日本を代表する建築家・安藤忠雄による三角形の幾何学がモチーフの建築「秋田県立美術館」

日本を代表する建築家・安藤忠雄によって設計された建築作品は国内外問わず、国際的に高い評価を得ています。その安藤忠雄によって設計された秋田県立美術館を今回ご紹介します。秋田県立美術館は秋田市の中心街にある千秋公園を望める立地を生かし「ここにしかない美術館」をコンセプトにした設計、建築がされており、地域に根差した建築作品となっています。

秋田県立美術館の「三角屋根と三角形のモチーフ」

秋田県立美術館は「秋田の行事」をはじめとした美術品を所蔵しており、平成25年に開館しました。それにあたり以前の秋田県立美術館(旧秋田県立美術館)は閉館となりましたが、その建築の特徴であった三角屋根を引き継いだ「秋田県立美術館」では至るところに三角形のモチーフが使われています。

一見すると外からはコンクリートの箱のような造形です。

自由を感じる圧倒的な解放感を得られる螺旋階段

エントランスに入った瞬間に、来訪者を感動させるのがその圧倒的な解放感です。そこでまず目につくのが壁の支えや柱の無い、まるで宙に浮いているかのような螺旋階段です。

見ている側もあたかも自分が空中に浮いている様にさえ感じられるその大空間は圧巻の一言です。そしてもう一つのみどころが美しい直線で描かれた三角形の天井です。ここから自然光が降り注ぎます。三層に吹き抜ける縦方向に伸びた自由な空間は、天井からの光に包まれることで、より美しくダイナミックに感じられます。

歴史あるものを大切にしながら新しい形を生み出す階段室

また設計者、安藤忠雄にとっては「既存のもの」「歴史ある建物の再生」も非常に大きなテーマだそうです。この「秋田県立美術館」もそのテーマにおける挑戦の例外ではなく、旧秋田県立美術館の最大の特徴であった「三角形」をこの新しい美術館でも美しく再現しています。それが光の降り注ぐ「三角形の天井」であり、もう一つが「階段室」です。この三角形の階段室ではLDEライトの元に三角の光が降り注ぎ、こちらも非常に美しい空間となっています。

秋田の歴史と風土を描いた大作品を鑑賞する「大ギャラリー」

美術館である以上、その最大の目的は美術品の所蔵とその展示にあります。秋田県立美術館にも多数の美術品がありますが、有名なものとして藤田嗣治の作品「秋田の行事」があります。(所有は公益財団法人平野政吉美術財団です)この絵画は幅が20.5メートル、高さは3.65メートルもあるとても大きな作品です。秋田の地域に根差した暮らしを描いた、壁画のような大作品を、このギャラリーでは余すことなく堪能できるようになっています。ギャラリー自体は館内の2階に位置していますが、3階からも鑑賞できる様、設計されています。前面からの得られる圧倒的な迫力と上部から俯瞰した視点の両方で、秋田の歴史と風土を描いた大壁画を楽しむことが出来ます。

四季折々の美と人の心を映す大きな窓「ミュージアムラウンジ」

また秋田県民の地域への気持ちに寄り添い、水庭越しに旧美術館と対峙する構成で館内のミュージアムラウンジが設置されました。秋田県の中心街に位置する「千秋公園」を挟んだその向こう側には三角屋根の元の美術館を眺めることが出来るのですが、それはまるで大きな一つの絵画のようです。

水庭越しに映る景色は四季ごとにその表情を変え、刻一刻と変化するその様は、時の流れを描く大パノラマです。エントランスから見えた螺旋階段のあった「垂直の空間」とこちらのミュージアムラウンジからの「水平方向の眺め」という相反する構造が同じ建物の中でフロアごとに体感できることも見どころの一つです。

環境と地域に住む人の想いに調和した美術館

設計者が一貫して持っているテーマとして「周辺環境との一体化やその場所の個性を際立たせる建築」というものがありますが、この「秋田県立美術館」も秋田という場所の特性と環境、そしてそこに住む人々の想いに調和した、大変美しい作品です。

世界的建築家、安藤忠雄が設計した三角形モチーフの美しい「秋田県立美術館」

秋田県立美術館は、県民の想いを至るところに組み入れて安藤忠雄により設計された環境と歴史、そして人の想いに応える空間です。その象徴の一つが、至る所にある三角形のモチーフです。そんな世界的設計者の意匠の詰まった秋田県立美術館に是非足を向けてみて下さい。

秋田県立美術館

開館時間:午前10時から午後6時
休館日:不定休
電話:018-853-8686
URL : https://www.akita-museum-of-art.jp/
住所:秋田市中通1丁目4-2