5つの美しい美術館を含む、青森県にある有名建築家が手掛けた美しい建築作品10選。

本州北部に位置し、世界自然遺産の白神山地をはじめ、十和田湖や八甲田山など、大自然の絶景を堪能できる名所で知られる青森県。そんな自然豊かなイメージの強い青森県ですが、2020年に「弘前れんが倉庫美術館」、2021年に「八戸市美術館」、そして2022年に十和田市地域交流センター「とわふる」がオープンしたりと、実はさまざまなアートや建築も楽しめる文化的なスポットでもあるのです。今回は青森県で注目の建築10選をご紹介します。

1.青森県立美術館/青木淳

2006年に開館した「青森県立美術館」。設計は建築家・青木淳によるもので、隣接している三内丸山縄文遺跡の発掘現場から着想を得てデザインされました。

上向きに凸凹した大地の切れ目(壕)に、白い箱がかぶさる構成で、独創的な空間となっています。美術館建物の外壁は煉瓦にアクリルシリコン塗装を施すことで、耐久性・防汚性を高めています。

展示室は地下2階と地下1階からなり、常設展示室は1作家1部屋とし、多様な青森県出身の作家の扱いに差がでないように配慮されています。

展示機能以外の、コミュニティギャラリー、スタジオ、ワークショップ、レストランなどへのエントランスとなるコミュニティホールは、その機能から四面同じ建具とアーチ窓の仕上げとし、そこから四方に広がる各部屋へアクセスできるようになっています。エントランスのネオンサインや、館内のロゴデザインなどは、アートディレクター・菊池敦己が手掛けており、シンプルなデザインで統一されています。

参考:建築家・青木淳による縄文遺跡の発掘現場に着想を得た「青森県立美術館」が豊かな自然に育まれた芸術風土を発信する

青森県立美術館

所在地:青森県青森市安田字近野185
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:毎月第2、第4月曜日 (この日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始
料金:一般 510円 / 大学・高校生 300円 / 中学生以下 100円
電話番号:017-783-5244
URL : https://www.aomori-museum.jp/
アクセス : 青森市営バス6番バス停から三内丸山遺跡行き「県立美術館前」下車

2.青森公立大学 国際芸術センター青森/安藤忠雄

「青森公立大学 国際芸術センター青森」は、国内外のアーティストを招聘し、一定期間滞在しながら創作活動を行うアーティスト・イン・レジデンス・プログラムと、展覧会、教育普及を3つの柱に推進する施設として、2001年に開館しました。設計は建築家・安藤忠雄。

周囲の起伏に富んだ自然環境を壊さないように配慮し、建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとした建築は、谷沿いに橋が架かるようなイメージの直線型の創作棟と宿泊棟、さらにギャラリーや円形の屋外ステージを備えた馬蹄型の展示棟の3棟から構成されています。

ここでは時代を担う新たな芸術環境の場として、さまざまな芸術創作や鑑賞の機会を提供するとともに、アーティストと学生や市民との多様な交流を図りながら、地域独自の新しい芸術文化を作り上げることを目指しています。

また、春から秋にかけては敷地内の森の散策や、20数点を数える野外彫刻の鑑賞も楽しむことができます。

参考:建築家・安藤忠雄による青森の自然を取り込み創造へ導く空間「国際芸術センター青森」

国際芸術センター青森

所在地:青森県青森市合子沢字山崎152-6
開館時間:10:00〜18:00 ※展覧会は、10:00~18:00 ※ラウンジは、9:00~19:00
定休日:不定休
電話番号:017-764-5200
URL : http://www.acac-aomori.jp/

3.十和田市現代美術館/西沢立衛

青森県十和田市が推進するアートによるまちづくりプロジェクト「Arts Towada」の拠点施設として2008年に開館した「十和田市現代美術館」。

設計は妹島和世とともに建築家ユニットSANAAを主宰する西沢立衛。国内外で活躍する22人のアーティストによる常設と市民活動スペースから構成されており、個々の展示空間を「アートのための家」として独立させ、それらを約4000㎡の美術館の敷地内にガラスの廊下で繋いだ構成となっています。

