「記憶に残るような、あたたかい雰囲気があるといい」建築家・大西麻貴の日常で大切にしているデザインや好きな空間について

個人宅や公共施設などの建築設計を中心に、インスタレーションやまちづくりまで国内外を問わず様々な活動に取り組む建築設計事務所「o+h」(オープラスエイチ)。今回は共同主宰を務める建築家・大西麻貴さんに、日常で大切にされているデザインやお好きな空間について伺いました。

o+h共同主宰/建築家・大西麻貴

大西麻貴
photo : Yurika KONO

1983年愛知県生まれ。2006年京都大学工学部建築学科卒業。08年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。08年~o+h共同主宰。主な作品に「二重螺旋の家」「シェルターインクルーシブプレイス コパル」など。主な受賞に日本建築学会賞作品賞(2023年)、BCS賞(2023年)がある。2023年開催の18回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館コミッショナーを務める。

あたたかい雰囲気で食卓を囲みたい

Via : @onishi_hyakuda

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「日頃からみんなで一緒にご飯を食べることを大切にしています。ですので、ご飯を食べる食卓だったりその周りの家具や食器、食卓を包む灯りによって、どんなふうに人が集まれるかということを意識しています。あたたかみが感じられる照明であったり、近くの窓から木々が見えたりと、共に食卓を囲む人々の記憶に残るような、あたたかい雰囲気が食卓の周りにあるといいな、と考えています。」

光と風が心地よい高山寺が好き

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「大学時代は京都で過ごしたのですが、『高山寺 石水院』という栂尾にある国宝にもなっているお寺がお気に入りです。山に軽やかにかかっている木造の懸造りの建築なのですが、風や光が心地よく通り抜けていく気持ちのいい場所です。」

みんなが来たいと思える場所を目指したい

シェルターインクルーシブプレイス コパル / Shelter inclusive place Copal
photo : copal

大西さんが手掛けられた山形市の「シェルターインクルーシブプレイス コパル」は、2022年度グッドデザインベスト100を受賞された児童遊戯施設ですが、設計の際はどういった点を重視されましたか。

シェルターインクルーシブプレイス コパル / Shelter inclusive place Copal
photo : Kohei Shikama Commissioned by the Nippon Foundation DIVERSITY IN THE ARTS

「名前にもある通り『多様な人々を受け入れる場所』というのが設計の際にチームのメンバー内で大切にしていたテーマです。障がいの有無や家庭環境、国籍といった色々な違いに関わらず、みんなが来たいと思える場所はどういったところだろうか、といったことを話し合って作り上げた建築です。

シェルターインクルーシブプレイス コパル / Shelter inclusive place Copal
photo : copal

入り口を入ると大きな体育館があり、その向こうには蔵王連峰の綺麗な山並みが広がっています。体育館でいろんな子どもたちが遊んでいる様子が目に飛び込んできて、山々に囲まれたその周りをゆったりとスロープで上がっていくようなプランになっています。すべてがシームレスに繋がった空間を見て頂けると嬉しいです。」

シェルターインクルーシブプレイス コパル / Shelter inclusive place Copal
photo : copal

山々が綺麗に見えるというところは、やはり大切にされましたか。

「初めてその光景を見た時にとても感動したので、山形の方には当たり前の風景と伺いましたが、その美しさにみんなが改めて気がつくようになったらと思い、設計に活かしています。

設計の段階から運営の皆さんだったり、施工の皆さんだったりと、チームで話し合って作ってきました。作った時の想いを運営の方が引き継いでくださって、マルシェをしたりインクルーシブな運動会をしたり、高校生や大学生が子どもたちと遊ぶイベントを企画をしてくれたりと、多くの方にとても豊かに空間を使って頂いています。」

みんなが来たいと思える場所をつくる

機能性はもちろん、光や風、周りの風景も含めて、訪れる人みんなにとって心地の良い空間を提案する大西さん。従来の価値観に縛られず、フラットに居心地の良い建築を目指す視点は、大西さんの日常を見つめる等身大の感覚から生み出されているのかもしれません。

後編:「建築を生き物として捉える」建築家・大西麻貴が語る転機となった作品やヴェネチアビエンナーレの展示について