「インスピレーションが湧くことはない」仕事と真正面に向き合うFJDアートディレクター・グラフィックデザイナーの藤田二郎
アートディレクターであり、グラフィックデザイナーの藤田二郎さん。CDジャケットや書籍、商業施設など様々なデザインに携わる、藤田さんに日常のことやデザインのことについて話を伺った。
暮らしの中で大切にしているデザイン
幅広いジャンルのデザインに携わっている藤田さん。
暮らしの中で大切にしているデザインを伺うと、「料理が好きで、普段から料理をするんです。」と話した藤田さん。
料理をする際に、鍋やフライパンなどの機能美を重視し、よく考えられているプロダクツだとやはりすごく使いやすいそうで、「“デザイン=機能美”ですね。」と教えてくれた。
好きな場所・空間
藤田さんの好きな場所や空間は、自宅の作業机。作業机の前にいると、リラックスができ、どこにいるよりも落ち着くそうだ。
また、「仕事を職業だと捉えておらず、生き方だと感じている。」と話し、“好きなものを仕事にすること”は嬉しい反面、大変なこともあると思うが、「とにかく仕事が好きですね。」っと笑いながら話した。
音楽に携わったきっかけ
24歳の時に東京へ上京し、それまでは大阪で生活をしており元々音楽が好きだったという藤田さん。当時イベントフライヤーのデザインを先輩に頼まれており、その方が音楽のレーベルを立ち上げると共に、「CDジャケットをデザインしてくれないか?」と声をかけてもらったそうだ。
「2枚目をデザインした時に、様々な方達の心に刺さったようで、そこから依頼が増えたんです、」と音楽へ携わるきっかけを教えてくれた。
デザインをする時に心がけていること
CDジャケットの大きさは非常に小さく、その中でデザインをする時に気をつけていることは、「ぱっと見の印象でどこかに熱量を感じてもらえるように心がけている。原画の熱量はすごく、絶対的なもの。しかし印刷物になることでどんどんと薄まっていくが、その中で名残や、熱量を感じてもらえるように常に考えている。」と教えてくれた。
藤田さんは、関わっている仕事の音楽をひたすらループするそうで、そこから世界観を探っていくようだ。
「CDジャケットは見えないものを具現化する、自分が翻訳家ではないが、そういうイメージでとことん身体の中に入れる作業をまずするんです。」と教えてくれた。音楽の世界観を翻訳したものが、CDジャケットに描かれているのだ。
“色”に対するこだわり
とにかく圧倒的に美しい色使いをし、人々の想像を掻き立てるような作品を作る藤田さん。
藤田さんのデザインの1番の売りは「色」だと自身も話し、「絵を書いてる時やパソコンで作業している時に、“あ、きた!”という瞬間がある。スイッチが入ったような感覚。凄いものになるなと感じる時がある。」と話し、“色”がキッカケで、そこからスイッチが入り、凄まじく楽しくなり、様々なアイディアも浮かぶそうだ。
また、書籍のアートディレクションやロゴマークのデザイン施設のディスプレイなど様々な多岐にわたっている藤田さんだが、一体どこからインスピレーションを受けているのだろうか。
「インスピレーションが降りてくることはない。真面目に素直にその物事と向き合う、そうして色々と自分の中で考えていくうちに、アイディアやデザインが湧いてくるんです。」と教えてくれた。
時代に沿った「伊勢丹新宿店」本館ディスプレイ
一昨年、伊勢丹新宿店の本館ウインドウディスプレイ担当した藤田さん。
コロナ渦により、誰もが立ち止まらないといけない状況になった時だった。
「道を通る人を元気にしよう」と、伊勢丹新宿店の閉まっていたシャッターが上がる一発目を担当したディスプレイ。
テーマは「POWER of FASHION」
“このような状況でファッションに何ができるか”を表現するために担当者と、とことん話し合ったという。
「あのディスプレイは、暗闇から中央に向けて明るくなっているんです。闇から光が差していくというイメージで作り上げました。」と話し、時代や人々の心に寄り沿ったディスプレイとなったのだ。
「Life is health」
インタビューの最後、藤田さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると「Life is Health(健康)」だと答え、「仕事を職業でなく、生き方だと捉えている。仕事のパフォーマンスを上げるには、やはりまず健康でなくてはだめ。たくさん食べて寝て運動をして、万全な態勢で仕事と向き合うこと。」と話し、インタビューを終えた。
仕事に真正面から向き合い、そこから生まれる藤田さんのデザインはこれからもたくさんの人々を魅了し続けるであろう。