「とりあえずやってみる」廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」代表・久保哲也さん

福岡県福岡市で、毎週土曜日のみ営業している廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」の代表を勤めている久保哲也さん。

今回はそんな久保さんにご自身のことや、マテリアルマーケットのことなど、様々な角度からお話を伺いました。

「機能的でシンプルなもの」を大切に

はじめに、久保さんが暮らしの中で大切にしているデザインについて伺いました。

「元々プロダクトデザイナーとして活動していることもあってインテリアやプロダクト、ものがとても好きなのですが、その中でも機能的でシンプルなものに惹かれます。過度に装飾されているものではなく、必要十分で使い勝手も考えられていて、愛着を持って長く大切に使えるものを選んでいます。」

好きな場所、空間

続いて、久保さんのお好きな場所や空間はどこでしょうか?

「2年前に糸島に中古住宅を購入しました。そこにウッドデッキを作ったのですが、そこからぼーっと庭を眺めている時間が好きですね。庭は結構広く、木が2~3本あって…。季節によって様々な種類の草花が咲いてくれるんです。季節によって違うんだなと改めて実感しており、最近はそういうのを見るのが楽しいです。」

廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」について

久保さんが代表を務める廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」について教えてください。

「様々な工場やもの作りの現場から排出される端材や廃材の中から、私たちが価値があると判断したものをセレクトし、だれも知らないうちに廃棄されていた素材を次の使い手の方に繋げる取り組みを行なっています。」

そもそも、なぜ廃材や端材に着目したのでしょうか?

「元々私はデザインの仕事をしていたので、いろいろな工場に行く機会が多かったんです。その時にたまたま廃棄物置き場に木材の端材がコンテナいっぱいにあるのを見つけました。それから工場の方に相談し、自分が模型を作ったり、DIYする材料として端材をいただいていたんですけど、もしかしたら自分と同じように、端材や廃材を使いたいという人がいるのでは?と思ったのがきっかけです。」

「マテリアルマーケット」をスタートしたきっかけ

紆余曲折があったりいろいろな経緯があると思いますが、廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」をスタートしたきっかけは、何だったのでしょうか?

「日本を転々とした後、最終的に福岡に戻り、デザイン事務所として独立しました。ただ、デザイン事務所としての仕事ももちろんあったのですが、元々ものを長く使ったり、デザインする上でそういうものづくりをしていきたいなと思っていたんです。その中で廃材に出会うきっかけがあり、同じ想いを持っているデザイナーの仲間や建築家の仲間と一緒に始めたのがきっかけです。」

デザイナー久保さんが感じる廃材の魅力

元々デザインの仕事をしていた久保さんですが、デザイナーから見て廃材のどういうところに魅力を感じていますか?

「端材や廃材の中には、面白い形や意図していない形、形としてとても美しいものもあります。その意図されていない形から全く別の新しい使い方を考えるのですが、その素材をどう料理しようかなど、想像力を掻き立ててくれるところに魅力を感じています。」

マテリアルマーケット」で人気のアイテム

様々なアイテムを扱っている「マテリアルマーケット」ですが、中でも人気のアイテムを教えてください。

「いろいろなイベントに出店しているのですが、どんなイベントでも1番人気なのは糸巻きコーンですね。元々は糸が巻かれていた紙製の芯で、カラーコーンのような形状をしています。素材は紙ですが、見た目は陶器のようにも見える素材です。ドライフラワーの一輪挿しなどとしても使えるので、とても人気があります。」

「そしてもう1つは、有田焼や伊万里焼きなど、磁器を製造している窯元さんから仕入れたハマです。元々ハマは、茶碗や湯呑みなど窯で焼き上げる際に製品の歪みなどが発生しないよう、製品の下敷きとして使われる道具です。しかし、一度焼き上げてしまうと製品と同じで小さく収縮してしまうので、一度で役目を終えてしまうんです。商品の最終的な形としては、磁器のプレート状のものになるので、素焼きの磁器プレートのようになります。そこにアロマオイルを垂らしてディフューザの代用品として使ったり、アクセサリーなどの小さいものを置くプレートとして使ってもらったり、用途はいろいろあり人気アイテムの1つです。」

また、オンラインショップでsold outとなっている「ヒノキコマ」は、消臭目的で使用したり、丸くてコロコロした見た目に可愛らしさを感じるため、そのまま工作の材料に使ってもらっているそうです。

今おすすめの素材は、溶岩石のプレート

久保さんが「今これが面白いんじゃないか」「今これがアツい!」と思うアイテムがあればぜひ教えてください。

「建築現場からでた外構などに使われる溶岩石のプレートの端材です。小さい穴がポツポツと開いていて、テクスチャーがすごくかっこいいんです!それを使ってお気に入りの雑貨をディスプレイしたり、土台や鉢植えの観葉植物を置く台とかにも使えるのではないかと思っており、今おすすめの素材ですね。」

お客さんや業界からの反応

久保さんも店頭に立たれるという「マテリアルマーケット」ですが、お客さんからはどんな反応が返ってきますか?

「店頭では廃材や端材が生まれる背景やストーリーも紹介しているので、『面白いですね』『こんなの探してました』と言ってくださるお客さんもいらっしゃいます。」

逆に業界からの反応は何かありますか?

「こういう活動を続けていると、『うちの会社にもこんなものがありますけどどうですか?』という相談や『端材や廃材の活用方法どうしたらいいですか?』という相談があったりだとか。あとは商業施設から『サスティナブルをテーマにしたディスプレイをやってもらえないか?』という多方面からいろいろと反応がありますね。」

また、お客さんはDIYや普段からものづくりをしている方ももちろん多いそうですが、ご自身でお店をされていたり、店舗のディスプレイとして購入する方もいらっしゃるそうです。

「マテリアルマーケット」を通じて今後やってみたいこと

久保さんが「マテリアルマーケット」を通じて今後やってみたいことや将来のビジョンを教えてください。

「今はすごく小さな店舗で営業をしているので、取り扱う素材がどうしても小さなものに限られています。なので今後は、店舗を広くして商材ももう少し大きくしたり、商品量も増やせればと考えていますね。ここ2~3年でアップサイクルなどの活動も活発になってきているので、私たちだけでなく社会全体で端材や廃材が素材として流通する仕組みができると、もっといろんなことができるのではないかと考えています。」

Life is “とりあえずやってみる”

インタビューの最後、久保さんに「Life is ◯◯」空欄に当てはまる言葉を尋ねると、「Life is “とりあえずやってみる”」と答えてくれました。

「マテリアルマーケットの活動もとりあえずやってみることで、いろいろな人と繋がって様々な体験、失敗を経験することができました。まずは行動を起こして様々な角度で軌道修正をして解像度を上げていく…という作業を繰り返していくことが大切なんだと実感しています。これからも何か思いついたら、とりあえずやってみる精神でいろんなことにチャレンジしていきたいと思っています。」

ものが溢れて、何でも手に入る大量生産・大量消費する時代から、持続可能な社会への移行が求められている昨今。いらなくなった「廃材」をもう一度「素材」として活用する。そんなアップサイクルの活動をしている久保さんを始めマテリアルマーケットの取り組みは、私たちの行動や意識を今一度振り返らせてくれることでしょう。今後もどんなアイテムが生み出されるのか、久保さんの活躍に目が離せません…!