南米唯一のル・コルビュジエ建築。アルゼンチン・ブエノスアイレス近郊の「クルチェット邸」

アルゼンチン・ブエノスアイレス州の州都、ラ・プラタには南米唯一のル・コルビュジエによる建築「クルチェット邸」があります。外科医のペドロ・ドミンゴ・クルチェットのための邸宅は住居と診療所を兼ねており、1949年に建てられました。

コルビュジエが実際に現地ラ・プラタに訪れることはありませんでしたが、コルビュジエの設計を基に、アルゼンチンの建築家アマンシオ・ウィリアムとサイモン・ウーカーズが引き継ぐ形で邸宅は完成しました。このクルチェット邸も上野の「国立西洋美術館」やフランス・パリの「サヴォア邸」などと一緒に世界遺産に登録されています。

南米の暑い日差しを受ける真っ白なファサード

周辺は住宅密集地であり、限られた敷地でアルゼンチンの暑い気候に対応させるため、ブリーズ・ソレイユ(日除け格子)に工夫を凝らし、陰が出来る中庭の周囲に建物をU字型に配置する地元特有のスタイルを取り入れた4階建てにするなどの配慮が行なわれています。

ゆるやかなスロープが伸びる涼しい印象のピロティ

2層分のピロティがあり、それほど広くない敷地でも視線が抜けるように計算されていて、圧迫感がない。

1階部分はガレージと運転手用部屋のみで、あとはスロープと中庭になっています。中央には象徴的な樹木があって、上の階まで貫くように植えられています。

ピロティは2層分の高さがあり、個人住宅の一部とは思えないような贅沢な空間に。彫刻作品も相まって美術館の庭園のような落ち着いた雰囲気になっています。

中央のスロープはピロティを貫くように1往復して上の階に続いています。

踊り場は、サロンのような階段室とつながっていて、コルビュジエがシャルロット・ペリアンとともにデザインしたシェーズロングが置かれていました。

敷地はそれほど大きくはないものの、ゆったりとしたスロープと広々としたピロティで空間を贅沢に使用しています。

自然を感じられる心地よい診療所スペース

中央の樹木がを取り囲むように診療所としての機能がある諸室が配置されています。

ブリーズ・ソレイユ越しに自然光が差し込む診療室は、白い壁面との相性もよく、とても明るくて居心地の良さが感じられます。

造作家具はミニマルなデザインながら、緻密に作られており実用的。中心に配された木製の棚と建具が2つに空間を分割しています。

開放感がありながらプライバシーが守られた居住空間

階段を使って3階部分に向かうと住宅エリアが設けられています。

テラスへと続くリビング的なスペースは、奥行きのあるテラスのお陰で明るくて開放的ながらも、外からは覗き込めないようにプライバシーが守られたデザインに。

2層吹き抜けなので開放感のある心地のよい空間となっています。

棚の一部はスピーカーになっており、造作家具も含め空間を効率的に活用しています。

2階の診療所スペースと同じくブリーズ・ソレイユ越しに全面開口の開放的なデザインになっています。

その開口部からは中庭の大きな樹木が迫力ある絵画のように切り取られていました。強い日差しを受ける緑は、白い壁に映えて美しい借景に。

遊び心ある色使いで軽やかな印象に

内部にもアクセントになる青や赤のニッチの色が用いられ、白い壁面でも単調になりません。

キッチンには白いタイルと、それに合わせたブルーのタイルが印象的なコンパクトなつくり。

奥行きのある広いテラスに出るとブリーズ・ソレイユが手摺のような機能となっており合理的にデザインされていることがわかります。屋根も強い日差しを適度に遮ってくれます。

中心に位置する樹木の枝葉もあって公園のように広く明るい雰囲気に。

4階へ登ると寝室などがあるプライベートエリアとなります。

ここでも木製の収納や建具で空間が仕切られており、コルビュジエの近代建築五原則の一つ「自由な平面」という思想が見て取れます。

それほど広くはないベッドルームながら、他のコルビュジエ作品よりも作り込まれている印象を受けます。

コンセプチャルな建築になり過ぎず、収納や空間の仕切りなど暮らしやすさを重視した、住宅として機能的なデザインとなっています。

細部までこだわりが見られるデザイン

ころっとしたフォルムが可愛らしい局面の壁の向こうには水回りが配されています。

局面の壁とモザイクタイルで、まるで公共空間のようなモダンな印象のトイレ。ピンクの色味もタイルのグレーとマッチして程よい抜け感が感じられます。

壁に窓はないものの、トップライトからの光で明るさがとられており明るい印象に。デザインのみならず機能面へのこだわりも伺える空間です。

環境と思想のバランスが取れた一軒

天井の高いピロティや長いスロープ、ブリーズ・ソレイユはもちろん、周辺の環境にも馴染んでおり、アルゼンチンの気候も配慮されたデザインが伺えます。近代建築の五原則を用いた設計が原理主義的にならず、その思想を上手く取り込んだバランスの取れた一軒でした。

Casa Curutchet – クルチェット邸

開館時間:10:00~17:00(土・日曜日13:00~)
休館日:月曜日
URL : https://www.capbacs.com/capba-casa-curutchet
住所:La Plata, Av. 53 320, B1900 Buenos Aires, Argentina