コンピュータによって、人類が想定する形を超えた作品づくりへ。メディアアーティスト・落合陽一さん
前編:いのちは磨かれ、自分の身体すら必要なくなる。関⻄万博パビリオン「null²」を手がける落合陽一さん
メディアアーティストとして作品づくりを行っているほか、会社経営や大学教員などさまざまな顔を持つ落合陽一さん。前編では、日常で大切にしているデザインや⼤阪・関⻄万博のシグネチャーパビリオン「null²」について詳しくお話を聞きました。後編で伺ったのは、建築とコンピュータとの関わり方や、AIによってこれから起こりうる変化について。落合さんは、どのような視点で将来を見据えているのでしょうか。
印象に残っているのはフランク・O・ゲーリーの作品
ーー旅先で出会った印象に残っている建築や街並みは?
フランク・ゲーリーが手がけたディズニーのコンサートホールは、外見がぬるぬるしているので好きです。おそらくステンレスだと思うのですが、平面が子供が描いた絵みたいにうねうねしています。
ーー落合さんのおうちはどのような感じ?
穴蔵のようなところに住んでいるか、作業場のようなところに住んでいるか。仕事していることがほとんどなので、生活と暮らしの境目はあまりないですね。
我々の世界のあらゆるものにコンピュータが合わさってくる
ーー建築家との交流や対談の機会も多いと思いますが、思考やあり方に時代の変化や兆しのようなものを感じたことは?
コンピュータを使って設計するようになると、人間はそれを施工するプロセスとはちょっと離れたところで頭を使うことができる。コンピュータが入ってくることによって、人類が想定する形を超えたものを作っても大丈夫になってきたのは、大きいのではないでしょうか。
ーー逆にコンピュータにできない部分は?
現場で鉄骨を組む、とかですかね。施工が一番大変で、設計は大変ではなくなっていくのではと思います。
ーー生活空間自体は、今後どのように変わっていくと思われますか?
昔エジソンとテスラがいたときに、交流・直流争いがありましたよね。ほとんどのものが交流で動いていたのが20世紀だとすれば、21世紀はほとんどのものが直流で動いています。iPhoneやみんなが使っているオーディオ、パソコンは大体ACアダプターがついているものがほとんど。内蔵できるバッテリーのサイズとか、無線でコードレスで、Wi-Fiで電波で、直流でエネルギー効率が良くて…そうやって考えると、あらゆるものが電化されて、何かコンピュータが入る生活になっており、それはより強固になっていくのではないかと思います。我々の世界のあらゆるものに、コンピュータが合わさっていくような感じで。
仕事が趣味で、仕事が遊びみたいなもの
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ーー建築のあり方はAIと共存するような世界になっていくということですが、建築のあり方はどのように変わるのか、あるいは変わっていくべきだと思われますか?
人類最大の粗大ゴミが建築だと考えると、あまりエネルギーを使わずに物を建てたりとか、廃品を利用したりとか、なるべく地球環境に優しい建築を作っていくようになるのではないでしょうか。一度建てると壊せないですし、捨てるのが厄介ですからね。
ーーライフ イズ ◯◯に当てはまる言葉はなんでしょう?
ライフ イズ ワーク。仕事をするのも生きるのも1つの工程の中でしており、ロマンがある作品とか好きじゃないので、あらゆるものが日常の延長にあると信じています。仕事が趣味で、仕事が遊びみたいなもの。だいたい研究のことを考えているか、作品のことを考えています。
コンピュータによって人類の想像を超えた形へ
何事も、“日常の延長線”と語る落合さん。私たちの日常にはこれまで以上にコンピュータが関わるようになり、よりデジタルの力によって日常が変化し、その先に新たな発見や建築、アートが生まれるのかもしれません。