建築は鉄骨造で、外壁にはガルバリウム鋼板を使用。ガルバリウム鋼板は平滑葺きのため、部分的な主張は弱く、1つのボリュームとしてまとまった印象を受けます。

建築の内外の展示物は通りからも鑑賞できるようになっており、通りを歩いているだけで、街そのものが美術館のように感じられ、街とアートの一体感を感じられます。

また、外から外部展示や建物内のアートを楽しめるだけでなく、建物内から見ても街と一体となったような印象を受けるのも特色のひとつです。

参考:アートと街が交ざり合う、建築家・西沢立衛による街に開かれた美術館「十和田市現代美術館」

十和田市現代美術館

所在地:青森県十和田市西二番町10-9
開館時間:9:00〜17:00(最終入館 16:30)※cube cafe&shopも同様(カフェラストオーダー 16:30)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は、その翌日)、年末年始
料金:一般 1800円(企画展閉場時:1000円)、高校生以下 無料
TEL:0176-20-1127
Web:https://towadaartcenter.com/
アクセス : 十和田観光電鉄バス「八戸駅」東口⑤から乗車、「官庁街通」バス停下車、美術館まで徒歩5分

4.弘前れんが倉庫美術館/田根剛

建築家・田根剛が設計を手掛け2020年に開館した「弘前れんが倉庫美術館」。建築の大きな特徴は、明治・大正期に建設された元シードル工場「吉野町煉瓦倉庫」を改修した煉瓦造りの建築です。

「記憶の継承」をコンセプトに、できるかぎり煉瓦倉庫の素材を活用し、その姿をとどめることを前提に改修が行われました。建築は、美術館棟とカフェ棟の2つから構成されており、その周囲を芝生の広場が囲む開放的なミュージアムとなっています。

老朽化した屋根は、シードルをイメージした「シードル・ゴールド」のチタン製菱葺屋根で覆うことで、シードル工場としての記憶を次世代へと継承することを目指しています。

展示室では、既存の壁に塗られていた古いコールタールを、毒性などを検証したうえでそのまま取り入れることで、重厚感ある雰囲気を生み出しています。

参考:100年の歴史を持つ煉瓦倉庫を延築!建築家・田根剛による初の国内美術館建築「弘前れんが倉庫美術館」

弘前れんが倉庫美術館

所在地:青森県弘前市吉野町2-1
開館時間:9:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで、カフェ・ショップは9:00〜22:00
休館日:火(祝日の場合は翌日)
料金:一般 1300円 / 大学・専門学校生 1000円 / 高校生以下、弘前市内の留学生、満65歳以上の弘前市民は無料
電話番号:0172-32-8950
URL : https://www.hirosaki-moca.jp/
アクセス : 「弘前駅」徒歩20分 タクシー 7分 弘南バス100円バス(土手町循環)乗車、弘前駅中央口バスのりば「D100番」より乗車9分、「蓬莱橋」下車・徒歩5分

5.八戸市美術館/西澤徹夫、浅子佳英、森純平

1986年に開館し、老朽化などを理由に2017年に閉館した「八戸市美術館」が、2021年に全面建て替えを経てリニューアルオープン。設計を手掛けたのは、プロポーザルで選定された、建築家・西澤徹夫と浅子佳英。

地上3階建ての建築は、主に2種類の空間によって構成されています。エントランスを入ってすぐ目の前に広がる、約17mの天井高を持つ「ジャイアントルーム」は、それぞれの展示室を自由に行き来できるハブのような空間。さらに、9mの高さに設置されたワイヤーでアート作品を飾ったり、可動式の棚やカーテンで空間を区切ったりと、さまざまな用途に対応できるフレキシブルな空間です。

一方の、異なる機能に特化した「個室群」は、これは、「多様なプログラムに対応できる複数の部屋で展示空間を構成できないか」といった浅子の視点から生み出されたアイディア。映像作品の映写に適した暗い個室や、光に弱い日本画の展示を想定したグレーの壁の個室など、多様な作品のスタイルに合わせた展示空間となっています。

