横田哲也がシェフを務める埼玉のフレンチ「ウェロニカ・ペルシカ」が建築家・伊藤嘉記の手で土着の記憶を五感で楽しむ贅沢な空間に!
埼玉県入間市・野田に佇む一軒家のフランス料理店「ウェロニカ・ペルシカ」が、2026年6月1日に全面リニューアルオープンを迎えました。創業18年の節目に生まれ変わったこの店が掲げるのは、『武蔵野ジオ・キュイジーヌ(Musashino Geo-Cuisine)』という独自の食概念。1,500万年前の大地の記憶と、半径30km圏内の生産者たちの営みを正統派フレンチの技法で皿の上に表現する、世界にここだけのデスティネーションレストランへと進化を遂げました。
建築家・伊藤嘉記が生み出す「静謐な器」

今回のリニューアルで空間設計を手がけたのは、堀部安嗣建築設計事務所での修業を経て独立した建築家・伊藤嘉記(合同会社NIa一級建築士事務所)です。客席を「3テーブル・最大12席」という極限まで絞り込んだこの空間は、料理と真剣に向き合うための「静かな器」として設計されています。
伊藤嘉記がこの空間に込めたのは、料理と人が静かに立ち上がるための「器」という思想です。光の入り方や素材の質感、音や温熱環境、人の動線まで丁寧に整えながら、余計な輪郭をできるだけ抑えることで、席に座る人が料理とゆっくり向き合える時間を設計しています。一皿から広がる土地の風土が、温かく静かな記憶として残ること——それが伊藤嘉記の願いです。

空間の隅々には、土地との対話が刻み込まれています。家具には隣町・飯能で育まれた「西川材」を使用。テーブルに並ぶ器は、埼玉のガラス作家・塚村剛が時間をかけて融かし出す「キルンワーク」の作品です。素材ひとつひとつが武蔵野という土地の記憶を静かに宿し、建築と料理が一体となった美的な世界観を形成しています。

また、外観のアプローチも今回刷新されました。祖母の代から受け継がれた庭の木々を活かし、駐車場の真ん中にあった梅の老木を移植するなど、大地の物語へと続く緑豊かな前庭の設計を株式会社空庭(カラニワ)の彌永秀一が担当。18年の歩みを刻んだ建物の佇まいはそのままに、訪れる人をゆっくりと非日常へと誘うアプローチが完成しました。
1,500万年の時間を味わう哲学——『武蔵野ジオ・キュイジーヌ』とは

オーナーシェフ・横田哲也は、この地に先祖代々暮らしてきた生粋の「土着の料理人」です。庭の植物や畑の恵みをひとつも無駄にせず使い切っていた祖母の姿が、シェフの料理哲学の原点にあります。プリンスホテル勤務を経て、日本フレンチ界の重鎮・三國清三、そして巨匠・北村竜二のもとで正統派フランス料理の真髄を学んだ後、故郷・入間の地に店を構えてから18年。大量生産・大量廃棄のフードシステムへのアンチテーゼとして、この土地で料理をつくる意味を問い続けてきました。

店舗から北西30kmの秩父山系には、1,500万年前に「古秩父湾」と呼ばれる豊かな海が広がっていたことをご存じでしょうか。太古の海の化石が堆積した古生層を悠久の時をかけてきた地下水「秩父山水」が、すべての料理の根幹をなしています。また、店舗から徒歩数分の湿地帯には、縄文時代から枯れることなく湧き出てきた古生層の泉「谷田(やた)の泉」が今も静かに水を湛えており、シェフはここで季節の山野草のフォレジング(採取)も行っています。

『武蔵野ジオ・キュイジーヌ』は、このような土地の時間軸(縦の深さ)と、半径30km圏内の生産者たちとのつながり(横の広がり)を掛け合わせ、正統派フレンチの技法でひと皿の物語として紡ぐ食の概念です。

例えば、春の定番「ホワイトアスパラガス」は地元農家が育てた「武蔵野のうど」に、高級和牛は入間を代表する「夢味牛(ゆめみぎゅう)」や地域で捕獲された新鮮なジビエへ。さらに鹿のジビエに添えるカシスを、その鹿が山で食べていたであろう「冬いちご」に置き換えることで、食べる人の目の前の風景とつながる一皿へと昇華させてきました。
目に見えない食材まで「地産地消」へ——常在菌のテロワール

ウェロニカ・ペルシカの地産地消は、目に見える食材にとどまりません。埼玉県坂戸市の名店「セラーノ」の無添加生ハムとの出会いをきっかけに、横田シェフは風土が醸す常在菌の存在に着目。地元産の野菜や果物から起こした自家製天然酵母のパン、この土地で発酵・熟成された地元産の味噌など、武蔵野の微生物をも現代フレンチの技法と融合させ、「ミクロな武蔵野のテロワール」を皿の上に表現しています。
土地の記憶が宿るスペシャリテ

今回のリニューアルで誕生したシグニチャー料理のひとつが、『山と海の記憶:鹿のコンソメと鮑(あわび)』です。日の出町の福祉施設で陸上養殖された鮑を、秩父・両神の鹿の骨から引いた力強いコンソメと特製スパイスで仕上げた一皿で、冷製・温製と表情を変えながら提供されます。地元の果物から起こした自家製酵母のパンケーキ、赤ワインとバルサミコで炊いた肝ソースが添えられた、店の思想を凝縮したシグニチャーです。

「鮑のパンケーキ」地元の果物などで起こした自家製天然酵母のパンケーキに鮑を閉じ込め、赤ワインやバルサミコで炊き上げた肝を添え、コンソメバターのソースを後がけ。

もうひとつの名物が、『乾杯のシグニチャー:庭の枇杷を添えたシャンパーニュ』。シェフが幼少期から祖母が大切に育てる姿を見つめてきた店庭の枇杷のコンポートを、厳選したシャンパーニュに合わせた、ここにしかないオリジナルカクテルです。旅の始まりを告げる一杯として、土地の記憶が静かに身体に染み渡ります。

さらに、日本茶インストラクターでもあるマダム・横田英理子による『武蔵野ティーペアリング』(事前予約制)も見逃せません。地元・狭山茶を中心に、同じ秩父水系の地下水で育まれた茶葉の個性を引き出しながら、一皿ごとに大地のニュアンスを引き立てる特別な一杯を提案します。お酒を飲まれない方も、料理と同じ深さで武蔵野の風土を感じることができます。
食体験の全体像をデザインするクリエイティブディレクション
今回のリニューアルでは、コンセプト設計とクリエイティブディレクションを巽奈緒子(株式会社グッドステップス)が担当しました。1年以上にわたる横田シェフへの綿密なインタビューを重ね、18年間の蓄積を整理・言語化した上で、予約の動線からテーブルセット、グラフィックツール、コンセプトブックにいたるまで、ゲストが自然と世界観へ没入できる舞台裏をデザインしています。
ウェロニカ・ペルシカ(Veronica persica)
Instagram:@veronica_persica_in_japan
URL:http://veronicapersica.com
住所:〒358-0054 埼玉県入間市野田653