テレワーク終焉?出社回帰の波が賃貸市場を動かしている。戸建賃貸の立地選びはどう変わるか?

「どこに住んでいてもいい」というテレワーク全盛の時代は、静かに終わりを迎えつつあります。2023年頃から出社比率を高める企業が増え始め、2025年にはこの出社回帰の流れが国内外でひとつのトレンドとなりました。リモートワークを前提に郊外や地方へ移り住んだ世帯が都市部への引っ越しを検討し始める一方で、通勤と住環境の両方を妥協せずに求める世帯が賃貸市場に新たな需要を生み出しています。この働き方の変化は、戸建賃貸住宅の立地選びにも影響を与えています。「どこに建てるか」という問いに対する答えが、コロナ禍とその後では変わりつつある今、改めて戸建賃貸投資における立地の考え方を整理してみましょう。

出社回帰とは何か、賃貸市場にどう影響するか

出社回帰とは、コロナ禍以降に急速に広まったリモートワークから、オフィスへの出社を再び求める企業の動きを指します。2025年に入り、国内外の大手企業を中心に週3〜5日の出社を義務化する動きが広がり、「リモート前提」という働き方の前提が崩れはじめています。この変化が賃貸市場に与える影響は二重の構造を持っています。ひとつは、郊外や地方に移住したものの出社義務が増えたことで、通勤圏内への転居を余儀なくされる世帯の増加です。もうひとつは、テレワーク期間中に「広さや自然環境」を優先していた住まい選びの軸が、再び「通勤利便性」へと引き戻される動きです。都心回帰と郊外需要の継続という一見矛盾する動きが同時に進行するなかで、「通勤可能な距離感のある郊外」という立地条件が、ファミリー向け戸建賃貸にとって最も需要を取り込みやすいゾーンとして浮上しています。

「週3出社」時代が生む新しい住まいの条件

出社回帰の波といっても、コロナ前のような週5日フル出社に戻る企業ばかりではありません。週3日程度の出社とリモートを組み合わせたハイブリッド型の働き方が、多くの企業での新しいスタンダードになりつつあります。週3日程度の出社であれば、通勤時間が多少長くなっても許容できるという世帯が増えており、「都心まで電車で40〜60分の郊外エリア」への需要が底堅く維持されています。この層が求めるのは、通勤できる利便性と、帰宅後や在宅勤務日に快適に過ごせる広い住空間の両立です。都心に近いが家賃はやや抑えられ、かつ広いLDKと庭・駐車スペースを備えた戸建賃貸住宅は、まさにこのニーズに応える住まいです。テレワーク全盛期の「どこでもいい」から、出社回帰後の「通える距離で広い家」へ。この軸の変化が、郊外の戸建賃貸住宅への需要を安定的に支える背景となっています。

立地選びで意識すべき「駅からの距離」の考え方

出社回帰の時代における戸建賃貸住宅の立地戦略で、改めて重要になるのが「駅からの距離」です。テレワーク全盛期には駅からの距離よりも広さや自然環境が優先される傾向がありましたが、出社頻度が戻るにつれて通勤利便性への評価が再び高まっています。戸建賃貸住宅は集合住宅と異なり、ある程度まとまった土地が必要なため、駅の近くに建てることが難しいケースもあります。しかし、駅徒歩圏内でなくても、自動車でのアクセスが良いエリアや、バス路線が充実しているエリアであれば、通勤への許容度が高いファミリー層の需要を取り込めます。重要なのは「絶対的な距離」よりも「通勤先へのアクセスの実感」です。複数の主要駅や複数路線へのアクセスが可能なエリア、高速道路のインターチェンジに近いエリアなど、通勤手段の多様性を確保できる立地であれば、入居者層の幅は広がります。

「生活圏としての魅力」が長期入居を支える

出社回帰が進む時代でも、在宅勤務の日数はゼロになるわけではありません。週に数日は自宅で過ごす時間が生まれるなかで、職住近接だけでなく「生活圏としての環境の良さ」が住まい選びの重要な要素であり続けます。子育て環境の充実度、スーパーや病院などの生活利便施設の充実、治安の良さ、近隣とのコミュニティ感覚。こうした要素は通勤のしやすさと並んで、ファミリー層が賃貸住宅を選ぶうえで長く重視してきた軸です。特に子育てしやすい環境が整備され、転入者が増加しているエリアでは地価上昇が続いており、賃貸需要の底堅さも確認されています。戸建賃貸住宅の立地選びにおいて、通勤利便性と生活環境の両方を高い水準で確保できるエリアを選ぶことが、入居者に長く選ばれる物件づくりの出発点になります。

賢い賃貸投資の方向性

出社回帰の波は、「どこに住んでも働ける」という時代の終わりを告げています。しかし同時に、ハイブリッドワークの定着によって「通勤できる距離で、広くて快適な家に住みたい」というニーズは以前より強まっています。この変化を正確に読み取り、通勤利便性と生活環境の両方を備えたエリアに戸建賃貸住宅を構えることが、出社回帰の時代における賢い賃貸投資の方向性です。