山本理顕が手がけた「横須賀美術館」は東京湾を望む豊かな自然環境に浮かぶショーケースのよう。

横須賀市にある横須賀美術館は、建築家・山本理顕氏が設計したもので、観音崎公園の森をバックに東京湾を望む形で建てられています。この建築は、自然光を取り込むための丸窓が天井や内壁に不規則にくり抜かれており、それらを塩害防止用のガラスで覆った二重構造となっています。「環境全体が美術館」をテーマに周囲の海や森と調和する開放的な美術館です。

周囲の自然に抱かれる「横須賀美術館」

一日500~700隻の船が行き来する東京湾に面した絶景ポイントに位置する「横須賀美術館」。2007年に市制100周年を記念してオープンしました。

ヴォリュームの大部分を地下に埋め込むことで地上部の高さが抑えられており、周囲の森や海と調和した印象を与えます。

丸窓から差し込む心地の良い自然光

横須賀美術館の建築は外側がガラス、内側が白い鉄板というダブルスキンの構造になっていますが、目を惹くのが鉄板に開けられた丸窓です。

エントランス、壁、天井に、一見ランダムに配置された丸窓は、実は緻密に設計されているそうです。

エントランスホールや2階から丸窓を見ると、景色が丸く切り取られて、その中に見える海や船が動く絵のように見え、美しい風景を違った視点で楽しむことができます。

様々な場面で見かける可愛らしいピクト

館内の至るところで見られるピクトグラムの「よこすかくん」。デザインをしたのは世界的に有名なグラフィックデザイナー・廣村正彰氏。グッズにも使われており、横須賀美術館のマスコットとなっています。

”見せる”ことを意識した構造

外皮の素材は外皮と内皮の間の空間をなるべく隠したくないという狙いから、透明となっています。結果、大きなガラス箱の中に何か小さなオブジェが入っているような見え方となっているのです。ガラスの外皮は内皮の上に束材を立て、この束材をプレースで引っ張って支持することで、ほとんど柱のない大きなスパンが獲得できるのです。

外皮を透明にしたことで構造がむき出しに。そうした通常は隠すような要素を敢えて“見せる”からこそ、配線や杭を目立たないようにする、色を白で統一するなどの工夫がされています。

この美術館は季節ごとに移ろう海と空に囲まれているため、白と周囲の自然の色とのコントラストが美しく映えます。

水平線が伸びる開放的な屋上テラス

屋上からは東京湾を一望することができ、船が行き交うのがよく見えます。

その反対側は観音崎の公園と同じレベルで繋がっており、自然と溶け込むような一体感を味わえます。屋上は全てガラス張りで、その上にグレーチングの床があります。

昼間は外から光が入り、夜になるにつれだんだんと逆転していきます。光が外に漏れて、建築全体がショーケースのようなきらめきに包まれます。

ゆったりとアートや所蔵の本を楽しめる

館内には小さいながらも差し込む光が心地よい図書室があります。ここには約3万冊もの蔵書があり、美術の専門書以外にも、アート雑誌や、現在の展示作品に関係する資料、海外の絵本などもあるため、ゆっくりと展示作品や海外のアートについて知識を深めることができます。

小さいながらも魅力が詰まったミュージアムショップ

ショップには「よこすかくん」をモチーフにしたオリジナルグッズの販売も。その他にもステーショナリーや港町らしいクッキーやチョコレートなどの洋菓子まで、様々なアイテムが並んでいます。

刻々と移ろう自然を最大限に楽しめる美術館

目の前に広がる東京湾と観音崎公園の豊かな自然、そして周囲の自然と一体化した特徴的な空間が魅力の横須賀美術館。日中に広大な海を目の前に爽やかな風を感じるのもよし、夕刻に静かな暗闇の中に光り輝く建築を楽しむのもよし、訪れる時間はもちろん、季節によって変わる豊かな自然が魅力の建築です。

横須賀美術館

開館時間:10:00~18:00
休館日:毎月第1月曜日(ただし祝日の場合は開館)
URL : http://www.yokosuka-moa.jp/
住所:神奈川県横須賀市鴨居4丁目1 横須賀美術館