家族の気配がやさしく交差する——「音と光の間」が生む、ずっと家に居たくなる暮らし

熊本県人吉市に完成したこの平屋には、家族の暮らしへの深い思いが込められた「ステージ」という名の特別な場所があります。

音楽と光が交わるステージが、この家の中心にある

LDKの一角に設けられたそのスペースは、床が120mm高くなった小さなプラットフォームです。バイオリンが趣味の旦那様のために計画されたこの場所は、単なる趣味のスペースにとどまらず、お子様の学習コーナーや読書スペースとしても機能します。ステージに腰を下ろすと、棚板が壁面に並び、本や楽譜、小物を飾ることができます。勾配天井のハイサイドライトから差し込む光が、ステージの上にやわらかく落ち、演奏する人を包み込むように照らします。

この住まいのコンセプトは「音と光の間」。境界線いっぱいに建てられたことで、側面の窓から外の眺望を楽しんだり、カーテンを開けて生活したりすることが難しい環境にあります。だからこそ建築家は、勾配天井からの採光という手法を選び、光を上から室内へと招き入れました。時間の流れとともに変化する光の表情が、LDK全体に時間のリズムをもたらしています。

勾配天井が生む開放感と、暮らしを彩るインテリアの調和

LDKは約19.9畳の広さを誇り、リビング・ダイニング・キッチンがひとつながりの空間として計画されています。床に敷かれたオーク材のフローリングが空間全体を温かく包み、グレーを基調としたキッチンキャビネットや背面の収納壁が、凛としたモダンなアクセントを加えています。

キッチンはアイランド型を採用しています。コンクリート調のグレーのキャビネットに、白いワークトップを組み合わせた仕様で、黒いレンジフードが空間を引き締めています。背面の壁面収納は木天板のカウンターと可動棚で構成され、料理道具や食器のほか、お気に入りの雑貨や植物を飾るディスプレイスペースとしても機能します。キッチンに立つと、ダイニングテーブルとステージが見渡せる位置関係になっており、家族全員の様子を自然に確認しながら料理ができます。

LDKからステージのある空間を見渡すと、高さの変わる天井がゆるやかに立ち上がっていく様子が一望できます。天井の高い部分に設けられたハイサイドライトは、直射日光を避けながら柔らかな光を室内に届けます。朝の光、昼の光、夕暮れ時の光、それぞれが異なる表情を見せ、同じ空間にいながら時間の流れを豊かに感じさせてくれます。

プライベートゾーンも、機能と居心地を両立

主寝室は、ウォークインクローゼットと隣接した使いやすい配置です。WICはハンガーパイプと棚板を組み合わせた充実した収納で、夫婦の衣類をすっきりと整理できます。寝室に面した縦長の窓からは外光が差し込み、プライバシーを確保しながらも明るい空間を実現しています。

子供室は2部屋が設けられており、将来の間仕切りに対応できる柔軟な設計となっています。現在はオープンな空間としてつながっており、広々と使うことができます。壁面にはニッチ状の収納が造り付けられ、子どもたちの本や小物をすっきりと収めることができます。縦長のスリット窓が上部に設けられており、外の光を室内に取り込みながらも、周囲からの視線を遮る工夫がなされています。

洗面脱衣室は、グレーのタイル床と白い壁が清潔感のある空間です。造り付けの洗面カウンターには存在感のあるグレーのボウルが設置され、三面鏡の収納キャビネットが実用的に機能します。洗面室からランドリースペース、浴室へと一直線につながる動線は、毎日の家事をスムーズにこなせるよう設計されています。

玄関には広いシューズクローゼットが設けられており、コンクリート仕上げの土間と可動棚を組み合わせた収納スペースが、家族の靴や外出用品を余裕をもって収めます。玄関からLDKへと視線を向けると、斜めにカットされた壁面の向こうに明るい空間が広がり、帰宅のたびに気持ちのよいシークエンスが体験できます。

昼と夜で変わる外観——静けさの中に宿る豊かさ

昼間は落ち着いたダークグレーの外観が周囲にたたずみ、夜になると室内のあたたかな灯りが縦長の窓やテラスの開口部からにじみ出るように輝きます。閉じているようで、光を通じて外とつながっているこの住まいの姿は、建築家が込めたメッセージをそのまま体現しています。

家族の気配がやさしく交差する住まい

外とのつながりが難しい環境だからこそ、光と音の広がりを生み出す勾配天井のLDKの空間で、家族の気配がやさしく交差する、ずっと家に居たくなるような住まい。与えられた制約の中から最大限の豊かさを引き出した、ご家族の「らしさ」が詰まった住まいです。