参考:人とまちを育む”出会い”を生み出す空間。建築家 西澤徹夫、浅子佳英・森純平のチームによる「八戸市美術館」

八戸市美術館

所在地:青森県八戸市大字番町10-4
開館時間:10:00〜19:00
休館日:火曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
料金 : 展覧会により異なる
TEL:0178-45-8338
Web:https://hachinohe-art-museum.jp/
アクセス : JR東北新幹線で「東京駅」から約3時間、「新青森駅」から約30分、「八戸駅」下車。「八戸駅」からJR八戸線で約10分、「本八戸駅」下車。徒歩約10分。

6.十和田市民交流プラザ「トワーレ」/隈研吾

2014年にオープンした建築家・隈研吾設計の十和田市市民交流プラザ「トワーレ」。中央公民館、老人福祉センター、ふれあい会館、総合福祉センターなど、それまであった4つの既存施設を統合し、十和田市民の活動拠点や中心市街地活性化のために作られた施設です。

切妻屋根の家型が連なるユニークな外観が特徴的で、官庁街通りと交わる奥州街道沿いの通りからも、非常に印象的な建築として際立っており、独特の存在感を放っています。建築自体の高さが周囲の建物と合わせて作られているうえ、小さな屋根が反復するファザードによって、住宅が並ぶ既存の街並みとの融合が図られています。建築に使用された木材は、地元青森県の間伐材を利用しています。

内部は、十和田の中心街を延長した路地のような空間となっており、市民活動のための諸室が配置されています。自由に出入りできるホールから諸室の様子が伺うことができ、開かれた空間となっています。そのほか広場や細くくびれたエリアがあったりと、空間に変化があるため、歩くだけでも楽しめる建築です。外観と同じような天井の木のルーバーやプリーツ状の布地の壁面、間接照明によって、内部も柔らかく居心地が良い空間となっています。

参考:家型が連なる外観が特徴的な隈研吾設計の十和田市市民交流プラザ「トワーレ」。

十和田市民交流プラザ・トワーレ

所在地:〒034-0011 青森県十和田市稲生町18 稲生町18-33
開館時間:9:00~21:00
休館日 : 12月29日から翌年1月3日まで(年末年始)※ただし、設備の保守点検などの臨時休館あり
TEL:0176-58-5670
WEB : http://www.city.towada.lg.jp/docs/2015111800027/
アクセス : 「十和田市中央」から徒歩で3分

7.十和田市民図書館/安藤忠雄

建築家・安藤忠雄が設計を手掛け、2014年にオープンした「十和田市民図書館」。図書館と教育研修センターからなる総合施設です。「これからの地方都市の最重要課題は人材育成」という信念のもと、十和田の美しい自然と調和する”新しい教育の場”を目指し建てられました。

この建物の顔とも呼べるのが、施設内に5つ設けられたサンルーム。多様な用途に対応できるこの空間によって、さまざまな人々が出会い、コミュニケーションを始めるきっかけを生み出します。「世代、立場、考え方を越えて対話するときに生まれる、気づきや感動といった、活字にならない情報こそが、これからの時代に必要な「考える力」や、「尊重しあう心」を養う糧となる」という安藤の想いが込められています。

十和田市民図書館

所在地 : 〒034-0081 青森県十和田市西十三番町2-18
開館時間:9:00~20:00
休館日 : 毎月第4木曜日、年末年始、蔵書点検期間
電話:0176-23-7808
WEB : http://www.towada-lib.jp/index.html
アクセス:JR「七戸十和田駅」より車で約25分。

8.弘前市民会館/前川國男

Via : Wikipedia.

