ライゾマティクスリサーチの真鍋大度が語る、暮らしのデザインと仕事術
毎週月曜日に立山律子がお送りする福岡のラジオ放送CROSS FM「DAY+」。「#casa(ハッシュカーサ)」の枠に今回ゲストとしてお越しいただいたのは、株式会社ライゾマティクスリサーチの真鍋大度(まなべだいと)さんです。
ライゾマティクスリサーチとは
ライゾマティクスリサーチ(Rhizomatiks Research)は、技術と表現の新しい可能性を探求する、株式会社ライゾマティクスの一部門。メディアアート、データアートといった研究開発要素の強いプロジェクトを中心に扱い、まだ見たことのないモノ・コトを世の中に発表していく。ハー ド・ソフトの開発から、オペレーションまでプロジェクトにおける全ての工程に責任を持っています。また、人とテクノロジーの関係について研究し様々なクリエイターとのコラボレーションワークを実践しています。
共同ファウンダーである真鍋大度さんはプログラミングやコンピューターを使って作品を作るアーティストとして活動しつつ、DJや音に関するお仕事もされているそうです。
エンジニアからトップクリエイターとなった真鍋大度
メディアアート作品で世界中から注目されている真鍋大度さん。3人組テクノポップユニット「Perfume」のライブ演出の技術サポートや、リオ2016大会閉会式東京2020フラッグハンドオーバーセレモニーでの演出などその活躍は目覚ましく、多くのクリエイターの憧れの的となっています。
真鍋さんは東京理科大学を卒業後、新卒で大手電機メーカーにシステムエンジニアとして就職。24歳まで防災システムの仕事に携わったのち、Webサイトのコンテンツ作成を手がけるITベンチャーに転職したそうです。
エンジニアとしてのキャリアを積み上げていた真鍋さんでしたが、その後IAMAS(国際情報芸術アカデミー)に入学したことが転機となり2006年に株式会社ライゾマティクスを立ち上げ、現在に至ります。
普段の生活で大切にされているデザインは?
真鍋さんが普段の生活で大切にされているデザインは、仕事と共通してやはり「音空間」だそう。また、一年の半分を海外で過ごす真鍋さんにとって、好きな場所は自身のスピーカーが置いてあるスタジオが最もお気に入りだと言います。
今後の暮らし・建築はどのように変わっていく?
世の中がどんどん便利になって最適化していく中で、同時に色々なものが失われているのではと話す真鍋さん。様式美や物事を進ませていくプロセスが今後の暮らしの中で大事になっていくのではと言います。
それに伴い、今後真鍋さん自身はお金を払って簡単に買えるもの、例えばサウンドのファイルや映像のプラグインなどの便利なものからは一旦少し距離を置き、一からじっくり時間をかけて作ることが大切になっていくだろうと考えています。
また、ソフトや物凄く小さなハードウェアを駆使してきた真鍋さんからすると、建築の世界では10年ほど遅れてソフトウェアやシステムを取り入れている印象が強いのだとか。そのため美術館や研究室で実践されていたこと、20年前にやられていたことがやっと都市に実装されたり、実際の建築物に活かされるなど、実験されてきたことがようやく社会に還元されてきたなという実感を、建築が感じさせてくれていると言います。
作品作りの発想で気をつけていること
アートプロジェクトかデザインプロジェクトかなどプロジェクトによっても変わるそうですが、アートは未完成でも実験的で新しいことをやるということを心がけているそう。
エンターテイメントやデザインの場合は自身が表に出るのではなく、コラボレーションするアーティストに華を添える形で、必要であればテクノロジーを使って映像や光の表現を駆使すると言います。
特に興味深かったコラボレーション相手は?
Perfume やビョーク、サカナクション、坂本龍一さんと挙げ始めたらキリがないという真鍋さんが紹介してくださったのは、一番長くコラボレーションしているという石橋素(いしばしもとい)さん。
ライゾマティクスリサーチのメンバーであり、株式会社ライゾマティクスの役員でもある石橋さんですが、2004年頃からずっと石橋さんはハード屋、真鍋さんはソフト屋として音や光のコンテンツを一緒に作品を作り続けてきたそう。一度きりのコラボレーションではなく、長く一緒に活動をしていくこと自体が難しい中で、石橋さんとここまで長く一緒にやってこられたことは貴重で幸運なことだと言います。
スキルセットが違うことから得意なことも違うお二人ですが、プログラミングの面では共通言語を持っているので、そこを介してお互いが持っているものを共有しているのだとか。「どんな現場でも本番一発勝負で大変な時を乗り越えてきたけれども、石橋さんはいつも冷静に対応できているので、自分も見習いたい」と石橋さんへの気持ちを語ってくださいました。
仕事ではなく普段の生活での「音」とは?
視覚とは違ってヘッドホン一つで環境音などをシャットアウトできてしまう音。真鍋さんは自分の耳の訓練も含めて、時々目を瞑って街の中を歩いたり、信号待ちの間も街の音を聴くようにしていると言います。そうすると、特に新宿や渋谷などは街の音がデザインされたものではなく、色んな音がぶつかり合ったノイズであることに気付くのだそう。
しかしこれからは電気自動車の開発が進んで車の音もデザインされたサインや、街の音も洗練されていくと思うので、自身も興味があることからそういう活動にも貢献していきたいと決意表明をしてくださいました。
「Light and Sound Installation “Coded Field(コーデッドフィールド)”」について
東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシルが実施する「Light and Sound Installation “Coded Field(コーデッドフィールド)”」は、2020年に向けて企画された「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」のうちの一つです。株式会社ライゾマティクスが企画したプロジェクトで、11月16日(金)に港区にある浄土宗大本山増上寺で開催されました。
1000個のオリジナルデバイスを使用して会場にいるお客さんに参加してもらう体験型のイベントで、増上寺の空間情報をもとに音と光で変換した仮想の空間を作り出し、目や耳で楽しんでもらうのが目的だったそうです。
1000個のスピーカーと1000個の光の風船が彩る空間は、今までにない貴重な体験になるのではと真鍋さんは言います。
そのほかにも、ポケモンGOやドラゴンクエストなどのゲームで注目されている人の位置情報を使うAR(拡張現実)に倣って、参加者の位置によって反応する音と光の拡張現実も用意したそうです。スマートフォンではなくオリジナルのデバイス上で楽しめるとあって期待が膨らみます。
真鍋さんにとって人生とは
数々のアーティストとコラボレーションし、メディアアートの力で人々を魅了して社会貢献するライゾマティクスリサーチ。そんなライゾマティクスリサーチのディレクター務める真鍋さんにとって、「ライフイズ◯◯」の空欄にはどんな言葉が入るのでしょうか。
「ライフイズジャーニー&エンドレススクール」と答えてくださった真鍋さん。人生は旅のようなもの、そして永遠に終わりのない学校のように学び続けるチャンスがあり、学ばなければいけないという風に感じていると話してくださいました。
毎週様々なジャンルのスペシャリストが登場するラジオ版の「#casa(ハッシュカーサ)」。聴き逃した方はRadiotalk でもお楽しみ頂けます。