ニューヨーク・SOHOらしい”新しいアート、新しいアイディア”がコンセプトのSANAAによる「ニュー・ミュージアム」

「金沢21世紀美術館」のデザインで知られる建築家ユニット・SANAA。曲線やガラスなどを用いた、開放感があり周囲の環境に溶け込むような建築を数多く手掛け、国際的に活躍しています。そんなSANAAによる現代美術のミュージアムがニューヨークにあります。現地の建築規制をうまくクリアしながら、ところどころに設けられたトップライトによる自然光が心地よい、SANAAらしい透明感のある建築です。

建築家・妹島和世と西沢立衛のユニットSANAAとは

SANAAは建築家・妹島和世と西沢立衛によって1995年に設立された日本の建築家ユニット。名称は「Sejima and Nishizawa and Associates」の略。大胆な空間の形式やガラスを多用したファサードのデザインを特徴とし、開放的なデザインは国内外で高い評価を得ています。「金沢21世紀美術館」(2004)やルーヴル美術館別館の「ルーヴル・ランス」(2012)といった様々な建築を手掛けるほか、展覧会や家具のデザイン、空間構成など幅広く活動しています。

ランダムなメッシュが軽やかさを演出

ニューヨークのマンハッタンのバワリー地区、いわゆるSOHOに建つ、現代美術専門の美術館。10年ごとにコレクションを入れ替えるという試みをすることで、常にその時々の「現代アート」にフォーカスしています。外壁はアルミのエキスパンドメタルメッシュで覆われ、いわゆる一般的な工業製品でありながらもメッシュの大きさを変えることで、エリア特有のラフさを残しつつ、奥行感や透明感のある柔らかな雰囲気を生み出しています。

積み上げた箱の隙間から差し込む光が美しい建築

建築は、箱を不安定に積み上げたような構成で8フロアが展示室になっています。これは、設計にあたり、はじめにギャラリー、ロビー、多目的ルーム、シアター、オフィスなど広さや高さなどが異なる諸室に対して、それぞれに合わせたプロポーションのスペースを用意し、それらをニューヨークの斜線制限に従いながら前後左右にずらしながら重ねていったことでたどり着いたデザインです。

1階は、エントランスホールは通りに面してガラスで覆われ、奥のギャラリーの展示を通りから見ることができます。

同フロアにはミュージアムストアとカフェエリアが配されており、カフェの天井も外壁と同じくエキスパンドメタルメッシュを採用することで空間に緩やかな統一感を与えています。

アルミのテーブルやカウンターのほか、1階にあるインテリアもSANNAによるものです。カフェの椅子はSANNAのRabbit USAほか、ジャスパー・モリソンの椅子、バワリーの近くで手に入れたものなどが配置されています。

ニューヨーク・SOHOらしい展示空間

2階、3階、4階には、従来の美術館で多く見られるホワイトキューブとは異なり、構造体や照明、空調ダクトなどが露出した個性的な空間をトップライトからの光によって照らしたギャラリースペースが配されています。

天井はポリカーボネードで作られているため、トップライトから取り込んだ光が時間によって移り変わり、夜は光が溢れます。

モルタルに鉄骨表しの高い天井などSOHOらしい空間性を持った展示室です。

ニューヨークらしい現代アートを展示

展示されているアートもニューヨーク、SOHOらしい若手作家による現代アートが多く見所がいっぱいです。

作品自体もパワーを感じるものが多く、若手の作家を発掘する場所だったSOHOそのものにも思えてきます。

アウトサイダーアートのような作品が自然に思えてしまうのもニューヨーク・SOHOならでは。

階を上がっていくに従い、クライスラー・ビルディングやブルックリン・ブリッジなどの周囲の建築が視界に入り、最上階のスカイルームと呼ばれる展望室からはマンハッタンの街並みを一望することができます。

都市とアートを緩やかに繋げる、柔らかな空間

街との親和性を保ちつつ、大きさの異なる穴を持つアルミエキスパンドメタルメッシュが、季節や時間など移り変わる光の状態によって様々な表情をもたらす「ニュー・ミュージアム」。箱を開きながら積み重ねることで、都市とアートが繋がるような美術館となっています。

New Museum – ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート

所在地:235 Bowery, New York, NY 10002 USA
開館時間:11:00~18:00(木曜日~21:00)
休館日:月曜日
入館料:$18
URL : https://www.newmuseum.org