「幸せな未来を描きたい」建築家・五十嵐淳のアイディアの源とこれからの暮らし

前編：「人間のベースは変わらない」建築家・五十嵐淳が考える大切なデザイン

毎週月曜日に立山律子がお送りする福岡のラジオ放送CROSS FM「DAY+」。「#casa（ハッシュカーサ）」の枠に今回ゲストとしてお越し頂いたのは、北海道札幌市を拠点に活動し、住宅を中心に様々な建築設計を手掛ける建築家・五十嵐淳（いがらしじゅん）さんです。後編では代表作である作品のアイディアやこれからの住宅について伺いました。

個性的な住宅のアイディアの源とは!?

五十嵐さんの代表作というと「矩形の森」、「house O」、「光の矩形」など個性的でかっこいいものばかり。自然光の取り入れ方や奥行きを感じるデザインなど特徴的ですが、それぞれのアイディアはどこから得たのでしょうか。

「『矩形の森』はワンルームの空間で、仕切りが一切ないのが特徴です。僕は子どもの頃、うなぎの寝床のような間仕切りが多い家に住んでいたんです。その家で改修工事があって、間仕切りが取り払われたときに『この状態のままにしてほしい』と感じたんです。光も通るし奥行きもあって森のような感覚になったのを覚えています。結局、そのあと壁だらけになったのですが（笑）。その体験があって、このような仕切りの無いデザインになりました。」

「『house O』は大きさの異なるボックスがたくさん重なっているように見えますが、この家もトイレ以外はワンルームになっています。このデザインには、渓谷を歩いていると、折れ曲がった道に先がわからないけど光が降り注いでいて、『この先に何があるんだろう』と感じる瞬間ってありますよね。そういう体験を住宅に落とし込みました。」

「『光の矩形』は、オーナーの希望でカーテンをしめない家がほしいというオーダーがあり、矩形の開口から間接的に室内へと光が差し込むデザインになりました。」

意外と五十嵐さんの子どもの頃の原風景が作品に落とし込まれているようですね。流行のデザインではなく、無意識に心地よいと感じる感覚を大切にされていることがわかります。

テレワークやオンライン授業など仕事や勉強が持ち込まれる住宅とは

リモートワークやオンラインでのやり取りが浸透しつつある今日。作業スペースを住宅内に求められることが多くなりそうですが、そうした機能を持った住宅はこれまでのものと何が異なるのでしょうか。

「ニュースでもアフターコロナの予測が出ていますが、建築業界でも同じような動きがあります。しかし実際には新型コロナウィルスについて我々はなにも把握できていない状況です。新型コロナウィルスについてわかったときに、やっと正確な未来予測ができるわけで。今起きているテレワークとかオンライン授業はこの瞬間の対応であると考えています。東日本大震災での福島の原発のときと同じく、結局時間が経つと記憶から薄れてしまうのが現実。生活や状況が変わると言っていたのに東京での暮らしは何も変わっていませんよね。まずは、予測ではなくちゃんと向き合い、新型コロナウィルスを把握することを先決とすべき。そこからネガティブではなく、幸せな、寛容な未来を描いていければ良いのではないかと思います。」

第二波の発生やワクチンの開発など、様々な課題と現在も抱える新型コロナウィルス。いまできることを考え、実行しつつ、よりよい未来に向け一刻も早く新型コロナウィルスへの理解を深めることが重要ですね。