建築家・前川國男が設計を手掛け、昭和39年に開館した弘前公園三の丸の一角に位置する「弘前市民会館」。大ホールは優れた舞台芸術を鑑賞する文化施設として、また各種会議室は、研修会・講習会などの市民の文化活動やコミュニケーションの場として広く利用されています。平成26年1月にはリニューアルオープンし、前川建築としてのクオリティを維持しながらも、内装や設備の全面更新とともに、時代の要請や利用者ニーズに合わせたアメニティーの向上が図られました。

また、同年11月には開館50周年記念として、弘前市出身で日本を代表する洋画家・佐野ぬい氏の原画を基に制作したステンドグラス作品「青の時間」が、同管理棟ロビーの窓に設置されました。

弘前市民会館

所在地 : 〒036-8356 青森県弘前市下白銀町1-6
開館時間:9:00~22:00
休館日 : 毎月第3月曜日(月曜日が休日の場合、翌日)
電話:0172-32-3374
WEB : http://www.city.hirosaki.aomori.jp/shiminkaikan/
アクセス : JR奥羽線「弘前駅」下車、弘前駅前またはイトーヨーカドーバスターミナルから15分

9.しもきた克雪ドーム/原広司

Via : Wikipedia.

建築家・原広司が手掛けた「しもきた克雪ドーム」。2005年に開館したこちらは、スポーツの振興、市民交流と豊かな市民生活の形成、さらに冬期間の屋外での活動に大きな制約を受けていたこの地域を活性化する施設として建てられました。

建築は一辺108cmの正方形プランの回路建築の上に、高さ45mの「平均曲率一定」の曲面を架けたコミュニティユースのドームとなっています。これに付随するセンターハウス棟には、プールとジムがあり、ドームの管理部門や更衣室があります。

ドームの曲面は、正方形のフレームに、石鹸膜や薄いゴム膜を張り空気を送り込んだ時にできる形で、力学的には「等張力曲面」として知られており、軽やかな印象を与えます。膜は二重で、外膜はテフロン。内膜は頂部に透光率の高い材料を用い、下部では透過性にやや欠ける材質をあてています。外膜には、多くの換気窓があり、回廊のガラスジャロジーと呼応して、夏や好シーズンの室内気候を調整できます。

また、二重膜の間の空気層は、日照がある時にはドーム頂部の融雪に機能し、必要時には温風を送り込むこともできます。外膜下部は、高さ4mまでステンレスシームレスの立ち上がりを持って積雪時の防水上の納まりに備えています。内膜には、換気窓に対応する孔を水平に並べ、本来の換気の機能と合わせて、さまざまな使用上のモードに合わせる照明を設置しています。

しもきた克雪ドーム

所在地 : 〒035-0075 青森県むつ市真砂町8-8
開館時間:9:00~21:00
休館日 : 毎週木曜日と年末年始(12月29日~1月1日)
電話:0175-28-4341
WEB : https://www.wellness-park.jp/facilities/
アクセス : JR五能線「五所川原駅」から 徒歩21分

10.十和田市地域交流センター「とわふる」/藤本壮介

2022年の9月にオープンした十和田市地域交流センター「とわふる」は、藤本壮介の設計による新しいスポット。十和田市現代美術館のある十和田市の官庁通りと連続する場所に建ち、美術館の白い箱のイメージを踏襲していることもあり、藤本壮介らしく真っ白で抽象的な建築。

「アートのまちのリビング」がコンセプトの「とわふる」は、建築面積の1/3を占める白い外壁に囲まれた中庭が非常に特徴的。街や市民に対して開かれた中庭が、大きな青空を切り取り、縁側のようなオープンスペースを作り出します。

十和田市地域交流センター「とわふる」

所在地 : 〒034-0011 青森県十和田市稲生町16-1
開館時間:9:00~21:00
電話:0176-51-3201
WEB : https://www.city.towada.lg.jp/shisei/shisetsu/chiikikouryusenta.html

厳しい自然と共生する力強い作品たち

豊かな自然と共存する、機能性とデザインの両面に優れた建築が多くみられる青森県。建築家それぞれの、自然環境への工夫が見られる個性的な建築をめぐる旅も魅力的なエリアです。