建築家・島田陽が手がけた、周囲の環境を取り込み、地域と共存する「石切の住居」

建築家・島田陽は1972年 兵庫県神戸市産まれ。1997年に京都市立芸術大学大学院卒業。同年にタトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所を設立。「六甲の住宅」でLIXILデザインコンテスト2012金賞、第29回吉岡賞受賞。今回紹介する「石切の住宅」では日本建築設計学会賞大賞を受賞している。

建築家・島田陽の建築論

建築家・島田陽が建築設計において最も重要だと考えていることは、家が建つことによって、街が少しでもよくなるという点。建築設計は究極的には”敷地を愛する方法を見つけること”と述べている。石切の住居の設計では、敷地のことを一番に考え、敷地と住居が調和するような設計となっている。

敷地と調和するコンクリート壁と黒い家型

Via : https://tat-o.com/

石切の住宅が位置しているのは、生駒山の中腹。周囲は古い住宅地のため、石積みやコンクリートブロックの壁を多く存在している。そんな周囲の環境から逸脱した存在にならないよう、石切の住宅ではコンクリートの基礎を通常より高く持ち上げ、コンクリート壁として使用している。

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コンクリート壁の上には鉄骨造の黒い家型が乗っている。周囲の住宅は黒の瓦屋根が多く存在しているため、その瓦屋根と建物を調和させるために、黒のガルバリウム鋼板で覆われている。石切の住居の建築設計は、その地域に合わせた素材や色の選定によって、敷地と建物を調和させていく。

美しい眺望を楽しめるプライベート空間

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黒い家型の正面の大きなガラス窓からは、美しい眺望を眺めることができる。山の中腹という立地を生かした設計になっている。

斜面の勾配から生まれる解放的なトイレ

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石切の住宅のトイレは住居の裏面に位置している。斜面の勾配から生まれる自然の壁を、トイレの壁として使用することで、一般の住宅では考えられない程解放的なトイレを作り出している。

周囲の環境を取り込むガラス張りの壁面

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1階と3階がプライベート空間として壁面に囲まれている一方、2階の壁面は広範囲がガラス張りになっている。ガラスの壁面は内部と外部の境界を曖昧にし、周囲の環境を生活空間に取り込むことができる。周囲の環境を生活空間に取り込むことで、生活を通して町や地域の存在を身近に感じることができ、居住者が住居だけでなく、町全体を愛することができるようになる。

島田陽の敷地と居住者の生活を考えた住宅設計

島田陽の建築設計は、敷地とその周囲の環境の徹底的なリサーチを行うことで、建物と周囲の環境を調和させ、居住者の住み心地の良い空間を作り出している。彼の敷地とその周囲を最大限に活かす設計には今後も注目である。