日本で体験できるフランク・ロイド・ライトの建築作品

母国アメリカ以外で唯一フランク・ロイド・ライトの作品が現存する日本。ライトが有名建築家の仲間入りを果たしたウィンズロー邸も、左右対称の構造や軒の深さに日本への深い造詣が伺える。ライトは日本を、地上でもっともロマンチックでもっとも美しい場所だと讃えていた。

日本で体験できるフランク・ロイド・ライトの建築作品の内、代表的な帝国ホテルと、自由学園明日館を紹介する。

帝国ホテル

1905年、ライトが来日したころには300年の鎖国が幕を閉じ、封建社会はほぼ消滅。西洋の抱いていた「エキゾチックな日本」の要素はほとんど無く、世間は文明開化一直線で西洋化に邁進していた。

帝国ホテルを1919年に着工すると、使用する石材から調度品に使う木材の選定に至るまで自らで管理した。例えば、帝国ホテルに使われた「スクラッチタイル」や「テラコッタ」「クリンカータイル」などは当時の日本では殆ど作られておらず、新たに「帝国ホテル煉瓦製作所」を設立したほどだ。

しかしこうした完璧主義は大幅な予算オーバーを引き起こし、経営陣との軋轢を生みました。結果、ライトは帝国ホテルの完成を見ずに日本を離れることとなる。

初代帝国ホテル本館は1967年に解体され、1985年に正面玄関部分のみが愛知県の博物館明治村に移築された。栃木県にある東武ワールドスクウェアでは、25分の1の模型で在りし日のライト館全景を再現している。

旧帝国ホテル正面玄関

電話 : 0568-67-0314
URL : http://www.meijimura.com
入村料金:大人1,700円
住所 : 愛知県犬山市字内山1番地

自由学園明日館

池袋にある、自由学園明日館。国の重要文化財に指定されており、ウィスコンシンの大平原を舞台としてライトが発想した草原住宅の佇まいが特徴。

自由学園の創設者、羽仁夫妻が女学校の創立を考え、若き日の遠藤新に依頼。そこで遠藤新は、師であるライトを勧めた。彼は当時帝国ホテルの現場の元、日本人のチーフアシスタントとしてライトのもとにいたのである。ライトは女性のための教育理念に深く共感し、校舎建築を快諾した。ライトは、帝国ホテルの厳しい仕事の合間に、自由学園の図面はとても楽しそうに取り組み、数日でスケッチを書き上げたという。

創立者の羽仁夫妻が願った教育の基本であった。そのため、当時の学校建築としては珍しく食堂が校舎の中心に設計されている。当初は部屋の左右に幾何学模様の大きなガラス窓があり、その外はテラスだったが、生徒が増えるに従って食堂に入りきれなくなり、ライトは帰国後であったので遠藤新がテラスに屋根をかけるなどして3か所の小食堂を増築した。

ホールには、自由学園明日館を象徴する印象的な窓がある。住宅作品で様々のステンドグラスを作ってきたライトが、簡素さとローコストを求めたこの建物では、桟と羽目板のみによる装飾を採用した。ライトはフリーハンドによる線を用いず、すべて幾何学的なデザインを貫いている。それは、ライトにとって最初の建築の師匠である、「フリーハンドの天才」と呼ばれた建築家ルイス・サリバンを超えたいという思いの表れとも言われている。

 

ライトが帝国ホテルでも採用した大谷石は、日本でライトの代名詞的な素材である。ライトは暖炉とは暖を取るための手段のみならず、火のあるところに人は集まり、団らんし、安らぎの場を共有するのだと考えており、手がけた住宅の多くに、暖炉を作っている。

自由学園明日館

開館時間 : 10:00~16:00(15:30までの入館)
夜間見学 毎月第3金曜日 18:00~21:00(20:30までの入館)
休日見学 10:00~17:00(16:30までの入館)
建物内見学可能日の14時から(休日見学日は11時、14時の2回)明日館スタッフによる1時間程度の建物ガイドを開催
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、その翌日)、年末年始
見学料:見学のみ¥400/喫茶付見学¥600/お酒付き見学(夜間見学のみ)¥1000
電話 : 03-3971-7535
URL :http://www.jiyu.jp
住所 : 東京都豊島区西池袋2-31-3

 

彼の有機的建築は、無機質になりがちな現代において、より人間的な豊かさを提供してくれる建築思想である。

せわしなく、便利さと効率に追われる日常を一時忘れさせてくれるような建築鑑賞になった。