経済評論家、上念司氏インタビュー「購入か賃貸か?住まい選びの新基準」とは?

日銀のマイナス金利導入による住宅ローン金利低下など「住宅は今が買いどき」と言われるなか、各種税金・手数料の負担や資産価値の低下、多額の修繕費発生など持家のリスクに関する指摘も多い。「持ち家か賃貸か」というテーマはこれまで多くのマスメディアでも取り上げられている。

そこで今回は、『家なんて200%買ってはいけない!』(きこ書房)著者の経済評論家、上念司氏に今後の「購入か賃貸か?住まい選びの新基準」と「現代社会だからこその家選びのポイント」についてお話を伺った。

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【上念司】経済評論家。中央大学法学部卒。大学卒業後に日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年より経済評論家の勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立し、取締役・共同事業パートナーに就任。2010年、米国イェール大学の浜田宏一名誉教授に師事し薫陶を受ける。積極的な評論、著述活動を展開。主な著書に『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)『日本は破産しない!』 (宝島社)『「日銀貴族」が国を滅ぼす』(光文社新書)『経済で読み解く大東亜戦争』(ベストセラーズ)『高学歴社員が組織を滅ぼす』(PHP研究所)『家なんて200%買ってはいけない!』(きこ書房)ほか多数と多方面で活躍している。

 

ー家を買うべきか借りるべきか上念先生はどうお考えになりますか?

「家なんて200%買ってはいけない」んですね。

なぜかというとロバート・キヨサキ著の「金持ち父さん、貧乏父さん」という有名な本を読んでいただくと分かりやすいのですが、金持ちはお金を出して資産を買います、貧乏人はお金で負債を買います。

マイホームが資産か負債という問題ですが、大抵は負債です。
負債とはお金を出してそれを買うことによって、お金が出ていってしまう事を指します。

マイホームの場合は何千万もかけて買いますよね?買った上で維持費・固定資産税・都市計画税・金利もかかり、ローンの手数料もかかる。お金が沢山出てゆく。これは基本的に負債なんです。なので、なるべく家は借りた方がいいと僕は思います。理由は資産ではないからです。

家なんて200%買ってはいけない著書「家なんて200%買ってはいけない」

ーよくよく考えれば一般の方もわかると思うのですが、それなのに日本は持ち家信仰が強いと思いますがそのことについてどう思われますか?

おそらく持ち家信仰があるんですね。子供の頃から物凄く刷り込まれているんです。

斯く言う私も、実は持ち家信仰を刷り込まれていまして、なんと29歳の時に4000万もの借金をして家を買ってしまったんです。その家を3年半後に売った時は1000万ほど大損しまして、その時「家なんて二度と買うか!」ということで勉強し、資産は買っていいけど負債は買ってはいけないんだなと気がつきました。

あと、30年前ぐらいまでは人口が増えて土地の規制が多く、なかなか土地が買えなかったという時代ですよね。ところが今は人口も少し減り始め、かつ土地の規制も緩くなり一等地に高層マンションが立ち並び、何十倍にも家は増えていきます。少し考え方を変えていかないと昔のようにはいかないと私は思います。

ー昔は家を買うのが当然だったと思いますが、「現代社会だからこそ」どういった考え方で家選びをすればいいのですか?

〝住む為の目的〟を考えて選ぶといいと思います。

どこに住むかというのは、目的によって変わってきます。例えば、お金持ちになりたかったら、お金持が住むエリアに住んだ方がいい。それについて書かれてる「年収は住む場所によって決まる」という経済学者のエンリコ・モレッティとう方の有名な本がありますが、住む人の年収によって住む場所は決まってくるんです。東京だと、港区や中央区、千代田区などに住むとお金持になれる「かもしれない」。

家が職場に近い、持病があって病院が近い、拘りのある地域だからなど、特別な理由がある場合は別として「家が資産だから」という思い込みだけで多額のローンを組んで購入するのは大変危険です。

 

ーマンションなど賃貸に住んでる方が「家賃が出ていくだけで財産にならない」という話を耳にするのですが、そう思うのはどうしてでしょうか?

それは思い込みが強いと思います。本当に家を買うことに資産価値があるかどうかは、30年後にその家にどれくらいの資産価値があるかです。

例えば都心の高層マンションを購入したとしても、年々建物は傷んでいきますので、時間がたてばたつほど10年ごとの大規模修繕とそのための修繕積立金がかさみます。払える人が住んでるうちは良いのですが、年を取って払えなくなったり、子供が居つかず、共益費・修繕積立金も集まらない可能性もあります。また、建物自体が古くなり住む場所として大変危険です。

建物が古くなったら引っ越せ、ライフステージに合わせてチェンジしていける点では賃貸は良いのではないでしょうか。

 

ーでは、上念先生は完全に賃貸派ということでしょうか?

はい。完全に賃貸派です。

ー賃貸派としてなぜ賃貸を選ぶか、また昔の賃貸と今の賃貸の違いについてはどうお考えになりますか?

昔は買う為の家優先で造られていましたが、現在では10年間のデフレや人口減少の影響を受けてかなりマンションなど住宅が余ってきました。

元々は分譲で売っていたものが賃貸で出でいたりと、探せば立地条件や間取りのいい物件が増えてきています。更に言うと、賃貸の競争が激しくなってきているので、更新料なしの物件など賃貸物件の価格破壊がおこっています。昔は賃貸用に作った物件はシャビーなイメージがありましたが、今は賃貸用に作った物件も安くてお洒落でいい物件もあるのでチャレンジしてみてみる価値はあると思います。

 

ーでは、もっと賃貸に住むならきちんと情報を調べて、考えて選んだほうがいいという事ですね。

そうですね。先ほども申し上げましたが〝住む為の目的〟を考えて選ぶといいと思います。

更にいうと家賃が損だと言いますが、私は「家なんて200%買ってはいけない」という本で、実際に家賃とローンを払うことをシュミレーションしました。家賃を払うことと、ローンの最大の違いはローンは払い続けないといけませんが、家賃は払えなくなったら安い所に引っ越して住むことができます。

また、家を購入した場合、金利を払わなければなりません。例えば約3000万の分譲マンションを買ったとしたら約4500万くらいの金利を返さなばいけない。賃貸は金利を払う必要がありません。物価が上がれば家賃が上がる可能性はありますが、物価が上がる時はお給料も上がります。事実的な負担は少なく、トータルで払う金額を考えると賃貸も分譲も大きな差はありません。

 

と、語る上念氏。

 

次回は、「それでももし家を購入するなら?」といった観点からお話を伺う。

次回 : 経済評論家、上念司氏インタビュー「現代社会だからこその家選びのポイント」とは?