藤本壮介が手掛けた「十和田市地域交流センター(とわふる)」は、白壁によって生み出された心地よさと特別感が魅力。

プライベートとパブリック、内と外、建築と自然といった相反する要素の関係性をテーマとしたユニークな建築で知られる建築家・藤本壮介。2025年に開催予定の大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーをはじめ、海外からのオファーも後を絶ちません。そんな藤本壮介が手掛けた文化施設「十和田市地域交流センター(とわふる)」が2022年青森県十和田市に完成しました。

アートによる地域交流を目指す十和田市

十和田市地域交流センターは、“アートのまちのリビング”を設計コンセプトに掲げて建てられた、アートや文化活動を通じた地域交流を目指す拠点施設。

建築が建てられた青森県十和田市はアートを核とした街づくりに注力しており、他にも建築家・西沢立衛が手掛けた「十和田市現代美術館」や隈研吾による十和田市市民交流プラザ「トワーレ」などさまざまなアート・文化施設が軒を連ねるエリア。

参考:アートと街が交ざり合う、建築家・西沢立衛による街に開かれた美術館「十和田市現代美術館」

十和田市現代美術館

URL : https://towadaartcenter.com/
所在地:青森県十和田市西二番町10-9

参考:家型が連なる外観が特徴的な隈研吾設計の十和田市市民交流プラザ「トワーレ」。

十和田市市民交流プラザ「トワーレ」

URL : https://www.city.towada.lg.jp/docs/2015111800027/
所在地:〒034-0011 青森県十和田市稲生町18 稲生町18-33

十和田市現代美術館は、建物の中だけでなく街全体が美術館であるというコンセプトのもと、白い箱がバラバラと散在するような建物になっており、その向いにある広場や、官庁街通り沿いにもアート作品が点在しています。

2008年に十和田市現代美術館、2014年に十和田市市民交流プラザ「トワーレ」の開館以降、近隣の中央商店街沿いにも作品が設置され、街全体が美術館という十和田市現代美術館のコンセプトが南北方向にも広がっていった経緯があります。十和田市はグリッド状の街になっており、十和田市地域交流センターは、街のいちばん真ん中、中心部に建っていると言えます。

現代の遺跡として場の記憶を未来につないでいく

十和田市地域交流センターは箱型の構造。当初真っ白だった外壁には、アーティストの鈴木ヒラク氏による壁画作品「光と遊ぶ石たち」が施されました。作品のコンセプトは、十和田市の近くにある縄文時代に造られた小牧野と大湯という日本を代表する2つの環状列石によるもの。環状列石は、通説として、太陽など天体の動きと向き合う場であり、人々が集う祭祀の場であったとされており、壁画を通して時代を超え、現代で人々が集う交流センターという場所性を象徴しています。

また、タイトルである「光と遊ぶ石たち」の「石」は、環状列石のみならず、宇宙空間に浮かび太陽の光を反射する岩石(=惑星)も意味しています。星の軌道や星座、あるいは日時計などを想起させる線が、石と石をつなぎ、楽しげなリズムを生み出しています。壁画に使われているシルバーは光を反射する鉱物であり、空に開かれた建築と呼応しながら、変化し続ける周囲の環境、天候、人々の思いを映し出し、時間や空間にゆらぎをもたらします。

真っ白な壁が作り出す心地よさと特別性

中へと進むと、屋根のない大きな中庭を取り囲むようにL字型にギャラリーや多目的室、カフェなどが配置されています。

この中庭を中心とした建築のデザインは、藤本の「十和田市現代美術館の建物の中のホワイトキューブと、屋外に点在するアート作品の中間のような場所をつくりたい」という思想からきています。

屋内の展示室と屋外のアートの間に、展示室のような白い箱だけれど屋外でもあるスペースを目指し、壁で囲まれた中庭を中心とした建築が導かれました。

中庭は白い壁で囲まれているため周囲から見てもかなり明るく、そこだけ異世界が入り込んできたかのような印象に。また、中庭からは空しか見えないため、十和田の空と白い壁によって、特別な空間のような印象を与えます。

市民にとって日常の場所であると同時に、どこか異世界につながるような特別な場所を目指し、建築は形作られました。

壁によって生み出された心地よさと特別感が魅力の空間

壁に囲まれることによって、同じ空間で人々が交流する部屋のような機能を持つ一方で、空が完全に開いていることによって、違う世界への繋がりを感じさせる十和田市地域交流センター。内と外に繋がる、中庭を特徴とした地域の人々のための空間です。

十和田市地域交流センター(とわふる)

所在地 : 〒034-0011 十和田市稲生町16番1号
開館時間 : 9:00〜21:00
休館日 : 12月29日から翌年1月3日まで(年末年始)
※ただし、設備の保守点検などの臨時休館あり
公式サイト : https://www.city.towada.lg.jp/shisei/shisetsu/chiikikouryusenta.html