建築家・隈研吾が手掛けた、木の質感と斜めにつながる吹き抜け空間が圧倒的な複合施設「TOYAMAキラリ」

富山県富山市の中心市街地にある「TOYAMAキラリ」は、富山市立図書館、富山市ガラス美術館、銀行、カフェ、ショップなどが併設されている複合施設です。

2015年にオープンし、観光客から市民まで、多様な人々に幅広く愛されています。

斬新な外観を持つ複合施設「TOYAMAキラリ」

立山の氷の岩脈をイメージしたファザードを持つ「TOYAMAキラリ」は、新国立競技場などを手掛ける日本の代表的建築家・隈研吾が手掛けました。

迫力のある特徴的なファサードは、富山県のリーディング産業であるアルミとガラス、そして旧富山第一銀行本店と同じ御影石を採用。この3種類のパネルを約1000枚組み合わせ、山連峰の山肌を表現しています。

街の景観に馴染む外観は、天候や時間帯、見る角度によって異なる輝きを見せ、まるでアート作品のようです。

斜めにつながる吹き抜け空間

館内に足を踏み入れると、広々とした開放感の明るい空間が待ち構えています。

TOYAMAキラリの最大の特徴は、2階から6階にかけて斜めにつながる吹き抜け空間で、自然光を最大限に活かしたつくりになっていることです。

最上部に広がる大きな窓からは自然の光が各フロアに降り注ぎます。下から見上げた時には、自然が生み出した山の斜面のような雰囲気になるように作られました。

吹き抜け空間は最大で高さ18mに達し、その迫力に圧巻されます。

特徴は富山県産の杉を使ったルーバー

この斜めの吹き抜けを強調しているのが周囲に取り付けられた、富山県産の杉を使ったルーバーです。このルーバーによって、木漏れ日空間を演出しています。

建物内部の壁や仕切りには、多数のルーバーが使われ、斬新なデザインでありながらもぬくもりを感じられるようにと作られました。

この木のルーバー表現は、隈研吾の代表的な手法である「小さな面が集合してできたような建物の作り方」に当てはまります。

美術作品が置かれている場所には、ルーバーの密度を高めて光を遮るようにしたり、デスクがあるところには、ルーバーの高さを低くし反対側が見やすくなるように工夫が施されました。

上から見下ろすと、うっとりする吹き抜けが広がります。

「富山市立図書館本館」と「富山市ガラス美術館」が分散

TOYAMAキラリは、富山市ガラス美術館と富山市立図書館が各階に分散して配置されています。しかし、この少しずつずれる斜めの吹き抜けによって、階ごとに異なる関係性が生まれたのです。

光をやさしく反射する「富山市立図書館本館」

TOYAMAキラリの3階〜6階には、富山市立図書館本館が入っています。3階は児童図書フロア、4階は一般図書フロア、5階は参考図書フロア、6階は書庫と事務室です。

図書館内の照明は蛍光灯を採用しておらず、それぞれにスポットライトを配置。蛍光灯よりもやわらかい光の空間で落ち着いて読書や勉強することができます。

そしてフロアを繋いでいるスギ材のルーバーが、図書館内への光や視線を和らげるカーテンの役割を果たしています。

柱は、存在感をなくすために鏡面仕立てです。柱に映り込んだ木材が天井や壁面の木材と繋がって見えるのも、面白さを感じます。

本棚やカウンターも木材で統一。また、建物の設計のみならず、オリジナルのフォントを用いたサインデザインも隈研吾によって手掛けられました。

杉の板、ガラス、鏡が並んでいて光をやわらかく反射させている空間。あたたかく、やさしい光で満たされており、まるで森の中にいるような体験を味わえます。

2階カフェ「FUMUROYA CAFÉ」

2階には加賀麩の老舗・不室屋がプロデュースする和風カフェ「FUMUROYA CAFÉ」が併設。店内は、自然光が差し込み明るく、全面ガラス張りのか開放的な空間です。

コーヒーなどの定番メニューから、「麩」を取り入れた甘味や食事など、多彩なメニューが用意されており、美術館鑑賞の余韻を楽しんだり、図書館で借りた本を楽しむことができます。

個性的なグラスアートが立ち並ぶ「富山市ガラス美術館」

2階〜6階の南側には、「富山市ガラス美術館」が併設。2階と3階の展示室では企画展、4階と6階の展示室では常設展が行われています。

こちらは、展示室の外側にある富山県ゆかりの作家20名による作品を展示する「グラス・アート・パサージュ」です。時より展示替えが行われるため、いつ行っても様々な作品を楽しむことができます。

また、杉のルーバーは直射日光を避けたい美術館にとって遮光スクリーンの役割を果たしています。

4階は、コレクション展としてガラス美術館所蔵作品を展示。3階は、表現豊かな現代ガラス作品の展示を中心にさまざまな美術表現を紹介しており、個性的なグラスアートが立ち並びます。

ガラスが持つ豊かな色彩と繊細さを感じながら、ゆっくりとアート空間を楽しめます。

隈研吾が手掛けた、木材の吹き抜け空間が圧倒的な複合施設「TOYAMAキラリ」

富山県の杉を使った吹き抜け空間が圧倒的な複合施設「TOYAMAキラリ」。氷壁のような斬新な外観は一見クールな建物に見えますが、室内は木材を中心とした開放感のある心地よい空間が広がっています。地元産の杉を配置したり、リーディング産業であるアルミやガラスをふんだんに使用することにより、地域らしさを存分に表現している複合施設です。

TOYAMAキラリ

住所:富山県富山市西町5−1
営業時間:9時30分~18:00(ガラス美術館)
営業時間:9:30~19:00(図書館)
問合せ:076-461-3100(ガラス美術館)
問合せ:076-461-3200(図書館)