アントニ・ガウディによる地中海をイメージした直線がない有機的なデザインの「カサ・ミラ」

カサ・ミラは、バルセロナの近代建築が立ち並ぶグラシア通りにある邸宅で、世界的な建築家であるアントニ・ガウディがサグラダ・ファミリア以前に設計した最後の建築になります。宗教のテーマに関係なく自由な創造性によって作られた建築のため、ガウディを代表する建築群の中でも特に人気の高いものの一つです。

1室7部屋の高級住居として建てられたカサ・ミラ

1906年から1910年にかけて当時の実業家のペレ・ミラ夫妻の邸宅として建設され、1室7部屋の高級住居だっと言います。そして現在も賃貸マンションには4世代が住んでいて、最上階には資料や模型を展示したガウディ作品の博物館になっています。

実際に建設された当時、この斬新な建築に多くの人が関心を寄せる一方で、その時代におけるバルセロナ市が設けていた建築基準に則っていないことが問題になったそうです。そして伝統的な街並みに合わないという理由から地元民はカサ・ミラを「石切場(ラ・ペドレラ)」というニックネームをつけ嘲笑しました。

しかし現在では高い芸術性が評価され、1984年にはユネスコの世界遺産に登録されました。

海の中にいるような有機的な波打つファサード

カサ・ミラの特徴の一つとして、直線を使わずに波打つような曲線で建築を作っているという点が挙げられます。地中海やカタルーニャの雪山をイメージしたとされ、現代の建築と比べても異質な構造をしていると言えるでしょう。

よく見るとベランダの手摺にも波や水の揺らぎ、海洋生物をモチーフとした造形が施されています。

光の入り方がデザインされた中庭

カサ・ミラの中庭には常に太陽の光が降り注ぐように設計されています。またこの時期のガウディの建築には20世紀初の換気という概念が機能として設計され、芸術性と機能美という近代建築の原則をしっかりと取り入れています。

下階に行くほど窓の大きさが多くなっているのも採光のため。屋根があるのは階段のみで、手すりまで細かなデザインが施されています。

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内部に接続するための入り口にも独特で有機的なデザインが組み込まれており、水玉模様が施された上記画像にある門には思わず目を惹かれてしまうことでしょう。

丘陵をモチーフにした屋上と特徴的な造形物

カサ・ミラの屋上部分は幻想的で住居環境とは思えないほど凝った装飾が施されています。

アスレホと呼ばれる白いタイルが使われているのですが、これは山に積もる雪を表現しているそうです。   これは、上述したような幻想的な雰囲気を演出するための一つの要素とも言えるでしょう。

上部にそびえたっている塔は、それぞれ煙突としての機能や換気口としての機能等が施されており、兜を被った騎士のようなデザイン性に加えて、日常面での実用性も備えられた見事なオブジェとなっています。

ガウディの遊び心でサクラダ・ファミリアが見えるフォトスポットもあります。又、このエリアのアーチにはカサ・バトリョでも特徴的であった破砕タイルが用いられています。

カテナリーアーチ構造を使用した肋骨のような屋根裏空間

屋上の下階には屋根裏があります。この天井が高低差のある構造になっているため、屋上が波打つようなデザインになっています。まるで龍の背骨の様な形を有するこの屋根裏からは、ガウディの特徴的で神秘的な世界観を感じることが出来るでしょう。

カタルーニャ地方でよく使われる、通常の半分ほどの厚みの薄いレンガを使用し、「カテナリーアーチ」と呼ばれる、特異なリブ構造が屋上を安定的に支えています。

屋根裏部屋は、洗濯物を干す場所、使用人の作業場、また建物の温度を調整する機能を担っていた空間でした。現在はガウディの作品に関する資料を展示する空間になっています。普段の生活で良く利用するような場所が美しい装飾によって彩られているのが、カサ・ミラの魅力の一つであると言えます。

ガウディが建築から手を引いた居住空間

そして屋根裏からさらにひとつ下の階は、当時のブルジョワ階級の生活空間を再現した部屋を見ることができます。美しいレースのカーテンや温かみのある黒褐色のベッド等、この部屋に配置されたインテリアは落ち着きのある空間を演出しています。

家具は当時の物をそのまま展示しているので趣のあるリアルな空間になっていて、幻想的な光に包まれています。

ただ、どこか奇抜な外観と比べるとどこか味気なさを感じるかと思います。というのも、居住空間の内装からはガウディの作品の一つの特徴である「曲線」をあまり見ることが出来ない為、シンプルな構造となっているのです。

これにも理由があり、実はカサ・ミラ建設当時、ガウディは施主との間で揉めていて、完成前に建築から手を引いてしまったので、この居住空間の設計には携わっていないそうなのです。

居住空間には人が生活しやすいような落ち着いた装飾が施されています。ですが、もしも家具のデザインも行うガウディが居住部分の内装も手掛けていたら、ただでさえ当時の相場の10倍だった家賃もさらに跳ね上がっていたかもしれません。

現在も4世帯が入居していて、見ることができるのはこの1フロアのみになっています。

巨匠アントニ・ガウディによる時代を超え世界を跨ぎ様々な評価をされたカサ・ミラ。今では誰もが認めるバルセロナの代表する建築となっています。

Casa Milà – カサ・ミラ

開館時間:9:00~18:30, 19:00~22:00
URL : https://www.lapedrera.com/es
住所:Pg. de Gràcia, 92, 08008 Barcelona, Spain