「ゴミをゴミとして捉えるのではなくゴミは新しい価値である」日本エムテクス代表・三浦征也さん

日本エムテクス株式会社代表取締役であり、一般社団法人「GOMITAIJI」の代表理事をも務める三浦征也さん。

今回はそんな三浦さんにご自身のことや、日本エムテクス株式会社のこと、「GOMITAIJI」の活動内容など様々な角度からお話を伺いました。

デザインは“課題発見と課題解決”

はじめに、三浦さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。

「私が考えるデザインというのは、課題の発見・課題の解決だと思っています。これは、デザインのパートナーから学んだ考え方で、ある時『三浦さんも立派なデザイナーですよ』と言われて「嬉しいな」と感じた記憶がありますね。彼は、“課題を解決することがデザインだ”という風に言っていて、そこから私にとってのデザインとは課題解決だと言うようになりました」

「しかし“課題解決”とは、課題の発見があってこそだと思っていまして、意外とこの課題の発見が難しいんですよね。同じような情報や現象が皆さんにも同様に目の前に現れていると思うのですが、これを見過ごすのか、それとも課題として捉えるのか、ここが非常に重要だと思っています。ですので、私は開発を行うときにデザイン、課題発見、課題解決をしますけども、『なんでこんな製品がないんだろうか』など探してみると意外とないことに気づくんですよね。そこから開発に入るケースが以前は多かったです。しかし最近では、廃材の困りごとの相談が多くなってきて、この課題を解決していくにはデザインが必要となってきます。『こんな製品ができれば』と弊社で繊維化ができればいいんですけども、できない場合ももちろんあるので、普通は諦めるのですが、私は工場を探していきます。これも“デザイン”と言えるかもしれませんね」

4つの大好きな場所

続いて、三浦さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?

「私には、4つの大好きな場所があります。まずは、自宅のトイレと会社の執務室です。この2箇所は弊社の製品で囲まれた部屋なのでいるだけで幸せになります。次は、寝室のベットですね。寝る前にいろいろなことを考えるのですがそれらが夢にまで出てきて、早朝に夢で答えが出ることが結構あります。その時に、隣に携帯電話を置いていて忘れないように自分宛にメールをして朝起きて確認します。なので寝室のベッドは大事な場所です。最後は、多摩川の河川敷です。毎週通っていて考え事をするときにはここに行きます。私は大分県の出身なので、東京にいながら田舎を味わえて新鮮な気持ちになります。」

卵の殻をアップサイクルしたきっかけについて

三浦さんが代表を務める「日本エムテクス株式会社」は、卵の殻を中心としたゴミをアップサイクルして製品を作っていますが、何がきっかけでこのような事業を始められたのですか?

「今から20年ほど前までは、再利用の難しいものを原料として開発していました。そこで卵の殻と出会ったんです。再利用の難しいものを原料としていた頃はあまり身近ではなかったので、なかなか人に伝えることが難しかったんです。だけど、卵の殻って私たちのすごく身近なものじゃないですか。そして再利用することによって、環境に優しい素材である卵の殻は純白であり、命を守るシェルター。ここまで綺麗なゴミって他にないのではと興奮したことを今でも思い出します。」

「私が大切にしていることは、身近なものから身近なものにアップサイクルすることです。これらは人の目に留まり、広がりを見せるのではないかと考えました。『面白い』『わかりやすい』『自慢したくなる』こんなことが私の開発のポイントになっているのかなと思っています。」

製品へのアイディアが生まれた経緯

現在、卵の殻を中心としたアップサイクルからは、壁紙や塗料、タイルやコースターなどいろいろな商品を展開されていますが、どこから製品への発想が得られたのでしょうか?

「当初、卵の殻を原料として塗料の開発をしていました。当時は、卵の殻の中の薄い膜(卵殻膜)も原料として使用していたのですが、この卵殻膜が腐敗してしまい塗料の容器の中にガスが充満してしまったんですね。爆発するのではないかと思うぐらいパンパンに膨れ上がってしまい、全て廃棄しました。そこで、現在は卵殻膜を除去した卵殻の粉末だけを原料にして再度開発に取り掛かっています。卵の殻って調べてみると、一個あたりの一万個あたりの無数の穴が空いているんですよ。それって脱臭効果や、湿気をコントロールする効果があるのではないかと思い、データーをとると非常に良いデーターが取れました。それを経て、壁紙や塗料、タイル、左官材と次々に開発して製品化しました。」

現在は吸水バスマットや吸水コースターも発売

「そして、実は卵の殻って水を吸う機能もあったんですよ。なので、吸水バスマットや吸水コースター、アロマディフューザーなど、このような雑貨も発売しました。そして、昨年発売した「NURU DENIM」は、国内のデニム工場から排出されるデニムの端材を細かく粉砕したものを原料としました。デニムの質感を残しながら、壁に塗る製品となっており、“塗るデニム”というものは、今までになかった製品なので、問い合わせに追われている状況になっています。」

三浦さんは、生活で密着したものをゴミとして捉えるのではなくて、新しい価値として開発を行っているそうです。

一般社団法人「GOMITAIJI」について

三浦さんが、代表理事を務める一般社団法人「GOMITAIJI」。すごくユニークなネーミングですが、これはどのような意図で設立されたのでしょうか?

