京都駅から現代建築まで。古都・京都で出会える安藤忠雄や隈研吾など、有名建築家の建築作品10選
寺社仏閣の甍が連なる古都・京都。しかしこの街の魅力は、千年の歴史だけではありません。大正のモダン建築から戦後モダニズムの傑作、安藤忠雄の静謐な庭、そして歴史的建造物に新しい命を吹き込む令和のリノベーションまで。伝統と革新がせめぎ合い、共存してきたからこそ、京都には各時代の建築家たちの本気の仕事が積み重なっています。碁盤の目の街を歩けば、寺社巡りとはひと味違う、もうひとつの京都に出会えるはずです。今回は、古都・京都で出会える有名建築家による建築作品10選をご紹介します。
谷のような大階段が迎える古都の玄関口「京都駅ビル」──原広司

京都の建築巡りは、降り立ったその瞬間から始まっています。1997年に完成した現在の京都駅ビルは、建築家・原広司が国際指名コンペを勝ち抜いて実現させた大建築です。全長約450mのヴォリュームを貫くのは、ガラスの大屋根に覆われた渓谷のようなコンコース。171段の大階段を昇っていくと、視界が少しずつ開け、空中経路からは京都の街並みと東山の稜線を一望できます。高さを60mに抑え、南北の通りに合わせて建物を分節するなど、古都の景観と対話するための工夫が随所に施されており、駅という日常の場所が壮大な建築体験の舞台になっています。
参考:建築家・原広司が国際コンペで勝ち取り実現した「京都駅」は、谷のような大階段のアトリウムが魅力的!
住所:京都府京都市下京区東塩小路町901
海のない街を照らす白い灯台「京都タワー」──山田守

京都駅の烏丸口を出ると、真っ白な塔が空へ伸びています。1964年、東海道新幹線の開業と同じ年に完成した京都タワーは、逓信建築の名手として知られる建築家・山田守が手がけました。モチーフは、海のない京都の街を照らす灯台。骨組みの鉄骨を使わず、円筒形の鋼板を溶接でつなぎ合わせたモノコック構造という、当時としても異例の構法で建てられています。完成当初は古都の景観論争を巻き起こした存在でしたが、半世紀以上の時を経て、いまや京都駅前の風景に欠かせないランドマークとして愛されています。
住所:京都府京都市下京区烏丸通七条下ル東塩小路町721-1
公式サイト:https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/kyoto-tower/
鴨川のほとりに建つ大正モダンの傑作「東華菜館」──ウィリアム・メレル・ヴォーリズ

四条大橋の西詰、鴨川に面して建つスパニッシュ・バロックの洋館は、1926年に建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの設計で建てられたレストラン建築です。玄関まわりを埋め尽くす貝や魚、野菜をモチーフにした装飾は、食の殿堂にふさわしい遊び心にあふれています。キリスト教伝道者でもあったヴォーリズは全国に数多くの洋館を残しましたが、料理店として設計した建築はきわめて珍しく、その意味でも貴重な一棟です。現在は北京料理の名店「東華菜館」として営業しており、店内では1924年製の日本最古級の現役エレベーターに乗ることもできます。蛇腹式の扉を係の方が手動で開閉する乗り心地は、それ自体がタイムスリップのよう。夏には鴨川の納涼床も開かれ、名建築の中で食事を楽しむという、京都ならではの贅沢な建築体験が待っています。
住所:京都府京都市下京区西石垣通四条下ル斎藤町140-2
公式サイト:https://www.tohkasaikan.com
数寄屋の美をホテルに昇華させた「ウェスティン都ホテル京都 佳水園」──村野藤吾

東山の山裾に建つウェスティン都ホテル京都。その敷地の奥にひっそりと佇む和風別館「佳水園」は、建築家・村野藤吾が1959年に手がけた数寄屋建築の名作です。東山の岩肌をそのまま取り込んだ庭に、白砂の中庭を囲むように軽やかな木造の客室棟が配され、線の細い繊細なディテールが京都の光をやわらかく受け止めます。ホテルという西洋の様式のなかに日本の美意識を溶け込ませる村野藤吾の手腕は、ここで頂点のひとつを迎えたといわれています。宿泊者だけが味わえる、静謐な建築体験です。
住所:京都府京都市東山区粟田口華頂町1
公式サイト:https://www.miyakohotels.ne.jp/westinkyoto/
山並みと呼応するモダニズムの殿堂「国立京都国際会館」──大谷幸夫

宝ヶ池の畔、比叡山を望む地に建つ「国立京都国際会館」は、日本初の国立会議施設として1966年に開館しました。設計コンペを勝ち抜いたのは建築家・大谷幸夫。台形と逆台形を組み合わせた彫塑的なコンクリートの造形は、合掌造りや神社の千木を思わせ、周囲の山並みと力強く呼応しています。内部に足を踏み入れれば、傾いた壁と天井が織りなすダイナミックな空間に、家具や照明までトータルにデザインされた60年代の熱気がそのまま息づいています。1997年には地球温暖化防止京都会議(COP3)が開かれ、「京都議定書」が採択された歴史の舞台でもあります。日本のモダニズム建築が伝統とどう向き合ったのか、その最も雄弁な回答のひとつがここにあります。
住所:京都府京都市左京区宝ヶ池
公式サイト:https://www.icckyoto.or.jp
前川國男のモダニズムが受け継がれた「ロームシアター京都」──前川國男+香山壽夫

