ル・コルビュジエの住まいであり、創作の場であったパリ16区にある「アパルトマンとアトリエ」

パリだけでなくフランス国内の複数箇所でル・コルビュジエの建築を見ることができます。その中で特別な存在なのが、パリ16区の集合住宅。ル・コルビュジエは1934年から亡くなるまでの約30年間、その最上階のアパルトマン兼アトリエの2フロアで絵を描いて暮らしていました。彼の想像の場であった空間は、ル・コルビュジエが考える”心地よい暮らし”を実現する特別な住まいだったはずです。

高級住宅街に位置する、設備もデザインも当時の最先端の住まい

建築はパリの16区のブローニュの森の東側、プロサッカーチームのパリ・サンジェルマンの本拠地パルク・デ・プランスの近くにあります。元々は閑静な住宅街で、ル・コルビュジエが設計を依頼された当時は未開発地域の一部でした。

1930年頃の石造りのクラシカルな古典様式のデザインが主流の中、「新しい生活をかなえます」と宣言して作られた建築は、鉄筋コンクリートやガラスを多用したモダンな外観と、当時の最新鋭の設備を備えた建築として完成しました。

7階建ての集合住宅は各階2戸のゆったりとした広さのあるつくり。ル・コルビュジエの自宅兼アトリエは約100㎡ほどの広さで、セントラル・ヒーティングや洗濯機、乾燥機など当時の最新設備が備えられた先進的なアパートでした。

設計にあたっては、開発業者からル・コルビュジエに対して、自由な設計をしていい代わりに、入居者を自分で探すことを条件として提示されていたとも言われています。

しかし、世界恐慌の影響もあって買い手はつかず、ル・コルビュジエの友人たちが彼のために部屋を購入したそうです。ル・コルビュジエ自身はこの住まいをとても気に入り、最期に至るまで手放すことはありませんでした。

入り口は8階にあり、下のフロアはアトリエ、リビングルーム、ダイニングルーム、寝室、台所で構成されています。上のフロアはゲストルームとルーフガーデン。ガラスの仕切りによる恵まれた採光と回転式仕切りによる空間使いが特徴です。素材については陶のタイル、オークのベニヤ板、ガラスのレンガなどの入手しやすいものが選ばれていて、住居としてカジュアルで親しみが持てるデザインながらも、見逃せないディテールも多く散りばめられています。

ヴォールト屋根の曲線が可愛らしいアトリエ


入り口を進み、まず目に飛び込んでくるのが広い絵画制作用のアトリエ。

内装の大半は塗装仕上げですが、アトリエ部分は煉瓦、石積みの壁面を露出させています。このデザインについては妻・イヴォンヌのアイディアが取り入れられたと言われています。

アトリエのかまぼこ型のヴォールト天井で、高い位置に設けられた窓から光が差し込み、開放感があります。

背後にはル・コルビュジエが実務的に使っていたスペースがあります。

実際に彼が作業していた机は前面のガラスブロックで明るくなっています。

ル・コルビュジエの暮らしへのこだわりが散りばめられた住空間

特徴的なアトリエとともに居住空間もル・コルビュジエの暮らしへのこだわりが散りばめられた場所になっています。

エントランスを挟んだアトリエの反対側がリビングルームとなっており、左奥にはキッチン、右側はベッドルームに通じています。

コンパクトながらスペースを余すことなく活用した使い勝手の良いキッチンカウンター。

それぞれの部屋にはル・コルビュジエがデザインした家具はもちろん、弟子のシャルロット・ペリアンがデザインした照明などが置かれています。

ベッドは眺望を重視したため脚が長く、高めのつくりになっています。ル・コルビュジエはこの建築を設計する前年(1930年)にイヴォンヌと結婚。彼女がなくなるまでこのベッドで一緒に寝ていたと言われています。

トップライトが設けられた浴室は、都市に居ながらにして明るく解放的。

パリの中心部から外れた閑静な立地。多少不便でもル・コルビュジエはそこから見える景色を特に気に入っていたそうです。

ダイニングからの眺めもよく、窓にはめられたカラフルなボックスからはル・コルビュジエの遊び心が伺えます。

空間のメインとなっている大理石のテーブルは当時のオリジナルです。

外から見るとこのようになっています。

内部はメゾネットタイプの構造となっていて、エントランス脇に設けられた螺旋階段を上がるとゲストルームと屋上庭園に繋がっています。

屋上の階段室は全面がガラスとなっており、下の階の採光にもなっています。

近代建築の五原則の一つ「屋上庭園」の片鱗が伺えます。

都市生活を快適に、心地よく楽しめる理想の住空間

ル・コルビュジエの「アパルトマンとアトリエ」は、ヴォールト状の天井やガラスの仕切りによる採光によって美しい造形と開放感のある光が感じられる心地の良い住まいです。「サヴォア邸」を郊外型とするなら、こちらは都市型の住居としての理想が詰まった空間かもしれません。

Le Corbusier’s studio-apartment – アパルトマンとアトリエ

開館日 : 土曜日
開館時間 : 10:00-13:00, 13:30-17:00
住所 : 24, rue Nungesser et Coli 75016 Paris, France