異なる魅力の2つのル・コルビュジエ建築「スイス学生会館」「ブラジル学生会館」

パリ南部のジャルダン国際大学都市。広大な敷地に37の寮があり、ル・コルビュジエが手掛けたブラジル館、スイス館の他に日本館もあり、それぞれの国にちなんだ建築様式で建てられています。「スイス学生会館」はル・コルビュジエ最初の公共建築で、近代建築の5原則が実現されています。「ブラジル学生会館」はスイス館から27年後に完成。彼のパリでの最後の作品となりました。

ル・コルビュジエらしいモダンなデザインの「スイス学生会館」

1932年設計された「スイス学生会館」。箱が宙に浮いているような外観で、ピロティとモダンが外観は、まさにル・コルビュジエ建築。

外壁は基本的に石貼りで、サロン脇の階段部分を湾曲させて、居住棟部分は平板状になっています。立面ではサッシュのガラス面を前面に出しており、「ユニテ・ダビタシオン」に見られる様なバルコニーを介してのコンクリートによる格子による表現とは異なり、設計年度は古いにもかかわらず現代建築に近い印象を受けます。1階をピロティで持ち上げている為、自由に通り抜けることができます。

内部に入ると楕円の柱に階段が取り付けられたロビー、階段室の空間があります。集会用の部屋には、ル・コルビュジエ自身の壁画が描かれています。コンクリート製のテーブルなどオリジナルの家具が設けられており、学生寮といった規模の大きい建築の設計に際しても細部まで行き届いた造り付け家具の詳細な設計が伺えます。


学生が使用するであろう個室に入ると、質素ではあるものの使い勝手の良さそうな造り付け家具がレイアウトされており、学習生活に集中できそうな空間となっています。

スイス学生会館(スイス財団) – Fondation Suisse

URL : http://www.fondationsuisse.fr
住所:7K Boulevard Jourdan, 75014 Paris, France

ルシオ・コスタとの共作「ブラジル学生会館」

「スイス学生会館」と同じ国際大学都市内にあり、スイス館の27年後1959年の建築。基本計画はルシオ・コスタ(首都ブラジリアの都市計画した人)で、その後の設計と監理をル・コルビュジエが担当しました。ピロティで持ち上げられた高層部の寮室と、地面にへばりつくように建っている低層部のロビーという構成です。ピロティの高さは4.5mほど。まるで高架橋のような構造体です。

低層部はS字型の平面形をしていて、ピロティの下を貫通しています。
S字の片方の半円形がエントランス前の広場になっています。低層部と高層部は構造的には切り離されていますが、隙間はほんの少ししかありません。
エントランスを入ると独特な質感の床と、ル・コルビュジエらしい鮮やかな色彩による生っぽさが印象的です。

低層部の天井は曲面になっていて、ピロティ下を貫通している中央部が低く、両端が高くなっています。中央部では2mくらいしかなく、簡単に手が届くほどの高さです。高くなっている両端部でも3mくらいですが、中央部が極端に低いので大きな変化のように感じられます。
曲面のガラス壁。ピロティで持ち上げられた高層部が先にあり、そこに後から曲面の壁を置いたように見せようという意図が分かります。

トップライトも自由な形。トイレや自販機コーナー等の小部屋も曲面で構成されています。この「ブラジル学生会館」はル・コルビュジエの晩年に近い頃の作品ですが、中初期の「サヴォワ邸」と比べると、何もなかったピロティにこのような自由な曲面で新たな価値を見出したところに進化が感じられます。

ブラジル学生会館 – Maison du BRESIL

URL : http://www.maisondubresil.org/
住所:7 L boulevard Jourdan, 75014 paris, France

印象の異なるル・コルビュジエ建築が楽しめる2つの学生会館

真面目で堅剛な印象の「スイス学生会館」と、自由に造形している印象が強い「ブラジル学生会館」。制作された「ブラジル学生会館」の方が若々しい表現に見えて、制作順が逆の様にも見えるほど。ル・コルビュジエの特徴「構造と仕上の分離」と「自由な平面」が感じられる、2つの個性的な建築です。