2024年の建築界のノーベル賞でもある「プリツカー賞」は、建築家・山本理顕!日本人として9人目の受賞!

「建築界のノーベル賞」とも言われるプリツカー賞は、米国のハイアットホテルチェーンを所有するプリツカー家の名前を冠した国際的な建築賞です。国籍を問わず、建築を通じて人類や環境に一貫した意義深い貢献をしてきた存命の建築家を対象としていて、これまで日本からも丹下健三、槙文彦、安藤忠雄、磯崎新などが受賞してきました。

2023年は英国の建築家・デイヴィッド・チッパーフィールドに受賞し、今年度2024年は、建築家の山本理顕が選ばれました。日本人としては、2019年に受賞した磯崎新に次いで9人目の受賞となっています。

建築家・山本理顕

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山本理顕は、1945年中華民国北京市に生まれ、日本大学などで建築を学んだ後に公共の建物や個人の住宅など数々の設計に携わりました。

国内の代表的な建物としては、神奈川県の横須賀美術館や、北海道の公立はこだて未来大学、埼玉県立大学などが挙げられます。海外では、スイス・チューリヒ空港の複合商業施設にある「THE CIRCLE(ザ・サークル)」なども手がけました。山本理顕の建築は、ガラスで覆われた箱型のスタイリッシュな建築物や、開放的な空間を取り入れている事ことが特徴の1つとして挙げられます。

コミュニティをつくる「地域社会圏」の考え方が評価されたポイント

今回の受賞にあたって、審査員団のアレハンドロ・アラベナ団長は「山本さんは公の場と私的空間の境界を巧妙にぼかし、地域社会の活性化に貢献した」と評価しました。

山本理顕は、地域コミュニティを再構築する「地域社会圏」という新しい暮らし方を提唱しており、家族で住むことを前提とせず、周辺環境との関係を重視し、住民同士が助け合い自治が構築されるという思想から建築を作り出しています。その地域と個の関係性をはじめとした彼のコミュニティに対する考え方は、高く評価されており、今回の受賞へと繋がりました。

そして受賞した山本理顕は、以下のようにコメントを残しています。

「ほかの建築家と違って強い社会的な提案をする私の建築は、賞とは結び付かないと考えてきたので、本当に驚いてしまって、アイム・ベリー・ハッピーということば以外、なかなかいいことばが思いつきませんでした」。

建築家・山本理顕の代表作

ここからは、プリツカー賞を受賞した山本理顕の主な作品をご紹介。建築家として山本理顕が重視してきた、現代社会で失われつつある、人と“コミュニティー”とのつながりが垣間見えます。

公立はこだて未来大学

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「公立はこだて未来大学」は、山本理顕の特徴である箱型をした建物と、正面のガラス張りが特徴的な建築物です。ガラス張りは、外に函館山の景色を見渡せるように設置。室内は、5階分を吹き抜けにした開放感のある作りで、人々の視線や活動がまじりあう大空間をつくり出しました。

横須賀美術館

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「横須賀美術館」は、観音崎公園の森をバックに東京湾を望む形で建てられました。周囲は山と川に囲まれた豊かな環境であったので、建築も環境と調和するような工夫がなされています。その1つに、建物の約半分を地下に埋め込むことで高さを抑え、周囲の森や海と調和した印象を与えました。建築は外側がガラス、内側が白い鉄板というダブルスキンの構造になっており、その理由には内部に光を取り入れるためや海水の塩害による経年劣化を防ぐことなどが理由として挙げられています。

広島西消防署

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「広島西消防署」は、地下1階、地上8階建ての外壁が全てガラスで覆われており、ビルの中の様子が建物の外から見えるように設計されました。一般的にイメージする消防署と比べると開放的でオシャレな印象を与えています。この建物について山本理顕は「防署で訓練をしたり災害に備えたりしている消防士が24時間そこにいることを外から見ることができれば、“コミュニティー”の人たちにとって、ものすごく安心できることではないかと思っています。公共性の高い建築や非常にプライバシーの高い建物であったとしても、外に開くような努力をして、それを外に視覚的にも見えるように作っているということが評価された点だと思います」と語ってます。

福生市庁舎

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「福生市庁舎」は、うねるマウンドの上に建てられた煉瓦タイル貼りの2つのタワーからなっています。2つのタワーの間には広場を設け、市民がイベントを開催することが可能。そして、外観はレンガ張りで可愛らしく、曲面で作られている床と外壁の取り合い部分が床から盛り上がっているユニークな形は、市民が近づきやすい雰囲気を与えています。

熊本県営保田窪第一団地

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110世帯の集合住宅である「熊本県営保田窪第一団地」は、従来の南に向かって整然と等間隔に並ぶ、いわゆる「団地型」の配置に替えて、各住戸が中央広場を囲むように配置されました。各住戸は、中庭や広いテラスを持ち、常に外部と接することができるようになっており、110世帯全員のふれあいの場になるように期待されて作られています。公共住宅としては、かつてないほどの大きな専用空間を持っています。

2024年のプリツカー賞は、建築家の山本理顕!日本人として9人目の受賞!

日本人として9人目のプリツカー賞の受賞となった建築家・山本理顕。彼の思想である「地域と個の関係性」によって作られた人々が集まり交流する機会を増やす役割を果たしている建築物は、“つながり”をより深くし、私たちの暮らしを豊かなものにしてくれることでしょう。“周辺環境との関係を重視し、住民同士が助け合う”。そんな気づきを今一度与えてくれるような、山本理顕の受賞でした。