「素材と技術を活用した建築で現代を表現する」建築家・遠藤克彦が意識しているデザインとは!?

2022年2月に開業した〈大阪中之島美術館〉や、公共建築賞にて優秀賞を受賞した〈豊田市自然観察の森ネイチャーセンター〉などの公共施設から住宅といった様々な空間設計を手掛ける建築家・遠藤克彦。今回は遠藤さんに、日常で意識されているデザインやご自身の建築の特徴について伺いました。

建築家・遠藤克彦

ⓒ歌津亮吾

1970年神奈川県生まれ。東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻修士課程修了、同大学院博士課程進学。1997年、東京大学生産技術研究所 原広司研究室在籍中に遠藤建築研究所設立。2007年、株式会社 遠藤克彦建築研究所に組織改編。〈豊田市自然観察の森ネイチャーセンター〉をはじめ、〈東京大学生産技術研究所アニヴァーサリーホール〉や〈大阪中之島美術館〉など様々な建築設計を手掛け、高い評価を得ています。現在はご自身の活動の傍ら、茨城大学大学院 教授も務められています。

素材と技術はデザインに欠かせない重要な要素

撮影:上田 宏

まずは日常生活の中で大切にされているデザインについて伺いました。

「建築家という仕事柄、デザインをする側の話になってしまうのですが、現代は色々なもの、特に素材と技術には大きな可能性がある時代だと思っています。素材と技術をきちんと建築の上に乗せて、どういった形で現代というものを表現できるのかを常に意識しています。」

行き止まりの風景に惹かれる

建築家として、お好きな空間はどういったものなのでしょうか。

「例えば終着駅のような、行き止まりのターミナルの風景が好きです。その先に繋がっていない、止まってしまっているその先を自分で探しに行くような感覚が好きなんです。
あとは、自転車にもよく乗るので、1人になれる点でいうと自転車の上も好きな空間と言えるかもしれません。」

ある建物や空間ではなく、“行き止まり“が好きという遠藤さん。何も無いその先を想像することが好きといった視点は、新しい空間を創り上げる建築家ならではの感覚かもしれませんね。

建築家であるお父様の影響で同じ道へ

お父様が設計事務所を経営されていらっしゃったと伺いましたが、そうした環境がご自身も建築家を目指すきっかけとなったのでしょうか。

「小さい頃から設計という仕事を横で見ながら育ったのは、建築家を目指す上で大きな影響を与えてくれたかもしれません。本や身近な建築物など建築を好きになるきっかけはたくさんあると思いますが、僕の場合は父の存在が大きかったように思います。」

独立に前向きな雰囲気が後押しした在学中の事務所設立

東京大学大学院在学中にご自身の設計事務所を設立されましたが、当時の学生にとってそうした流れは一般的だったのでしょうか。

「私が所属していた原広司先生の研究室は、本当に設計が好きな人が集まる場でした。研究室全体として前向きだったこともあり、私が所属していた当時はすぐに自分の事務所を始めるような流れがありました。私のようなアトリエ系の設計事務所を設立するというのが半分、また一方が組織や官公庁に務めるといったバランスで、進路選びは節目の時期だったかもしれませんね。」

地域のニーズや課題を解くことで導かれる建築

撮影:上田 宏

遠藤さんの作品にはキューブや三角形が並んでいるような建築が多く見られますが、ご自身の建築の特徴とはどういった点だと考えていらっしゃいますか。

「特別な形を狙うようなことはあまり意識していません。その地域のことや地域の人が考えていること、いわゆる社会資本と言われるような、その地域特有の大切なこと、失ってはいけないこと、そうしたものを丁寧に汲み取っていく中で形が生まれてくると思っています。なので、形ありきではなく、クライアントや地域の人々の要望や課題などを解きながら形にしていくイメージです。その形にしていくフィルターみたいなものが建築家だと考えています。」

そうした真の課題やニーズを探る丁寧なアプローチが、たくさんのコンペの中でも遠藤さんのアイディアが選ばれる理由かもしれませんね。

「クライアントは色々な選択肢を見たいわけですよね。『これがいい』と建築家が1つ案を出したところでそれに決まることはない。多くの選択肢の中でお客さんも一緒に考えたいと思うんです。それをご一緒する姿勢は大切なことだと考えています。」

課題を問い続けることで導かれる建築

建築が建てられる地域の課題やニーズを丁寧に読み解き、社会をよりよくする空間を提案する遠藤さん。そんな遠藤さんが手掛けた話題の美術館〈大阪中之島美術館〉や、これからの建築への考えについては「『本一冊を片手に訪れるような、身近な存在にしたい』建築家・遠藤克彦が手掛けた〈大阪中之島美術館〉への想いやこれからの建築について」からどうぞ。