景観と一体となった美術館!建築家ラファエル・モネオが手掛けたマヨルカ島にあるもう1つの「ミロ美術館」

バルセロナ出身の画家ジョアン・ミロ。バルセロナのモンジュイックにもミロ美術館があるのだが、ミロはマヨルカ島にアトリエを構えていたこともあり、マヨルカ島にも別の「ミロ美術館」がある。マヨルカ島のミロ美術館を手がけたのは、建築家 ラファエル・モネオだ。モネオのデザインによって創り上げられたのは、美術館だけでなく邸宅・アトリエも広がる壮大な一帯。それらをアートと融合したランドスケープで繋げて魅せる。

バルセロナ出身の巨匠画家「ジョアン・ミロ」

バルセロナ出身の画家、ジョアン・ミロ。ダリやガウディと同郷の彼は、20世紀のスペインアートを先導した芸術家の一人として知られる。

「絵画は詩だ」という言葉を残す彼の作品は、有機的で抽象的なものが多く、自由で無邪気な画風や、記号化されたようなフォルムの作風が特徴的である。絵画のみに捉われず、陶器や彫刻、布を使ったアートなど、様々なジャンルの作品を世に残している。

手がけたのは、建築家 ラファエル・モネオ

ミロ美術館は、ロサンゼルスにある「天使のマリア大聖堂」も手掛けたスペインを代表する建築家ホセ・ラファエル・モネオがによるデザインだ。敷地内には美術館の他に、ミロが実際に使っていたアトリエ棟、住居用戸建も存在する。

モネオらしさのあるデザイン建築が体験できる3つの建物を纏めるランドスケープも圧巻で、敷地全体の隅々までをアートと建築で楽しむことができる。

ミロの彫刻が迎える、風が抜けて心地良いエントランス

まるでテーマパークや高級リゾートホテルの入り口のような、どっしりと構えた外壁門を潜り、スロープに沿って足を進める。「この先にどんな世界が広がるのだろう」と訪れる者の心を弾ませる導線だ。

エントランスに着くと、ミロらしい無邪気で独特なフォルムの彫刻作品が我々を迎える。水平に切り取られた開口部から風が抜け、開放的で心地よいスペースだ。

 

モネオらしい素材使いや幾何学デザインで広がる内部空間

レセプションがあるフロアは、地中海の風土に合う配色と素材で構成された空間が広がる。複数の素材がうまく溶け込み合うデザインは、まさにホセ・ラファエル・モネオが成すデザインセンスが光る。

外庭を望むことができるエントランス脇のテラスも、風が通り抜け気持ちの良い空間だ。ル・コルビュジエのブリーズ・ソレイユのようなバッファーが、地中海の強い日差しを和らげ、涼しげにしてくれているように感じる。

アートが一体になったようなランドスケープ

ミロ美術館は、内部空間も素晴らしいが、やはりこの外部空間が非常に気持ちがいい。美術館の中も外も、建築もランドスケープも使った良い美術館だ。

美術館自体の建築と彫刻などのミロの作品が展開され、公園のようにも感じられるアート空間になっている。ミロのアート作品を含めてデザインされたランドスケープという感じだ。

庭を歩いていると、ワークショップスペースやカフェも存在し、美術館としての機能だけではなく、公園やパブリックな施設のように多様性のある美術館であることが分かる。

階段やスロープで下に向かって連続する展示空間

展示スペースは、暖色系のライトが白色の外壁空間に照らされ、柔らかなスペースを構成している。スロープの導線に沿って進めば進むほど、ミロの作品が変化する様も感じ取ることができる。

ところどころには、開けたスペースがあり、曖昧に分けられた展示構成が特徴的だ。柔らかい光が差し込み、展示空間に適度が明るさと緊張感を与えながら、ミロの世界観を美しく纏め上げている。

教会建築のような静寂で神聖な心地がする開口スペース

スロープに沿って巡る展示スペースの突き当たる場所には、「天使のマリア大聖堂」のように雪花石膏のパネルを使った開口がある。教会建築にあるステンドグラスの採光を連想させるような、光を使ったデザインが実に美しい。

壁面には絵画、ところどころに彫刻作品が展示されている。あまり平行な面はなく、それゆえに光が拡散したり、奥へと動線を誘導したりと「シークエンスを意識した内部空間」である。

親友である建築家ジュゼップ・リュイス・セルトが設計したアトリエ「セルト・スタジオ」

美術館の脇には、ミロが実際に使っていたアトリエが残されている。ここは、バルセロナ・モンジュイックにある「ミロ美術館」を手がけた、ミロの親友であり建築家のジュゼップ・リュイス・セルトが設計を担当している。

アーチ型の屋根やカラフルな扉が印象的で、セルトの設計によるバルセロナのミロ美術館にも通ずる「ミロの作風や世界観を建築に結晶したデザイン」が印象的だ。

ミロの住居用邸宅も雰囲気のある空間

アトリエの脇道を登った先には、ミロが実際に住んでいたという邸宅が佇む。ここは、アトリエが完成した3年後にミロが購入した建物で、伝統的な18世紀のマヨルカ式の建築である。

この邸宅は、彫刻の制作を行うことも主な目的として使われていたという。内部には、壁にスケッチが描かれた場所が多く残り、色々な試作品も展示されていた。

生活空間を再現した場所も残っており、その様子からは制作活動を中心に生活していた姿が想像できる。

ランドスケープ・アート・複数の建物が一体に広がる建築デザイン

マヨルカ島・パルマにある「ミロ美術館」は、1つの大きな敷地に広がる様々な環境施設が、場所によって全く異なる体験ができる。それぞれに違う用途で使われた建物達が、ランドスケープと一体になって広がる様は、実に印象的だった。

地中海の暖かい気候や風土とも合う素材使いや設計で、ミロがこの場所にアトリエを構えることも腑に落ちる。ミロの作品も建築も非常に見応えがあり、様々な角度からジョアン・ミロという人間を知ることができる場所だ。

Pilar and Joan Miro Foundation in Mallorca – ミロ美術館

開館時間:10:00~18:00(日曜~15:00)
休館日:月曜日
入館料:12€
電話:+34 971 70 14 20
URL : https://miromallorca.com
住所:Carrer Joan de Saridakis, 29, 07015 Palma, Illes Balears, Spain