「『一般社団法人 GOMITAIJI』は、2022年5月30日、ゴミゼロの日に設立されました。2015年にSDGSが採択されたのですが、企業が本格的に取り組み始めたのが2019年ぐらいかなと思っています。その頃から様々な企業から製造過程などで排出されるゴミのアップサイクルの依頼が急増しましたね。私一人でずっとやってきたのですが、一人では完全に限界に達したため、アライアンスでこれらの課題を解決するためのプラットフォームの設立を考えました。当初のネーミングは『サスティナブル 』や『クリーン』などわかりやすいネーミングを考えていたのですが、イマイチピンっと来なかったんですよね。そこでブランディングチームのパートナーであり、福岡でデザイン事務所を営み、GOMITAIJIの理事でもある、梶原さんから出てきたのが『GOMITAIJI』という名前でした。当初は、『GOMITAIJI』って名刺交換の時に言いたくないなと思っていたんですが、毎日考えてるとこれが一番伝わりやすいのではないかと思って、命名させていただきました。」

幅広い活動を行う「GOMITAIJI」

GOMITAIJIの活動内容や具体的な取り組みの例を教えていただけますか?

「現在多くの会員さんがいますけど、例えば、古くなったパソコンを最新式にアップサイクルしてレンタルを行なっている会社。廃棄されるニラを醤油漬けにしてニラ醤油を販売する会社。古い住宅や建物を壊さずにアップサイクルする会社など、様々な業態の会社が会員となって、情報交換やアライアンスを組みながら、ゴミを価値に変える取り組みや活動を行なっております。」

「また、最近のGOMITAIJIの活動として、REクリアファイル活動があります。使用済みのクリアファイルをお客様に渡すのは失礼だと思い、一般的には使用した後のクリアファイルって捨ててしまいますよね。そこで使用済みのクリアファイルに再利用で資源循環というメッセージが記載されているステッカーを販売しています。今まで弊社は年間に800枚のクリアファイルを買いこれを廃棄していたけども、現在は1枚も購入していません。こういう形でゴミは資源であるっというメッセージを掲げながら活動をしています。」

企業からの依頼が増加中

GOMITAIJIの活動を続けて、周りの反響についてはいかがですか?

「最初は、『GOMITAIJI』というと、皆さんクスッと笑ってしまうですよね(笑)しかし、現在は企業からゴミを価値に変えてほしいという依頼が日々増加しています。例えば、ラーメン屋さんで出汁をとった煮干しを『なんとかしてほしい』や、美容室からでた髪の毛など私たちも想像をしていなかったゴミの依頼も増えてきています。できるだけ考えて、できるだけ出口まで誘導できるように、日々取り組んでおります。」

将来的なビジョンについて

三浦さんが今後どんな取り組みをしていきたいのか、将来的なビジョンを教えてくれますか?

「やっぱりこれからの時代をになう若い人に我々の取り組みを伝えることが重要かなと思っています。最近は、中学校や高校の課外事業として、GOMITAIJIに学びに来る学校も複数あります。今の学生に授業をして思ったことは非常に環境に対する勉強をしているなと思っています。これから社会に出ていく方々にゴミは価値であるということを伝えさせていただき、新しい価値のある未来を作ってほしいなと思っております。そのためにも積極的にGOMITAIJIの活動を行い、我々の存在が未来をかえるような団体になればと思っております。」

そして、インタビューの最後、三浦さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is GOMITAIJI」と答えてくれました。

「ゴミをゴミとして捉えるのではなくゴミは新しい価値である」日本エムテクス代表・三浦征也さん

本来はゴミとなり廃棄されるものに対して、新たな価値を与えて再生するアップサイクル。三浦さんを始め、日本エムテクス株式会社や一般社団法人GOMITAIJIの取り組みは、私たちの行動や意識を今一度振り返らせてくれることでしょう。今後も三浦さんのアイディアによって、どんなアイテムが生み出されるのか、活躍に目が離せません!