メキシコシティから知るメキシコ・モダン建築の巨匠ルイス・バラガンの建築群。

メキシコ出身の建築家、ルイス・バラガン。メキシコ建築を知る上で最も重要な人物と言っても過言ではない、メキシコ建築の巨匠だ。メキシコシティには、彼が今まで手掛けた数々の建築物を実際に見ることができることで知られ、世界中から多くのバラガン建築ファンが訪れる。バラガンが独特な色彩センスと緻密な計算で創り出す光彩。その数々を見ていこう。

 

メキシコ建築の巨匠ルイス・バラガンとは

ルイス・バラガン
Via : Wikipedia.

20世紀に活躍をしたメキシコの建築家、ルイス・バラガン。水面や光を大胆に取り入れ、色彩の強い壁面を使う特徴があることで有名だ。その独特なセンスを開花させた理由は、独学で建築を学び、世界を旅しながら様々な知識を広げたことが挙げられるだろう。彼の「型にはまらない建築デザイン」は、建築業界から大きく注目を浴び、1980年にはプリツカー賞を受賞した。

ルイス・バラガンの作品は、メキシコのカラッと乾いた敷地と空の青さを写し込んだ鮮やかな空間設計が印象的。単純な構成空間にダイナミックに施されたカラーリングは、メリハリが美しいリズムを生み出し、唯一無二の建築と言っても過言ではない。

世界遺産「ルイス・バラガン邸と仕事場」

2004年に世界遺産に登録された「ルイス・バラガン邸と仕事場」は、バラガンが実際に生活をしながら作業をしていた自邸である。ルイス・バラガン邸と仕事場で一番の見所は、十字を描いたサッシが印象的な美しい大開口。このデザインは、後に日本の建築士巨匠・安藤忠雄が「光の教会」でインスパイアを受けた、言わば「原点」とも言われている。

一方で注目したいのは、壁を反射板のように使い、効率的に光を集めた設計技術だ。所々に設けられた小口のような穴からは、計算されたかのように光がスッと差し込み、フロア全体を柔らかく照らす。バラガンがデザインした、モダンなインテリアとカラーリングのコントラストが鮮やかな空間は、クオリティ高く洗練されている。

ルイス・バラガン邸と仕事場 Casa Estudio Luis Barragán

開館時間 : 10:00~17:00(予約制)
URL : http://www.casaluisbarragan.org
住所 : General Francisco Ramírez 12-14, Miguel Hidalgo, Ampliación Daniel Garza, Amp Daniel Garza, 11840 Ciudad de México, CDMX, Mexico

 

名作「サン・クリストバルの厩舎」

ルイス・バラガンの名作「サン・クリストバルの厩舎」はメキシコシティ郊外に存在する。ここは、ここは、サラブレッドの繁殖と競走馬の訓練を専門に行う家族が住む邸宅と厩舎。以前、ハイブランドのCMやキューピーマヨネーズのCMでも使われ話題になった。

サン・クリストバルの厩舎は、通称「馬と人間の両者にとってのオアシス」とも言われ、バラガンの手掛けた作品達の中でも「馬の身体スケール」に合わせた不思議な空間デザインが印象的だ。

敷地に入ると目を引くのは、フォトジェニックなピンクの壁。そこにメキシコの強い日差しが当たり、乾燥した空気の中に美しい陰影を作り出している。中央に輝く馬用のプールは、ミントグリーンの色彩がピンクの壁と直角に対抗し、コントラストが美しい。豊かな色彩のある建築は、メキシコらしい風土を味方につけ、また色を一つ加える。ルイス・バラガンが創り上げたサン・クリストバルの厩舎の建築空間は、この土地でしか感じられない「唯一無二の建築」だろう。

 

サン・クリストバルの厩舎 Cuadra San Cristobal – Los Clubes

電話 : +52 55 5402 2021
URL : http://www.barragan-foundation.org
予約メール : [email protected]
住所 : Cda. Manantial Ote. 20, Mayorazgos de los Gigantes, 52957 Cd López Mateos, Méx.,

ルイス・バラガン最後の作品「ヒラルディ邸」

1977年に完成した「ヒラルディ邸」は、告代理店を経営していたパンチョ・ヒラルディ(Pancho Gilardi)とマルティン・ルケ(Martín Luque)が友人たちと過ごす場所として造られた邸宅。この建築は「ルイス・バラガンの最高傑作」と言う者も多く、世界遺産にも登録されている。

各フロアで印象の違う、鮮やかな空間。まるで3Dのように金色に輝く美しい廊下は、緻密な光彩設計やコントラストが鍵を握る。敢えて照明を設置せずに黄色いガラスで自然光を取り込むことで、心地良く照らされる輝きを放つ。

室内に設けられたスイミングプールは、赤い柱と青い壁がプールの水面から出るデザインがまるで空間芸術。そこに天窓から光差し込み、凸凹な塗装の肌に様々な表情を写している。

空間ごとに計算された色彩の間隔ががまるで音楽のリズムのように躍動と静寂が同居するヒラルディ邸。その様は、計算尽くされた採光と色彩の魔術、まさにバラガン最後にして最高の傑作だ。

ヒラルディ邸 Casa Gilardi

開館時間 : 9:00~18:00(要予約)
電話 : +52 55 5271 3575
住所 : General León 84, Miguel Hidalgo, San Miguel Chapultepec I Secc, 11850 Ciudad de México, CDMX, Mexico

 

郊外のハイウェイ沿いに建つ「サテライトタワー」

ルイス・バラガンが彫刻家のマシアス・ゲーリッツと共作で手掛けたサテライトタワー。5本の塔で構成された不規則な塔は、視点や角度によって塔数が違って見えたり、面や鋭角に見えたりする不思議な感覚が実に面白い。車で塔の周りを走り抜ける「スピード感」を想定して計算され、まるで塔の方が動いているような錯覚にさせる。

バラガンらしい「独特なリズム感」が印象的なサテライトタワー。力強く不思議な魅力の裏側には、やはりバラガンが追求した「光のおりなす空間づくり」と「色彩デザイン」が健在していた。

サテライトタワー – Torres satelite

住所 : Naucalpan, CO. Satélite

 

メキシコ建築の巨匠ルイス・バラガンの作品は、モダニズムとラテン国家メキシコにローカライズされた非常におもしろい建築ばかりだ。