ブラジル・リオデジャネイロにあるサンティアゴ・カラトラバによるダイナミック近代建築「明日の博物館」

2015年12月、ブラジル・リオデジャネイロにリオ五輪開催を控えてオープンした「明日の博物館」。ここは、スペイン人建築家のサンティアゴ・カラトラバ氏による「ダイナミックな近代建築」としても世界中で知られる名スポットの1つだ。

建築家 サンティアゴ・カラトラバ

スペイン・バレンシア生まれの建築家「サンティアゴ・カラトラバ」は、構造エンジニア・彫刻家・画家としても知られる芸術家のような建築家だ。

これまで、スペイン・バレンシアの「芸術科学都市」一帯の近代建築物のほとんどや、ポルトガル・リスボン「オリエンテ駅」などを手がけている。

サンティアゴ・カラトラバによる建築の特徴は、構造デザインを主体にし「クジラや巨大生物の骨格」を思い起こさせるような独特かつダイナミックな造形にある。

構造エンジニアとしての知見のある設計は、厳密な構造計算に基づいており、その巧みな構造による造形で美しいデザインは世界的に高い評価を得ている。

人類のこれまでと未来を考える「明日の博物館」

リオ・デ・ジャネイロの海岸沿い、ブールヴァード・オリンピコというエリアに存在する「明日の博物館」は、2015年にオープンした新しいリオの新名所である。英語で「Museum of Tommorow」という名も意味深な情緒を引き立て、地球や人類のこれまでと未来のことを学ぶことができる。

リオ五輪を控えていた当時、旧市街地活性化のための大規模な都市再生プロジェクトが進められており、「明日の博物館」はその一環でもあった。総敷地3万4600㎡の「マウアー・ピアー」一帯にある明日の博物館は、その内の約1万5000㎡をも占める中心的施設である。

飛び出た肩持ちのパーゴラのような屋根が印象的な外観

パイナップル科の植物「アナナス」からインスパイアされたと言われている独特な外観から、建築本体から飛び出たパーゴラのような屋根が我々を出迎える。

安全性を担保するために風洞実験も行ったという、海上に浮かぶ長さ70mの巨大キャンチレバー。キャンチレバー部分だけでなく、全体がルーバーで覆われ、まるでリオの強い日差しから来場者を守っているようだ。

大きな吹き抜けと巨大な開口部が求心的なエントランス

中に入ると、大きな吹き抜けと巨大な開口部からの光が差し込む、開放的な空間が広がる。カラトラバらしい真っ白の空間で、緩やかに湾曲した壁で囲まれた吹き抜けの中心には、プロジェクションマッピングで投影された地球儀がシンボルのように吊られている。

骨組みのようなルーバーで切り込まれた巨大な開口部は、求心的なデザインが美しい。空間全体もシンメトリックに設計され、教会建築のような神聖な雰囲気をも感じる。

人類のこれまでと未来を学ぶ展示エリア

博物館の展示は「宇宙」「地球」「人新世」「明日」「私たち」の5つのテーマによって分かれており、そのほとんどが中央部に展示されている。展示会場の構造にもこだわっており、インタラクティブな展示も存在する。特に最初に観る360°の映像は圧巻だ。

明日の博物館では「50年後の持続可能性と共生を見据える」をコンセプトに、地球誕生や人類のこれまでの歩みを紹介している。来場者に気候変動・生物多様性や未来のテクノロジーに関して考えてもらうような内容で、展示に使う什器も独特なデザインが多いことも特徴的だ。

外周のスロープ空間は、外の景色を眺め、散歩したりするような落ち着いた機能が続く。ゆるやかなカーブで描いたデザインは、落ち着きの中にも空間を美しく印象付けながら人々の足を前へ前へと進ませる。

海に向かうパーゴラが印象的なダイナミック空間

エントランスと反対側にある海に向かう大きな窓は絶好のインスタスポット。バックには全長13キロメートルの世界最長のリオ・ニテロイ橋が望め、巨大な屋根がキャンチレバーで迫り出す姿はすごくダイナミックである。

海を眺めながら昇り降りする長いスロープは、ルーバーによって抑えられた柔らかな採光を浴びながら歩む時間が実に心地いい。左右の壁が斜めになっていることで迫力も増し、不思議な感覚を持つ。

今にも動き出しそうなフォルムが壮大な近代建築の姿

巨大な鳥が今にも羽ばたきそうな骨格が印象的な「明日の博物館」。そのダイナミックな形状について、カラトラバ氏は「できる限り空気感のある、海に浮いたようなもの」にしたかったという。

しかし、インスパイアをそのまま形として表現するのではなく「施設としての役割」や「未来を見据える重要な場所」として、あるべき姿を追求しながら彼の培った技術によって美しく昇華されていた。

Museu do Amanhã – 明日の博物館

開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜日
URL : http://museudoamanha.org.br
住所:Praça Mauá, 1 – Centro, Rio de Janeiro – RJ, 20081-240 Brasil