「島の“自然”と対話する」山下保博が手がけた奄美大島の宿泊施設「伝泊 The Beachfront MIJORA」

2021年7月、世界自然遺産に登録された奄美大島の宿泊施設「伝泊 The Beachfront MIJORA」は、宿泊を通じて島の伝統文化や集落の暮らしを体感できる施設です。

そのデザインや建築は、奄美大島では初めてとなるグッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)や、様々な賞を受賞し、多くの人々を魅了しています。

小さな集落に佇む「伝泊 The Beachfront MIJORA」

小さな集落と豊かな森、美しい海に囲まれたヴィラタイプの宿泊施設「伝泊 The Beachfront MIJORA」。

地元奄美大島出身の建築家・山下保博によって手掛けられ、2019年7月にオープンしました。全13棟4種類の客室は奄美大島の伝統建築をモチーフにデザインされ、ミニマルでありながらこだわり抜かれた空間となっています。

最大の魅力は、全13棟のヴィラが奄美北部の海岸沿いに位置する西向きの2つの敷地に配置されており、全ての客室が海まで10秒という近さということです。

美しい奄美大島の豊かな大自然に包まれながら、至福のひとときを過ごせる宿泊施設です。

コンセプトは「島の“自然”と対話する」

伝泊 The Beachfront MIJORAのコンセプトは、「島の“自然”と対話する」。そのためには、自然との物質的な境界をなくすことが最重要であると考えた建築家の山下は、施工会社から奄美大島で入手可能な一枚ガラスの最大寸法を教えてもらい、その寸法を軸にしたプランや形態を生み出したそうです。

そして導入された各客室の大きなガラス越しには、奄美大島の大自然が広がり、客室と美しい海を繋いでいます。

さらに全13棟の客室に共通するのは、折り紙を思わせる力強い造形のコンクリート躯体の上に、奄美の伝統建築様式を現代的に再解釈した木屋根を載せた構成です。

客室の床と壁はコンクリート、梁や垂木は鹿児島県産材の杉材に塗装を施したものを使用。野地板には、海沿い特有の潮風による劣化を防ぐために、昔から日本の民家に多く使用されている九州産の焼杉が採用されました。

これらの構造や素材が選ばれた理由は、景観を壊さないこと、集落に馴染ませること、奄美の伝統的な建物を参考にすることが第一に考えられて用いれられたのです。

部屋のタイプによっては長期滞在もできるよう、キッチンや調理器具も完備。さらにトースター、炊飯器、電気ポットなどの家電製品は、全てバルミューダで統一されています。

シンプルでありながらも上品な雰囲気のバス、トイレ、洗面所は仕切りが一切なく、緩やかに寝室とつながっていて、広々と開放感を感じます。

美しい海とつながるテラス

全ての客室のテラスには、ラタンのハンギングチェアが設置。オーシャンフロントならではの開放感ある景観を楽しみながら、心地よい風を感じて癒しのひとときを過ごせます。

海に向かってコンクリートの壁が続いており、屋外デッキが広く設計されているのでプライバシーにも配慮されていることも魅力です。

テラスの目の前には、思わず深呼吸をしたくなるほどの世界自然遺産にも登録された美しい海と、豊かな山々が連なります。

海辺から見た伝泊 The Beachfront MIJORAの外観です。奄美大島の自然や集落に溶け込み、その場に非常に馴染んでいます。

外にはシャワーも完備されています。海辺で存分に遊んでも、しっかりと砂を落としてから室内に入ることができるため快適です。

自然や自分との対話にぴったりの客室

全13棟の部屋は、奄美北部の海岸沿いに位置する西向きに配置されているため、移り変わる夕陽を見ることができます。そして、季節や時刻、天気によっていきいきと表情を変えていく海と純粋に向き合い、自分の姿を見つめ直す最善の時間を過ごせることでしょう。

そして日が沈んだ後には、温かみのある柔らかな照明が室内を照らします。自然や自分との対話のために、できる限りシンプルな素材とインテリアのみが存在する部屋に寝転ぶと、天井の焼杉から「自然」と「時間」と「温かさ」を感じられます。

伝泊 The Beachfront MIJORAのレストランは「2 waters(トゥーウォーターズ)」です。奄美大島産の野菜を使った創作料理や自家製酵母のパンを、海を一望するカウンターで楽しめます。

「島の“自然”と対話する」奄美大島の宿泊施設「伝泊 The Beachfront MIJORA」

島の自然と対話するをコンセプトとした「伝泊 The Beachfront MIJORA」。その背景には、島ならではの雇用問題やまちづくりを持続するための課題がいくつかあったそうです。そのような背景を経て完成した「伝泊 The Beachfront MIJORA」は、岸沿いの集落の自然災害からの防御、海岸線沿いの景観改善、人と自然が対話する空間確保の3つを実現させました。

世界自然遺産ともなった奄美大島の大自然に囲まれて、装飾の少ないシンプルでありながら洗練された客室は、今まで気づくことのできなかった自然や自分との対話ができる時間となることでしょう。

伝泊 The Beachfront MIJORA

住所: 鹿児島県奄美市笠利町大字外金久861−4
電話番号:0997-63-1910
HP:https://den-paku.com/the-beachfront-mijora/