地元の建築家や市民から愛されている旧香川県体育館。その圧倒的なスケールやデザインは多くの人々を魅了しており、建物の保存を求める声も多く上がっていました。このような中、この建物の解体を辞退する業者が多数いることは決して不思議なことではないでしょう。新香川県立体育館開業に向けて、旧香川県体育館はどのように解体が進んでいくのでしょうか。今後の動向にも、注目したいです。