岡崎の文化ゾーンに建つ「ロームシアター京都」の前身は、建築家・前川國男が1960年に設計した京都会館です。ル・コルビュジエに学んだ前川らしい、深い庇と力強い柱梁が生む陰影は、日本の伝統建築の精神をコンクリートで翻訳したものといわれます。老朽化に伴い建て替えも議論されましたが、建築家・香山壽夫の設計により前川建築の姿を残しながら改修され、2016年に劇場として再生しました。名建築を壊さずに使い続けるという選択そのものが、この建築の新しい価値になっています。
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13
公式サイト:https://rohmtheatrekyoto.jp
名画と歩く安藤建築の回遊式庭園「京都府立陶板名画の庭」──安藤忠雄

北山駅を出てすぐ、京都府立植物園の隣に、建築家・安藤忠雄が設計した世界初の絵画庭園があります。モネの「睡蓮・朝」を水面の下に沈め、ミケランジェロの「最後の審判」を見上げる壁面に掲げるなど、陶板に転写された古今東西の名画8点が、コンクリートの壁とスロープ、水盤で構成された回遊空間に配置されています。屋根を持たない吹きさらしの空間だからこそ、名画は季節の光や雨とともに、そのつど違う表情を見せてくれます。スロープを下りながら、光と水音とともに名画と出会い直す体験は、美術館とも庭園とも異なるもの。安藤建築の空間の力を、気軽に、しかし濃密に味わえる隠れた名所です。
参考:世界初の絵画庭園!安藤忠雄による屋外アート空間「京都府立陶板名画の庭」で名画鑑賞!
住所:京都府京都市左京区下鴨半木町
公式サイト:https://kyoto-toban-hp.or.jp
水盤に浮かぶ端正な日本の美「京都国立博物館 平成知新館」──谷口吉生

明治の煉瓦建築・明治古都館と向かい合うように建つ「平成知新館」は、建築家・谷口吉生の設計により2014年に開館しました。浅い水盤の上に、細い柱と深い庇、ガラスと壁のリズムが織りなす立面は、日本の伝統建築の柱間や障子の構成を抽象化したものといわれます。直線だけでこれほど豊かな表情をつくれるのかと驚くほどの、徹底して磨き抜かれたプロポーション。館内から水盤越しに明治古都館を望む風景は、明治と平成、ふたつの時代の建築が静かに向き合う、この場所にしかない眺めです。
住所:京都府京都市東山区茶屋町527
公式サイト:https://www.kyohaku.go.jp
現存最古の公立美術館建築が生まれ変わった「京都市京セラ美術館」──青木淳+西澤徹夫

1933年開館の京都市美術館は、日本に現存する最古の公立美術館建築。その歴史的な建物が、建築家・青木淳と西澤徹夫の設計により2020年にリニューアルオープンしました。帝冠様式の重厚な本館の足元に、ガラスのファサード「ガラス・リボン」を挿入し、広場を掘り下げて新しいエントランスを創出。天井高16mの中央ホールには美しいらせん階段が浮かび、東山を望む屋上テラスや現代アートのための新館「東山キューブ」も加わりました。87年の歴史を消さずに未来へ開く、日本のリノベーション建築の到達点です。
参考:青木淳+西澤徹夫の設計で日本で現存最古の公立美術館建築「京都市京セラ美術館」が生まれ変わった。
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124
公式サイト:https://kyotocity-kyocera.museum
大正の電話局が令和の交流拠点へ「新風館」──隈研吾

烏丸御池に建つ「新風館」の前身は、1926年に竣工した旧京都中央電話局。京都市登録有形文化財第1号にも登録された歴史的建造物です。この赤煉瓦の外壁を残しながら、建築家・隈研吾のデザイン監修によって2020年に生まれ変わりました。既存棟に寄り添う新築棟は、深い庇と木のルーバーをまとい、中庭には豊かな緑が植えられて、街に開かれた路地のような空間が生まれています。施設内には北米発の「エースホテル京都」が日本初上陸を果たし、大正の建築と現代のカルチャーが混ざり合う、京都の新しい定番スポットになっています。
参考:京都に愛される「新風館」× 地域との関わり大切にする隈研吾監修「ACE HOTEL京都」の魅力に迫る。
住所:京都府京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
公式サイト:https://shinpuhkan.jp
歴史と新しさを感じる京都を建築巡りで体感!
千年の都と呼ばれる京都は、実は、いつの時代も「その時代の最先端」を受け入れてきた街でもあります。大正の洋館も、戦後のモダニズムも、令和のリノベーションも、やがて京都の風景の一部になっていく。そんな時間の積層を体感できるのが、京都建築巡りの醍醐味です。次に京都を訪れるときは、寺社の拝観の合間に、建築家たちが残した「もうひとつの京都」を歩いてみてはいかがでしょうか。