2022年のプリツカー賞は初のアフリカ出身の建築家ディエベド・フランシス・ケレが受賞

「建築界のノーベル賞」とも呼ばれるプリツカー賞。2022年の同賞では、アフリカ出身の建築家では初となるディエベド・フランシス・ケレが受賞しました。ブルキナファソのガンドで生まれ、ドイツのベルリンを拠点に活動するケレ氏は、生まれ育った貧しい地域社会に貢献したいとの思いから導かれたサステナブルな建築様式が特徴です。

初のアフリカ出身の建築家ディエベド・フランシス・ケレが受賞

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プリツカー賞は米国のハイアットホテルチェーンを所有するプリツカー家の名前を冠した国際的な建築賞です。国籍を問わず「建築を通じて人類や環境に一貫した意義深い貢献をしてきた」存命の建築家を対象としていて、これまで日本からも丹下健三、槙文彦、安藤忠雄、磯崎新などが受賞してきました。今回フランシス・ケレは、建築家として活躍する傍ら、教育者や社会的活動家としても幅広く活動している点などが評価されました。

地域社会のための建築を提案

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ケレが初めて手がけたプロジェクトは、ベルリン工科大学在学中に設計し、寄付によって資金を募り、自身が生まれたガンド村で地元住民と協力して実現した〈ガンド小学校〉です。

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輸入したソーラーパネルと地元で入手可能な泥レンガなどの資材を用いて村人たちと共に作り上げたこの建築は、気候変動の激しい村の環境下でも快適に過ごせる空間となりました。ケレはこの〈ガンド小学校〉で、イスラム文化圏の優れた建築物に贈られるアガ・カーン建築賞2004年に受賞しています。

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ケレはその成功から間もなく、2005年にドイツのベルリンで設計事務所ケレ・アーキテクチャーを設立。ブルキナファソやケニア、モザンビーク、ウガンダで小学校や中学校、医療施設などの公共空間をメインに設計を次々と手掛けました。その後もアフリカを中心に活躍の場を広げ、教育面でもハーバード大学デザイン大学院などで教壇に立ち、自身の建築手法、思想を伝えています。

建築が持つ力や役割を改めて気付かせるような建築思想がポイントに

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審査講評では次のようにケレの功績をたたえています。

「建築が物体(object)ではなく目的(objective)であること、製品(product)ではなくプロセス(process)であることを彼は理解している。場所に基づくマテリアリティーの力を、同氏は作品を通じて体現した。彼の建物はコミュニティーのために、コミュニティーと共にあり、その施工や素材、プログラム、ユニークな特徴において、コミュニティーそのものともいえる。」

また、ハイアット財団のトム・プリツカー会長は、ケレについて次のようにコメントを発表しています。

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「世界が極端な土地不足に陥っている状況の中で、フランシス・ケレは、地球とその住民を持続可能にする建築家として先駆的な存在である。彼は建築家である一方、世界中で忘れ去られていた地域の、数えきれない市民たちの生活と体験を向上させるために奉仕する人でもある。彼の建築物は、それを通じて美しさや慎み深さ、大胆さ、発明力を表している。ケレは、彼の建築や、彼自身の振る舞いの高潔さにより、プリツカー賞の使命を高めてくれた。」

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ハイアット財団が挙げたケレの代表作は、〈ガンド小学校〉など22件。現在12件のビッグプロジェクトが進行中で、まさにこれからの活躍が期待される建築家です。

人々の生活を向上させるための建築を提案する

電気や清潔な飲み水、学校もなかったというブルキナファソで生まれた生い立ちからできた視点によって、ケレの作品は様々な文化、環境下の中であっても、建築によってそこに生きる人々の日常を豊かにすることを目指しています。ローカリティと伝統を重んじつつ、高度な建築手法、技術革新を組み込むことで生み出される彼の作風は、社会に対して建築とは対象ではなく、目的でありプロセスであることを改めて再認識させ、今後のスタンダードとなるのではないでしょうか。